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恐怖は、抑止力
しおりを挟む「パーティー結成の話し合いを持ちましょう!」
重くなった空気を明るい声で払ったのは従者のマキ。3人は元々パーティーだし、役割は決まっていそうだな。そこに外から僕とロシェルが入るので、役割を決めたりしたい訳か。明日の休みは皆暇なので、お弁当をもらったら教室に集まる事になった。
…と言うか、なってしまった。僕加入するって言った?
午後は暇になったので未だ倉庫の自室にて、武具の整備をして過ごす。箱の上に平干しされた服もまだ生乾きなので、外に持ってって木の枝に掛けて干し直した。寮の裏手、風呂の傍の空き地は風があって心地良い。暗くなる前に乾いてくれたらありがたい。
「おいお前、こんな所で何してやがるっ」
浴室の壁を背もたれにして休んでいると、横からの大声に身構える。そこには3人の生徒が居て、僕に声を掛けたのはその中で1番小さい奴だった。
「ケンカすんなら相手すんぞ?」
相手の答えを聞かず、僕は抜剣して斬り掛かる。3対1なら武器使っても問題無いよな。舐め掛かった男に斬り付けられて、チビの男は尻もちを着いた。上手く躱したな。僕は払った剣を反対方向へ振り払い、チビの脛を斬る。斬ると言っても打撃に重きを置いた剣、即ち安物だ。制服のズボンを凹ませて、チビ野郎の肉と骨に痛い目を見せる程度に抑える。
「いぎゃああっ!!」
痛いか、よしよし。更に振るって痛め付ける。脛、腿、腰。忘れられない痛みを植え付けてやった。後ろにいた2人は棒立ちになって固まってる。狂人の目がコチラに向かないように、息を殺しているのだろう。
「お前等もケンカすっか?あ?」
2人は僕より大きいクセに、ビクリと体を硬直させると、答えもせぬまま後退りして逃げてってしまった。動けなくなったチビを残して。
「死にたくなきゃ医務室まで這って行け。殺すぞ?」
「う…うぅ……」
まともに答える事も出来ないチビを蹴っ飛ばして遠ざけると、やがてヨロヨロとしながら這って行った。日も影って来ているし、夕飯には間に合わないだろうな。
乾いた服を取り込んで、早めの夕食。食堂には早飯にあり付く者が数名居て、声も無く粛々と食事に対峙していた。僕はトレーを持って自室へ向かう。料理を受け取ったタイミングでコンカーンと鐘が鳴ったからだ。男達が雪崩込んで来る前に避難しよう。
魔力暴走が収まって暗くなった部屋にランタンの灯りが灯る。赤く燃える炎の下では食事が美味しそうに見える。今夜は皿に敷かれた角パンの上に、潰した茹で芋と茹で解し肉を混ぜた物に、粉を付けて焼いた肉。そしてその上からアカナスと豆の煮たのが掛かってる。よく見たら女子の昼飯だなコレ。本当に、質より量な男飯。作っているのは女の人だが。
ゆっくり食事を楽しんで、たっぷり湯の雨で体を解し、のんびり予定表等見返して過ごし、寝て起きたら朝。鐘が鳴ってから食堂に入ったが、今日は補習も無い休みとあってか、昨日の朝より人が少なかった。ゆっくり座れるので今日は食堂で食べたよ。食べ終える頃にはかなり混んで来てたけど、この混み合いはちょっと慣れない。
「お、逃げずに来たな?」
「そんな事言うと帰るよ?」
まるで果たし合いみたいな事を言うロシェルを睨み付け、やって来たのは玄関前。後退りする僕を、幼なじみ3人衆が囲んで押さえ、きっと教室に向かうのだろう。階段を上ってく。が、着いたのは3階の奥で学園長の部屋の上。ココは本が沢山あって本等を見たり自習が出来る資料室。
「この部屋には静寂の魔法が掛かっているの」
「それでも下は学園長室です。静かにするのが良いでしょう」
レイナとマキが左右から、僕の耳元で囁いた。ゾワゾワするので止めて欲しいが、コレで普通に発した声だと言う。大声で歌っても話し声程度まで声量が落ちるんだってさ。
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