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内と、外
しおりを挟む正義の使徒等に囲まれた2人組が解放されるまでの間、僕は出来るだけ離れて早弁しながら皆が散るのを待つ。正義の使徒等はまだ採集中なのだ。いつ盗賊に変わってもおかしくない。
「あの、さ、さっきはありがと」
「あなたが声出してくれたのよね?」
正義の使徒が去ると少しして、気になる2人が駆け寄って近くに座る。取り出したのはお弁当だ。
「気にしなくて良いよ。放っとくと僕のも奪われ兼ねなかったしね」
「へえ、早いのね」
活発そうな子が小さい声で話す。近くに誰か居るのかな?
「君達も凄いね。農家の子?」
「ん。同じ匂いがするよね、君」「ユカタ、だっけ?うるさい子が呼んでたよね」
やはり2人は村の子か。2人はそれぞれ違う村から来たのだが、1回目の野外活動で互いにピンと来たそうで、それ以来の仲だと言う。野外活動において、街の子とは絶対的な経験の差があるから食い物にされたくないと言う事だった。
「僕も同意見だよ。それにみんなの身にならないからね」
「私達は他の子の事なんて気にしないけど」「そんな余裕、無いもの」
「それも分かるけど、盗賊が知り合いとか嫌だからさ」
「それは、そうだね」
「ねえ、あのうるさい子がずっと見てるんだけど」
ロシェルか。振り向いて探すと茂みから顔だけ出してコッチ見てた。
「アイツを盗賊にすると大変だから、仲良くしてやっておくれ」
「私達の得になるの?」
「命だけは助けてくれるかもね。呼ぶよ?」
2人の同意を得て、ロシェルを呼ぶと、隠れてたジュンも出て来た。
「ユカタ、仲良く早弁いーねー」
「いーだろー?そっちは5種採れたの?」
「う、うん。何とか…。講師さんに報告しようって言ったんだけど、ロシェルが隠れてようって…。まさかあんな事する人が居るなんて…」
流石ロシェルだ。多分僕なんかよりだいぶ修羅場を潜ってる。
「ロシェル、偉いぞ」
「え?えへ、まあね」
出来れば講師の所に避難するのが良いのだが、それが出来ない距離ならば、隠れて過ごすのが最善だろう。2人組も、ここなら何も無いし大丈夫だろうと踏んで来て、運悪く絡まれてしまったと言う。
「はは、ソレ分かる人にしか分からないよ」
「あ…」「そっか。分からないからどこでもウロウロするんだよね」
そう言う事だ。女子4人、一緒に早弁してる内に会話も弾み、何か仲良くなったみたい。方や思惑含みだが、敵対するよりずっと良い。
「ユカタはどんなの採ったの?」
「僕のは得に安いのだけ。盗賊に目ぇ付けられるのヤダし」
聞いて来たロシェルにそう言って、タオルに包まれた5種を取り出し湖に浸ける。
「洗うんだ?」
「コレは後で習うよ」
「そなの?」
「さっき講師に聞いて来た」
「ソレ狡くね?」
狡いのか?
「やり方までは聞いて無いよ。けど僕なら出来るだろって事で、先に処理して良いって」
先にやり方を聞いて加工したとしても、それが間違ってたら価値は落ちるのだ。確実性を上げるなら、講師と一緒にした方が無難だろう。
「お師匠様、だっけ?」
活発なペニーが聞いて来る。もう1人のおっとりした方はカシーと言ってたな。
「お師匠様のおばあちゃんに教わったんだ。薬師をしててさ、村に通ってくれてたんだよ」
「私の所も、そんな感じ」「家は採るのと増やすの専門」
ペニーの家では増えにくい薬草を、薬効を落とさぬように人の手で群生にしているそうだ。何気に凄い事してるな。カシーは効率良く食って行くため、ペニーはより高値で売るために、この学園に入ったと言った。
「凄い…。冒険譚にばかり目が行ってたけど、そう言う仕事の話も物語に出来そう」
「まあ、真似して出来る事じゃ無いけど、物語にする時はボカしてね?」
女子達が姦しくなり、僕は葉っぱを加工する。優しく洗って埃を落とし、切り口を水切りしたら絞ったタオルにキレイに挟んで終了。この手間が鮮度を保ち、売値に上乗せされるのだ。
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