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持ち込みは、不問

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 地面の確保と目隠し兼垣根、トイレ用の穴を掘って昼の鐘が聞こえて来た。休むには良い頃合かな。

「ユカタァ、ご飯~」

「我慢してたのか。よしよし」

 穴掘りを止めて腰を伸ばすと後頭部に柔らかい物が当たり、ロシェルの切ない声がした。木登りして剣を振るっていたから消耗したのだな。みんな揃って壁を背もたれにして干し肉を齧る。皆に等しく配られた干し肉だが、量は1食分にもならず、足りないと感じるのは食べ盛りのロシェルだけでは無い。

「後2食、何とか集めなきゃならないわね」

「今すぐ欲しいよ。足りないよぅ」

「…みんなに見付からないようにお食べ」

 皆の見てる前でカバンから干し肉を取り出すとロシェルにくれてやる。皆の目が点になった。

「あ、あの、ユカタ君…」「どこから持ち込んだのですか?」

「馬車移動の余り物だよ。食料持って来ちゃダメなんて言われてないからね」

「私達にはその発想すら無かったわ」

 前回の演習ではもらった干し肉だけで耐えたと言う4人に、野草を齧って耐えた2人は食料を持ち込む考えは無かったようだ。けど購買部には干し肉も携帯食料も売ってるんだよな。休日に限るが許可を貰えば外出も出来る。準備しようと思えば出来るのだ。麦粉、乾燥野菜、干し果物、塩があるのを伝えると、ペニーは乾いた笑いを発した。

「貴方ホント凄いわね」

「お金が無いってのを除けば」

 まあ、無い人は無いよな。しかしそんなカシーの言葉を切り捨てる。

「2日の休みで採集すれば良いんだよ。外に出て採集して、ギルドに買い叩いてもらうんだ」

「買い叩かれるのは決まっているのね」

「何それヤダー」

 買い叩かれるのは誰だって嫌だろう。だが冒険者達は皆ギルドに卸す。

「直接店に売りに行く程の時間は無いと思うよ?」

「足や口を使う手間の分、買い叩かれる訳ですね」

「し、知り合いのお店なら…」

「ジュンはそれでも良いと思うけど、店側は困るかも」

「あ…。分かり、ます…。飛び込みのお客さんは、嫌ですよね…」

「定期的に入る方が良い、と言う事ですね?」

 そう言う事だ。特に高価な品でも無い限り、店側が欲しい物なんて大体ギルドか契約した商人が卸してくれる。僕とセーナが知り合えたのも、手に入りにくいキセルタケが激安で買えたからに他ならない。後はセーナがお節介焼きだったからかな。

 食後の休みを取りながら、午後からの予定を話し合う。夕食と翌朝の朝食にパンを食べたいと言う僕の意見が通り、卒無いマキはパン生地作り、時間を置いて料理を担当する事になった。僕はトイレの続きと食料調達。ロシェルは建材確保。気になる2人は寝床作り、レイナは見張りとなった。

「私だけ何もしてないみたいで心苦しいわ」

「村の門番ね」

「座ったり立ってるだけの仕事だけど、居ないと困るのよ」

「せめて城の門番になりたいわ」

 門番でも良い、城務めしたい。金属鎧を身にまとい、槍を持って佇む姿を想像し、僕はトイレ作りへと向かった。

 女子達が加工した棒と枝を組み合わせ、個室を作ったら加工時に出た枝葉を刺して目隠しにする。致した後に掛ける土を山盛りにして、後は葉っぱだけか。ロシェルの落とす木の葉っぱは固いので、使いやすいのを探して来なきゃ。

「レイナ、少し外に出て来るよ」

「そ。気を付けてね?」

 得物をロシェルに貸してるので攻撃力に不安はあるが仕方ない。荷物を減らした背嚢に、肩掛けカバンを2つ提げ、壁と垣根の隙間から外へ出た。

 斜面を上り、水源の反対側へ移動してから湖に向かって歩いてく。そちらの方が柔らかい葉が多く生えてるからだ。柔らかくて大きい葉っぱを摘みながら、ついでに食用のも探して歩く。水場の近くだけあって散策してる生徒達もチラホラ見える。これ以上は近付かない方が良いな。付けられても癪なので迂回しながら野営地へと戻った。




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