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母方の、祖父
しおりを挟む話がまとまり、次の1回目の休みの日に探索に出る事となった。使える休みは今日の午後と明日しか無い。時間の無い中トイレ穴を掘る練習なんてやってやれないので、午後の予定は全てキャンセルとなった。
「ユカタ、マキとジュンをよろしくね」
「夕飯には間に合うように帰るよ」
「よろしくしちゃダメだよ?」
「2人共よろしくね」「あ、無視した」
卒無いマキが外出届けを出してくれて、買い物上手なジュンと荷物持ちの僕が町へ出る。レイナはもう少し資料室に籠るそうで別行動。ロシェルは町に行けないので不貞腐れて嫌味を言った。
「よろしくする暇なんて無いし、男は我慢する生き物だって前に言ったよね?」
「だってぇ…」
「良い子にしてたら明日もお昼ご飯もらって来てやるから」
「アタシ飼いウォリスじゃ無いよ!?」
似たようなモンだ。マキとジュンに連れられて久々の町に出る。来た時は一直線に学園に来たから見る物全てが初めてと言っても良い僕は2人が居ないと多分帰って来られない。ジュンは何度もアッゼニに来た事があり、親戚の店もあって土地勘がある。マキは護衛であり何でも卒無くこなしてくれる。僕は完全に財布とカバンである。
「ロシェルさんにお土産でも買って帰りましょうか」
「なら硬い木の実でも買うか」
「な、何でです…?」
「パンとか干し肉なんて与えたらすぐに全部食べちゃうからだよ」
「た、食べ物以外のお土産は…」
「好み分かんないもん。ナイフでも買う?」
「喜んではくれそうですが、女性に武器を渡すのはどうかと」
「だよねぇ」「ですね…」
大通りに入って少し中心部へ向かって歩き、路地を1本入った所にある、中通りに面した大棚がジュンの親戚の店だと言う。路地と路地の間の建物全てが1つの店舗だと聞いて驚いた。
「こん、こんにちは」
「いらっしゃいませお嬢さん。学園の生徒さんかい?」
さほど大きくないジュンの声に反応した女性店員は、よく通る声で相対する。店の中は店員も客も結構な人が居て、何人かの客がこちらをチラ見した。
「あ、あの。私カナロア商会の娘でジ、ジュンと言います。クリスエスさんの孫です。クリスエスさんにお目通り出来ませんか?」
「カナロア商会のジュン様ですね。取り次ぎ致しますが叶わぬ時はお許しくださいませ」
孫と聞いて態度が変わった女性店員は、頭を下げると小走りで奥にいる人の元へ報告に行く。奥にいた男の店員はジュンを見て、女性店員を更に奥へと向かわせた。そして男の店員は足早にこちらへ向かって来た。口髭が凄い沿ってる。
「お久しぶりですお嬢様。小さい頃泣かれて困ったホーでございます。覚えておいでですか?」
「ヒッ、は、はいっ。こ、子供のわがままとは言え、お髭を剃らせてしまい、す、すみませんでした」
「ホホホ、泣かずにお応えなさるとは大きくなられましたな。孫に合わぬ祖父等居りませぬ。ささ、どうぞ奥へ。お連れ様もどうぞ」
話が長くなりそうだが、これは仕方無い。ロシェルを連れて来なかった理由がコレだ。アイツは座って待ってられないだろうからね。
僕を前後で挟んだジュンとマキが髭の人に付いて行くと、階段を上がり2階、2階も売り場で驚く僕を、マキは押して進んで更に上、3階の事務室に案内された。
「お嬢様、すぐに会頭からお呼びが掛かるハズ。しばらくお待ちくださいませ」
「お、お構いなく…」
その時、バンッと音がしてドアが勢いよく開いた。
「ジューンッ!おおおお我が孫がっ!やっと顔を見せに来てくれたっ!今日は嘉日だっ!」
「会頭っ!お客様の前ですぞ!?」
孫に似ず随分積極的なおじいさんがこの店の会頭でジュンの祖父らしい。ジュンの座る椅子の前に立ち、身振り大きく喜びを表していた。
「…で、その男は?」
「クリスエス様、彼は私の良い人でユカタ君です」
「そ、そうか…」
そ、そうなのか…?突然のマキの発言に、固まっていた僕はさらに固まってしまった。
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