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殺し合いも、やむ無し

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 水汲みしようと湖に向かうが、すぐに方向転換する。魚食したい男達が入水していたからだ。せめて漁具を作ってそっと仕掛けりゃ良いのに、これでは飲む事も出来ない。気になる2人は揃ってため息を吐いて、僕が向かわんとしてた方向に歩き出した。ロシェルは良いの?って顔してるが、背中を押して2人のすぐ後ろを歩かせた。

 気になる2人を先頭に、僕が殿。ロシェルと3人衆を間に挟む形で進む。途中、横並びで歩くペニーとカシーが手を上げる。ハンドサインだ。親指を下に向けてる…下?なるほど。食用にも出来る薬草が生えてる。両手でバリバリッと摘み取って合流する。

「なんかあるの?」

 声を出すロシェルに近寄って、小声で話す。

「あるけど静かに移動してるんだ」

「他のパーティーに気付かれたくないの」

 前を行くペニーから答えが返って来た。カシーも人差し指を口許に当てている。2人の行く所にナニカあり。ナニカとは食べ物然り、住み良い寝床然りである。今から行く先に先行者が居たなら仕方ないが、僕達より後から来た奴等に我が物顔されるのは絶対に避けたい。だからこそ彼女達は遅くまで残り、僕も同様に残っていたのだ。

 しばらく歩いて小さな水音が聞こえて来ると、2人は皆に警戒を促す。ここは外と違ってモンスターは出ないが、学生に扮した盗賊は居る。1泊2日の学園行事で、講師は生きて戻れなんて言う。死ぬ可能性は、あるのだ。

「「……」」

 茂みの中から水場を見渡し、カシーは僕等にハンドサインで合図を送る。ペニーは更に警戒しながら水場へ近付き合図を送る。

「…ユカ「しー」」

 黙ってばかりで落ち着かないのか?口を開こうとするロシェルの手を握ってやる。そして2人で身を屈め、耳の傍で囁いた。

「ココがバレると殺し合いになるぞ」

「聞き捨てならない言葉が聞こえましたが」

 マキも寄って来たが手で制して警戒に当たってもらう。カシーとジュンが水を汲む間、ペニーとマキは警戒担当。レイナは見学、僕はロシェルの世話をする。

 水源は地面に埋もれた岩の隙間からチョロチョロと流れ出て、小石を埋め込んだだけの水路を伝って下流へ注ぐ。湖を散策して見付けた入水口は少なくともココだけだった。飲料になる予定の場所を汚すバカな子供を近寄らせてはいけない。2人が十分な量の水を汲むまで、ロシェルにその事を説明し続けた。

 学園と町を隔てる壁を右手に斜面を下り、途中にある小さな平地を寝床にする事にした。一方は壁、他は斜面で森の中。上手く使えば目隠しに出来る。

「もう、喋っても良い?」

「小声なら良いわよ」

「ふう~。もう息が詰まるよお~。何でお外に出て自由に出来ないのさー」

「敵が出るからだよ。大声出したり野ションして、ブフリム集めたくないでしょ?」

「野…、ブフリム居ないもん」

「僕達以外の生徒はブフリムみたいなもんだよ」

「互いに敵として見なせ、か。確かにそう思わないと演習にならないわね」「流石はユカタ君です」

「野ションして襲われても助け切れないからね?殺すつもりではいるけどさ」

「何でよ?」

「君等が垂れてる時、僕離れてるもん」

「「「ああ…」」」

「とにかく陣地を作ろうか」

 全員で寝床作りに取り掛かった。木と木の間は低木の薮なので、外壁を中心に刈り取ってスペースを開ける。ロシェルには僕の剣を貸し、木の上の方の枝を払って降ろしてもらう。貴重な建材だ。ロシェルはスルスルと木に登り、伐採痕が見えないように注意しながら枝を落として行く。落とされた枝は皆の手で陣地の端に突き刺され、目隠しになって行った。

「僕土を掘るから、みんなは落ちて来る枝を棒にしといて」

 壁沿いの下り斜面側に枝を突き刺し穴を掘る。枝を棒にする手順はペニー達が教えてながらやってるみたい。2人は村の子でもだいぶワイルドなタイプだったようだ。村の女性なんて13歳か14歳の頃には子供作ってるからな。




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