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経験は、糧

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 昼の鐘が鳴り、湖の畔で講師からの説明を受けながら薬草の加工をして、そのまま昼食となる。昼前に聞かされた通り、加工自体は簡単な物で、僕のした加工で合っていたが、冒険者はガサツ者が多いからか、雑草や毒草を摘んで来てダメ出しされる者もいたし、せっかくの薬草をダメにしてしまう者も多かった。

「ユカタァァァ」

「水の中で揺する程度で良いんじゃないかな?」

 ガサツ者のロシェルは薄く脆い薬草を採集品に選んでしまったようで、ボロボロになった葉っぱを掌に広げて情けない声を出す。同じ物を採って来たジュンは丁寧な仕事をしていたが、洗う前より価値は下がってしまったようで、どうしたら直せるか悩んでいるのだろう。湖畔にしゃがみ込んで唸っていた。

 2人が難儀しているウスバカスミは僕も初めて見る薬草だったが、そもそも予洗いしない方が良いのでは無いか?そう思える程に水の中でよく溶けた。失敗は糧だ。僕も気を付けようと思う。

「依頼通り出来たのは7人ですね。依頼通りに採集出来なかった人、採集品をダメにしてしまった人は資料を読んで学んでください。採集品の価値が低かった人や楽な物を選んだ人も、費用対効果を考えましょうね」

 講師はそう言うと生徒から提出された採集品を持って学舎へ帰ってく。依頼達成者の7人は、僕と気になる2人にレイナマキペアの5人。そして盗賊の2人であった。奴等講師が居る前ではビクビクしていたが、講師が見えなくなると途端に横柄な態度に出た。

「へっ、どうなるかと思ったぜ…」「な?大した事無かったろ。ひひっ」

 被害者が目の前に居ると言うのに大したモノだ。採集中に奪われた者に、洗ってる最中に集られた者に睨まれてもケロリとしてやがる。まあ、結局の所、何をしても依頼を達成しなければ金にならないのは事実ではある。方法さえ間違えていなければ、だが。

「みんな、お昼食べよーよ」

 ロシェルは湖畔で食べたいようだが、僕は教室に戻って食べる提案を出す。盗賊の近くで店を広げるバカは居ないよね?って話を聞こえよがしに説明すると、皆納得してくれた。

「皆さん付いて来ましたね」

「それはそうでしょ。賢者良きを倣うと言うし」

 僕達以外の生徒も演習場を離れるみたいでゾロゾロと付いて来る。皆口々にあの2人の愚痴を零していた。講師に報告、なんて声も聞こえて来る。何事も報告は大事だね。

 昼食を摂って午後。地獄の勘定で精神をすり減らした後は武器取り扱いの授業で弓の手入れ。放課後に木の武器を持ったロシェル達に襲われて、何度か殺されたり殺したりして寮に戻る。…何だろう?食堂に入ると大人が多い。10人程の職員が集まって何かを取り囲んでいるようだった。混んでたし、特に興味も無かったので、肉を諦め先に湯の雨を浴びに行った。案の定、肉は無かった。代わりに焼き野菜が山盛りにされたよ。 



 それから3日経ち、その日最後の授業である読み書きが終わると、事務員のコラリーさんが僕を訪ねて来た。ついに僕の部屋割りが決まったらしい。倉庫暮らしが気に入ってたので変えないようにお願いしてみたけど苦笑いで返されてしまった。

「カサカサ対策はしたの?」

「してないですよ。効果は抜群らしいですが倒れてしまいます」

 部屋の場所を書いた見取り図と鍵を渡されて教室を出る。

「…何で付いて来るの?」

「気付かれたかー」

 気付かなかったらしれっと部屋に入り込むつもりだったのか?ロシェルの後ろに3人衆も隠れてる。

「明日は勘定するから、寮に戻って早く寝ちゃいなさい」

「えー、つまんないよー。レイナが魔法撃つからさ、一緒に見よーよー」

 それは見たい。凄く見たい。見たいけど、部屋に先住してるであろうカサカサを追い出したい使命感が勝った。

「レイナ、明日見せて欲しいな~」

 午後に見せてくれるって!






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