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食い扶持の、奪い合い

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 一日の終わり。玄関から外に出て男子寮に向かう。

「…何で着いて来るのさ」

「帰るの早くね?」

「早く帰らないと食堂が混むし肉が無くなるんだよ」

「まだ誰も帰ってないわよ?」

 レイナが言う通り、他の生徒達は木剣で杭を叩きに行ったり今日はやらなかった魔法を撃ちに行ったりと自主的な学びを得ようとしている。もちろん只喋くってるだけの者も居るが、総じてまだ帰る時間では無いと言う認識なのだろう。

「なら何すんのさ」

「明日の練習…、しませんか?」

「明日?」

 ジュン曰く、明日の野外活動の練習をしたいのだと。パーティーとしての動きを確かめたいとか、前もって生えてる場所を探しときたいとか言われた。

「みんなは一月も学園に居て、そう言うの調べたりしなかったの?」

「い、いくつかは…」

「ユカタ君、どうしてもダメなのなら仕方無いが、ダメか?」

「敢えて言うけど、それズルだからさ。冒険者になってから苦労するよ?」

「情報収集と言う考えでは、なりませんか?」

「行きたければみんなで行っておいでよ」

「ユカタァ、そんな事言ってアタシ等に葉っぱ探させるつもり?」

「煽ってもダメ。明日は僕、1人でやるからね」

 4人はブーブー言ってるが、気にせず帰路に着いた。なぜなら明日の授業はみんなでやる物では無いからだ。頭数を揃えて沢山採れる物なら徒党を組んで挑んでも良いが、世の中そんなにボーボー生えてるモンじゃ無い。外に出ると子供から大人まで、日々の糧を得るために摘みまくっているのだ。徒党を組んで良い事なんて、魔物の襲撃や怠け者の略奪から少し身を守れるって程度の物だろう。採集は、人と人との戦いなのだ。

 人と人との戦いは、ここ食堂でも繰り広げられる。冒険者はいち早く食糧を確保し、素早く自室の倉庫へ退避する。食道からも風呂からも、トイレからも近く、ここから離れたくない。ただ、この倉庫には学生の部屋には備え付けられていると言う魔道具のランプが無いそうで、ランタンの油が切れたら何とかして確保しなければならない。

 夕飯を食べ終えてトレーを返すと、腹ごなしの運動をする為着替えたりして外に出る。少し広い浴室の裏で、僕は剣を振るう。午前中の授業で木剣を振るったが、やはり金属製の剣よりは軽いのだ。正面からの打ち下ろし、左右の袈裟斬りに切り上げにそれぞれの切り上げ、そして左右の切り払い。色々と組み合わせながら汗をかく。目に見えないブフリムを何匹も斬り殺し、息を吐く頃には空はすっかり暗くなっていた。明日の朝食は多めにしてもらおう。

 玄関前の石版に触り、体と装備を洗浄する。清潔にする為だけならコレでも良いらしいが、湯を浴びないと疲れが取れないそうなので、倉庫に武器をしまい、タオルを持ったら浴室へ。湯の雨で体を解して寝た。



 翌日、教室に集まって予定を聞き、向かうは演習地。今朝は4人と口聞いてない。席も離れてた。

「皆さんコチラですよ」

 女性講師が諸手を挙げて皆を呼ぶ。真面目な者程先着してて、僕は3番目。先着した2人はどちらも女生徒だ。冒険者ギルドに所属する女性はそれなりに多い。が、肌を露出させた剣士やマントの下が肌けてる魔法士よりも、採集で食って行こうとする女性冒険者は多い。この2人もその口か?見た所……手馴れてるな。カバンに予備の、いや、採集品専用のカバンを詰めてる。もしかしたら村の子かも知れないな。

 しばらく経って生徒が集まり、講師からの簡単な説明と注意があって解散する。気になる2人はゆっくり左へ入ってく。付いて行くのも憚られるし、僕は奥へと進んで行った。

「……付いて来てるの?」

「たまたま行く先が一緒なだけだもーん」

「今日は1人でやるから。みんなは2人1組になってやりなよ」

 僕は来た道を引き返した。振り向くとロシェルがすぐ後ろにいてびっくりした。




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