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情報は、金
しおりを挟む教室に入り席に着くと、ロシェルはお弁当を取り出して、女子用の小分けされた挟みパンの1つに齧り付く。食べやすく、味の種類もあって、間食するなら女子弁の方が良いなと感じる。
「誰ですか?まだお昼には早いですよ?」
教室前側の引き戸を開けて、女性講師は入りしな指摘した。美味しい匂いを垂れ流していたロシェルは頬を膨らませてモグモグ。バレてるぞ?それでも深い追求はされず、授業は始まった。
午前2つ目の授業は道具取り扱い。薬草等の使い方に見分け方、採集法。テントの建て方に補修法、それぞれの収納法なんてのを覚え、演習場で実践したりもするらしい。今日は座学で草の摘み方見分け方って感じ。新参者が居るから簡単に説明してくれた。
この町の周りに生えている薬草をペン画にした絵が講師の立つ背面の壁に飾られる。どれも良く描けてるな。色が無いのが残念だけど。
「明日は午前丸々使って、採集から保管までしますからね。忘れてはいけませんよ?」
植生や見分け方、採集法がそれぞれの植物で説明される。根を抜くなとか、手で毟るなとか、折ったり潰したりするなとか、当たり前に感じる者にとっては当たり前の事である。
しかし冒険者を魔物狩るだけの商売と思ってる面々はこの授業の有用性に気付いて無さそうだ。ロシェルが大口開けるのも無理は無いな。
「貴女、毎回私の授業でアクビしてますが、そんなに退屈ですか?」
「お、起きてるもん」
「なら気になる所を教えてください。何かありませんか?」
「う…。ユカタァ~」
何故僕に振るのか。僕はちゃんと文字にしているし、眠いけど寝てないぞ?
「…まったく。なら貴方は?」
何故僕に振るのか。答えないとその隣のジュンに行くのだろうか。
「他の子へのヒントになっちゃうから敢えて聞かない事にするよ」
「あら、意外と意地悪さんね。お師匠様の教え方かしら」
「それも答えられないかな」
お師匠様と言うか雇用主なんだけど、セーナは質問者に考えさせる答え方をする事が多かった。講師の質問に答えなかったのは、金になる情報を座ってうつらうつらしてる奴等に聞かせたくなかったからだ。
講師の質問が隣へ流れ、質問が設問に変わったりちょっとした情報公開がされたりして眠気のある者を覚醒させ、終わりを告げる鐘が鳴った。
「昼だー!」
「うるさい」
「明日はこの3種を含めて5種以上を採集してもらいます。ではまた明日」
鐘の音を聞いて叫ぶロシェルに教室内はざわめくが、まだ講師が居るんだぞ?講師の女性は気にするでもなく明日の予定を告げて部屋を出て行った。
「早くご飯食べよ!?それともどっか行って食べる?」
ハラヘリ娘がまくし立て、長机の向こうに飛び跳ねる。どうしようか迷ったが、僕はみんなに告げない事にした。
「天気も良いし、玄関の上でどう?」
「だねっ」「お供します」「ユカタ君も、行こ…?」
生徒用の玄関の上は板張りで歩けるようになっていて、先着した2グループがお弁当を広げてた。どちらも違う組みたい。先着してた男グループは入口横で屯してる。もう1グループは先端の端でまとまる女子達。僕達は女子グループの反対側の端を陣取った。
「あ、ロシェル。敷物敷くからちょっと待ってね」
地べたに座ろうとするロシェルを止めたジュンが敷物を敷くのを見て、僕とロシェル、近くに居た女子グループからも驚きの声が上がる。
「ソレ、マジックバッグ!?」
「うん。これくらいしか入らないけど」
流石商家の娘と言うべきか、お高い物を持ってらっしゃる。
「僕初めて見たよ」
「おいくら万ウーラ?」
これロシェル、はしたないぞ?とは言え僕も気になってた。
「コレね。私が子供の頃、お店で懇意にしてた魔道士のお客さんからもらったの。魔道具屋を始めるから試作したって言われて」
市販品の値段を聞くと、馬車買えそうな値段だった。
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