上 下
62 / 244

情報は、金

しおりを挟む


 教室に入り席に着くと、ロシェルはお弁当を取り出して、女子用の小分けされた挟みパンの1つに齧り付く。食べやすく、味の種類もあって、間食するなら女子弁の方が良いなと感じる。

「誰ですか?まだお昼には早いですよ?」

 教室前側の引き戸を開けて、女性講師は入りしな指摘した。美味しい匂いを垂れ流していたロシェルは頬を膨らませてモグモグ。バレてるぞ?それでも深い追求はされず、授業は始まった。

 午前2つ目の授業は道具取り扱い。薬草等の使い方に見分け方、採集法。テントの建て方に補修法、それぞれの収納法なんてのを覚え、演習場で実践したりもするらしい。今日は座学で草の摘み方見分け方って感じ。新参者が居るから簡単に説明してくれた。

 この町の周りに生えている薬草をペン画にした絵が講師の立つ背面の壁に飾られる。どれも良く描けてるな。色が無いのが残念だけど。

「明日は午前丸々使って、採集から保管までしますからね。忘れてはいけませんよ?」

 植生や見分け方、採集法がそれぞれの植物で説明される。根を抜くなとか、手で毟るなとか、折ったり潰したりするなとか、当たり前に感じる者にとっては当たり前の事である。

 しかし冒険者を魔物狩るだけの商売と思ってる面々はこの授業の有用性に気付いて無さそうだ。ロシェルが大口開けるのも無理は無いな。

「貴女、毎回私の授業でアクビしてますが、そんなに退屈ですか?」

「お、起きてるもん」

「なら気になる所を教えてください。何かありませんか?」

「う…。ユカタァ~」

 何故僕に振るのか。僕はちゃんと文字にしているし、眠いけど寝てないぞ?

「…まったく。なら貴方は?」

 何故僕に振るのか。答えないとその隣のジュンに行くのだろうか。

「他の子へのヒントになっちゃうから敢えて聞かない事にするよ」

「あら、意外と意地悪さんね。お師匠様の教え方かしら」

「それも答えられないかな」

 お師匠様と言うか雇用主なんだけど、セーナは質問者に考えさせる答え方をする事が多かった。講師の質問に答えなかったのは、金になる情報を座ってうつらうつらしてる奴等に聞かせたくなかったからだ。

 講師の質問が隣へ流れ、質問が設問に変わったりちょっとした情報公開がされたりして眠気のある者を覚醒させ、終わりを告げる鐘が鳴った。

「昼だー!」

「うるさい」

「明日はこの3種を含めて5種以上を採集してもらいます。ではまた明日」

 鐘の音を聞いて叫ぶロシェルに教室内はざわめくが、まだ講師が居るんだぞ?講師の女性は気にするでもなく明日の予定を告げて部屋を出て行った。

「早くご飯食べよ!?それともどっか行って食べる?」

 ハラヘリ娘がまくし立て、長机の向こうに飛び跳ねる。どうしようか迷ったが、僕はみんなに告げない事にした。

「天気も良いし、玄関の上でどう?」

「だねっ」「お供します」「ユカタ君も、行こ…?」

 生徒用の玄関の上は板張りで歩けるようになっていて、先着した2グループがお弁当を広げてた。どちらも違う組みたい。先着してた男グループは入口横で屯してる。もう1グループは先端の端でまとまる女子達。僕達は女子グループの反対側の端を陣取った。

「あ、ロシェル。敷物敷くからちょっと待ってね」

 地べたに座ろうとするロシェルを止めたジュンが敷物を敷くのを見て、僕とロシェル、近くに居た女子グループからも驚きの声が上がる。

「ソレ、マジックバッグ!?」

「うん。これくらいしか入らないけど」

 流石商家の娘と言うべきか、お高い物を持ってらっしゃる。

「僕初めて見たよ」

「おいくら万ウーラ?」

 これロシェル、はしたないぞ?とは言え僕も気になってた。

「コレね。私が子供の頃、お店で懇意にしてた魔道士のお客さんからもらったの。魔道具屋を始めるから試作したって言われて」

 市販品の値段を聞くと、馬車買えそうな値段だった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...