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人を、殺す

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「ユカタ君、助太刀しますっ」

 そう言って殴り込んで来たのは細剣のマキ。10周終わって休み無しで来たのか息が荒く、剣先をチョンと撥ねられ体を崩していた。

「少し休みなよ」「だよだよ」

「不甲斐なく、思います」

「私もです」「うう…」

 不甲斐ない3人衆が合流したので一度杭から離れる。他の人に順番回してやらないとね。

「ユカタ君の走りっぷりは見事だったな」

「先行した彼、走者の家の方ですよね?」

「押して走ってくれたら…」

 1人不穏な事を言うが、パーティーを置いて行けない状況ではそう言う状況も起こるかも知れない。

「お姫様みたいに抱っこしてもらったら良いかも」

「それは…憧れる、けどっ」

 お姫様を抱っこした事の無い僕でも解る。そんな状況有り得ないと。けどジュンはコッチをチラチラしてる。抱っこなんて赤ちゃんがされるモノだろ?憧れる所あるのか?

「ユカタ、君…。私、重いけど…」

「僕がムキムキになってからなら良いよ?」

「ムキムキは、ちょっと…。スッキリで、お願いします…」

 スッキリって何だよって思ったが、馬車で相席した僧兵2人は確かにスッキリに見えたな。デカくは無いけどギュッと詰まった筋肉してた。なるほど、あの感じか。

 3人衆の息が整い、さあやるぞと思ったが杭が無い。仕方ないね、全員ゴールしちゃったし。叩ける杭が無い生徒達はやる気に満ちた表情でサボってるか、生徒同士武器を打ち合っている。僕等もそうするか。

「怪我しない程度にやるか」「だねー」

 言うが早いか、ロシェルのナイフが腹を刺す。僕は、死んだ。

「良しっ」

「僕死んだから倒れてるね?」

「生きて鍛錬してください。レイナ様はユカタ君と。ロシェルは私とお願いします」

「私、死んでおきます…」

 ジュンは死なずにマキと組み、ロシェルと対峙する事となった。すぐに死んでたけど。

「あの子、後ろに目が付いてるの?」

「感知スキル持ってるって言われても納得だな」

 杖代わりの棒で木剣を打つレイナがロシェルについての感想を述べ、僕もそれに応える。レイナの棒は殴る武器じゃ無いのだけど、安い杖だと殴るのにも使われてるそうで、杖術なんて戦い方もあるそうだ。棒一本で生き延びる術なので、自ら殴りに行くよりは、いなして反撃がメインな戦い方なんだって。確かにコチラから仕掛けて見ても、いなし切れずに受けてる感じが多く、ロシェル並にいなされたら相手は疲れるだろうなと感じる。そして長さのある杖を前に伸ばしての牽制は槍に次ぐ間合いの長さだ。そこから魔法が飛んで来るかも、と思わせると牽制力は剣に及ぶ。

 木剣を杖に押し当て間合いを詰める。胸を突き刺して僕の勝ちだ。

「残念ながら、死にました」「レイナ様、おいたわしや」

 既に死人のマキがよよよと泣き真似をする。よよよなんて泣き方初めて見たぞ。それから生き返ったマキと剣を交えて殺されたり、ジュンの大振りで間合いが詰められなかったりして鍛錬の時間を終えた。

「汗かいちゃったね、ユカタ」

「着替えたいな…。制服でやる授業じゃ無い気がするよ」

 鍛錬の授業は借り物の武器の他に荷物を持っての授業であった。カバンの中のお弁当が心配だし、制服の中は嫌な感じだ。借り物を返却し、生徒達の流れに乗って歩いて行くと、皆が玄関の奥に何枚もある石版を触ってから1階の奥へ向かってく。ロシェル達も触ってるので僕も倣う。

「乾いた!」

「ユカタ君、知らなかったのですか?」

 知らなかったよ。この石版。壁の装飾じゃ無かったようで、洗浄魔法が付与された石版なんだって。触った本体と身に付けている物の汚れとか湿り気を取り去るって、マキに教えられた。寮の玄関にもあったのだけど、もしかして、お風呂で洗濯してたのって、無駄だった?みんな自室を干し物だらけにしてると思ってた…。




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