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準備は、大事
しおりを挟む「ユカタッ、お金稼ぎしよーよ!」
勘定のおぼつかないロシェルが唐突に放つ感情にかまけた言葉に、僕はニガムシを噛んだ様な顔をする。
「ブフッ、何その顔っブヒヒッ」
「ブフリムみたいな声出すんじゃないよ。ほれほれ解け解け」
「午後から行くとしても帰りが遅くなり過ぎます。諦めてお勉強しましょう」
「なら明日はどう?ジュンは空いてる?」
「え?そりゃあ、空いてるけど」
「ウフ、アタシも空いてる。つか鍛錬したらご飯食べて寝るだけだし。ウフフ」
「ユカタはどうかしら。私達の実力で如何程の値が付くのかは気になってたのよ」
レイナは周りの予定を聞いて、僕に如何を聞いて来る。それでも僕はちょっと躊躇う。
「暇だけとさ。問題もあるんだよなぁ」
「何よ?ハーレムパーティーだからギルドのオッサンに絡まれる?」
「それはそれですごく困るけど。お弁当は持って行けないからねぇ」
「冒険者らしく干し肉とソーサーですか?」
「半分合ってるね。お弁当だと匂いが強くて敵が寄っちゃうかもだから。それにみんな、お外でトイレ出来る?」
「やれば出来るっ」
「やり方知ってる?」
「あ、穴掘って…」
「道具は持ってる?」
「…ナイフすら持ってないわね」「私が掘りますので」
「準備も無しに本番は危ないから、やれても街の周りを歩くくらいしかおすすめ出来ないな」
「外に行くのは良いんだ」
「誰かさんが剣をズバズバしたから研ぎに出したいし。穴掘りにナイフも使っちゃったからこっちもしたいんだよね」
「う。ごめん」
「そうなりますと、研ぎの時間に何時間か取られますね」
「自分達の実力を見るって事だし、僕は草刈りに参加しないけど、4人で配分して揉めない?」
「も、揉めはしないとお、思うけど…」
「なるほどね。高いの安いので誰が摘んだか…ってなるのね」
「その辺ちゃんと決めたり練習してからの方が良いと、僕は思うな」
「な、なら。午後は演習場で練習、したい、な…?ダメ?」
ジュンよ、僕を見るな。両腕を体の前方で寄せる姿に目が泳ぐ。
「どこ見てんのよ~ぅ、ヒヒッ」
「見てない。早く解け」
「もう全部出来たもん」
…半分程しか正解してなかった。まあ進歩はしているな。
「楽しそうですわね」
突然の声掛けに5人揃ってビクッとなった。いち早くその声の場所を向いたロシェルに続くと、派手な人。3人衆が席を立つので僕も立ち、軽く頭を下げた。
「お顔をお上げなさいな」
エリザベス様は普段と変わらぬ柔和な笑顔で寄って来て顔を上げろと言う。取り巻き達が失礼だとか弁えろとか言ってるけど、名を頂いた貴族様を前にして逃げたりしたら首が飛ぶんだぞ?
「本日もおめめうるわしく…」「お見目です。ユカタ君」
「構いません。今日も座学の予習かしら」
エリザベス様よ、僕を見るな。手を肩に添えるな。取り巻きの声が聞こえるくらい大きくなってるぞ。
「頭弱き者に手を差し伸べております」
「仕合じゃアタシに勝てないクセに…」
「私、貴方方に提案があるの。お聞きなさい?」
提案では無く命令だろう?レイナを見遣ると頷いてるし、聞かない訳にはいかないようだ。
「私、来週の休みにお花摘みに行くの。ご一緒なさらない?」
皆を誘ってトイレするハズは無いし、言葉通りのお花摘みなのだろうが、花と聞いて眉をしかめてしまった。それにしてもだ。よもや僕達の話が筒抜けだったのか?静寂の魔法が付与された資料室ではありえないが、果たして。
「理由を聞いて良い?ですか?」
「貴方、野の草にお詳しいでしょう。そのシワシワした眉を見るに、何を採るかも予想なさってますわね」
「おトイレじゃ無いんだ」
ロシェルは勘定してなさい。
「いっぱいあり過ぎて予想なんて出来てませんよ」
「それでも絞れているのでしょう?」
笑顔が怖い。勘弁してくれないかなぁ…。
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