68 / 147
火災に、注意
しおりを挟む部屋割りの書かれた見取り図を持って3階の7番目。ここが新しい自室のようだ。鍵を開けて中に入ると、部屋の向かいに窓が付いていて、白濁りしたゲル版からは明かりが差し込んでいた。倉庫より少し広い室内はキレイに掃除してあるようだが、ベッドの下やクローゼットの隙間など、カサカサの住処はどこにでもあるモノだ。そしてベッドの中に隠れるチクチクやシロムシは、僕の安眠を妨げる可能性がある。
窓を開け、ベッドからシーツを剥がし取り、敷いてある切り藁をシーツの上に積んでいく。部屋の掃除はしたらしいがあくまで部屋だけで、切り藁の中は湿っていた。交換したいな。
2往復して切り藁を捨てたら演習場に向かい薬草等を採集する。暗くなって来たし今日はここまでか。まだ倉庫は使えるみたいだし、今夜は倉庫で寝る事にした。
翌日。資料室で3人衆と問題を解きあったりロシェルの勉強を見てやって昼飯時。僕はレイナの魔法を見れなくなった事を謝った。
「ユカタって、片付けられない子?」
「荷物は少ないよ。部屋の殺虫と、寝藁の交換しようと思ってね」
「藁…と言うと、ベッドの詰め物ですね…?」
「うん、湿ってたから捨てたんだ…」
「うわー、それヤバだねー」
「そんな事言われると自室のベッドも気になるじゃないの」
「後で手配しますね」「貴女のも同じくなさい」
手配と聞いてマキに聞くと、切り藁の補充をしてくれる寝具屋さんがあるんだって。僕は演習場で草刈りしようと思ってたけど、干す時間も惜しいので、ついでに手配をお願いした。
マキが外出するので食後すぐに解散となり、僕は新しい自室で鍋敷き代わりの皿とお鍋を出す。鍋の中で火を焚いて、昨夜摘んで干しておいた薬草を熾火の中に投入した。モクモクと部屋に満たされる煙に耐えて急いで部屋を出る。逃げ場を失ったカサカサ達は煙に巻かれて死ぬだろう。ムシヨラズは名前の通り虫を殺す草で、虫害に非常に強い薬草だ。馬や人の虫下しも使われていて、味は独特の風味があって苦い。草原の比較的乾いた所ならばどこにでも生えている。昨日の授業で採った薬草の1つでもある。今回は洗わず茎毎使った。
荷物を纏めたり倉庫の掃除をしたりして時間を過ごし、自室に戻ると室内は煙で真っ白。息を止めて急いで窓を開け換気すると、まだ煙の出る鍋を持って急いで寮を出て消火する。寮の屋根から煙が見える…問題にならねば良いが…。
換気を終えて自室を掃除していると、開けっ放しのドアをノックしたのはコラリーさん。
「ユカタ君、火事だと思われるから連絡欲しかったかな」
「あ…、確かに町だと言わなきゃダメか。ごめんなさい」
「セーナ様のお弟子さんだし、場所を見て貴方の仕業だと分かってたから揉み消しといたけど、気を付けてね?」
セーナと言うか、ホリーさんのお弟子さんだと思う。コレもホリーさんに習ったから。コラリーさんは、明日寝具屋が来てくれると言う連絡を受けて来たそうで、部屋の拭き掃除を手伝ってくれた。倉庫の使用も今夜までと言う事で、明日ベッドが完成しなければ、僕は床に寝袋で寝る事になる。
寝具屋さんは翌日の午前中に来てくれて、切り藁の充填と粗布の鋲打ちをしてくれた。5万ウーラもしたが、手間賃を考えると安いモンだ。切り藁の量と、切り藁を敷いて押し固める作業を考えると僕1人では数日仕事になってしまうからな。
それから更に数日程過ごし、野外活動の日となった。朝から翌日の夕方まで演習場で過ごし、配給される少しの干し肉以外は現地調達する授業となっている。生徒達は皆背嚢を背負い、カバンを掛け、後衛はローブ、前衛は部屋の置物として大事に飾ってあったであろう装備を身に付けていた。
「ユカタの装備ってさ、背中丸空きだよねー」
「背嚢が防具の一部なんだ」
「切った皮のまま…ですね…」
「おかげで安いんだよ」
ロシェルはグリーブと胸だけのブレストにガントレットの軽装備。ジュンはローブの軽装だ。
10
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
自称悪役令息と私の事件簿〜小説の世界とかどうでもいいから、巻き添えで投獄とか勘弁して!〜
茅@ダイアナマイト〜②好評配信中
恋愛
「原作にない行動……さては貴様も“転生者”だな!」
「違います」
「じゃあ“死に戻り”か!」
ワケあって双子の弟のふりをして、騎士科に入学したミシェル。
男装した女の子。
全寮制の男子校。
ルームメイトは見目麗しいが評判最悪の公爵子息。
なにも起こらないはずがなく……?
「俺の前世はラノベ作家で、この世界は生前書いた小説なんだ。いいか、間もなくこの学院で事件が起こる。俺達でそれを防ぐんだ。ちなみに犯人は俺だ」
「はあ!?」
自称・前世の記憶持ちのルーカスに振り回されたり、助けられたりなミシェルの学院生活。
そして無情にも起きてしまう殺人事件。
「未然に防ごうとあれこれ動いたことが仇になったな。まさか容疑者になってしまうとは。これが“強制力”というものか。ああ、強制力というのは――」
「ちょっと黙ってくれませんか」
甘酸っぱさゼロのボーイ・ミーツ・ガールここに開幕!
※小説家になろう、カクヨムに投稿した作品の加筆修正版です。
小説家になろう推理日間1位、週間2位、月間3位、四半期3位
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
婚活と経済~婚活アプリで年収400万以上の男性は狙っちゃダメ!?相談所の男性の年収のボーダーラインは350万!?~
天野桃子
経済・企業
元仲人が婚活をお金の面からガチで語ってみる。ある仲人は「婚活アプリで年収400万以上の男は狙うな。詐称が多い」と言う。また、ある結婚相談所の経営者は「相談所は男性の年収350万がボーダー。収入が低いと女性に相手にされない」と言う。なんとも金にシビアすぎる婚活の世界!!婚活をお金で見ていくエッセー集。現実的すぎて毒舌要注意ですm(__)m
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる