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ゲル水は、飲める
しおりを挟む「次からは予約しましょ」
「私も良い事を聞けたわ」
レイさんは何処に行くのか聞いてないけど、セーナは帰りもあるし、予約は大事だな。一応は受理された搭乗確認だけど、無理言うパーティーの提案が受けられてしまったら困るな。ひとまず受付を離れ、時間潰しと昼食にありつくために町を歩く。乗り場から見える門前に人の列が見えたので、外に行くと言う考えは3人の総意によって切り捨てられた。
レイさんに串焼きとパンを奢ってもらい、ミズゲルの浮かぶ貯水池の近くにある木の下で昼食を摂る。貯水池は2m程の高さのある土手が作られていて、ここからじゃ水の様子は見えないが、この水は主に馬用として使われていると看板に文字で書いてあった。
「ここの馬は人より良い水飲んでんだね」
「ゲルが水を濾してるから?…濾すのは地下水も川も変わらないわね」
「村にもため池あったからね。人は井戸を使うけど、作物はため池の水を使うんだ。こっちの方が良いのが出来るって言うからね」
「けど飲まないのよね?私も飲みたいとは思わないけれど」
「場所により、かしらね」
レイさんはゲル水を飲む場所を知っていると言う。砂や荒地、雨の降らない土地や海での移動時はゲルの水滴を大事に取っておいて使うのだとか。それでも水用に大事に飼われてる奴なのは村のと変わらないみたいだ。
馬車乗り場に行くと、件の6人が馬車の前で3人と揉めていた。正確には5人が2人と揉めて、1人はオロオロ、1人がそれを静観している。イザコザの周りには7人の男女。そこに僕達が合流して10人になった。彼奴等がいなけりゃ定員だ。
「俺達は領主様の命令でアッゼニに向かわねばならんのだ!」
「もしかしてぇ、領主様に楯突く気ぃ?」
「へへっ、お前、首が飛ぶぜぇ」
「今すぐ飛ばしても良いが、どうする?」
「メンドクサ。殺しちゃえ」
「セーナ」
「土よ、防げ、エーダフォス・サニーダ」
レイさんの言葉が引き金となり、セーナの魔法が3人の前に現れると、6人組は驚いて辺りを見回す。魔法の詠唱を遮られた1人から大量の水が放たれた。全身から放たれた水が6人組をビタビタに濡らす。
「ど、どゆこと?」
「魔力の暴走ね」
「自己流で習得したのかしら?学院ではこうならない術を学んだりするのよ?」
僕の問いに2人が答える。他の客が唖然とした中で喋ってたので、冒険者共が僕達に目を付けた。
「お前か!?」「装備がビシャビシャじゃない!どうしてくれんのよ!?」
「学が無いからそうなるのよ」
「領主様の命令…なんてもの疑わしいわね。ご領主のお名前、伺って良いかしら」
こちらに駆け寄ろうと体を向けた男2人が動きを止める。僕達の前につむじ風が吹いたからだ。
「貴女、本当に凄いわね…」
セーナがやったみたいにレイさんは言うけど、詠唱してないよな?そう言うハッタリなのかも知れないから黙っとく。
「砂まみれになるだろうし、あまり近付いて欲しくないわ。で、領主の名前。誰様よ」
「り、領主様は領主様だ!名前なんて聞いてねえよっ!」
「あンた達、他の領から来たのね。領主の名前なんてこの地で生まれ育った者なら誰でも知ってるわ。ねえ?」
「え?あ、うん」
セーナが僕に同意を求め、答えなさいって顔してる。顎でクイクイ、早くしろって?
「えと、エノン…侯爵様「そうだエノンだ聞いてたの忘れてたぜ!」「馬鹿っ」は確か学校作った人だよね?」
「よく覚えてたわね。その男は領主だと思ってるみたいだけど。そこのあなた、エノン侯爵の領地は何処?」
「……無いわ」
「「ご名答」」
引っ掛けに掛かった馬鹿が仲間に馬鹿であると認められ、僕はセーナに褒められた。そしてセーナは男を馬鹿認定した女に質問を投げると、女は正解を答えた。何でそれを知っててここの領主の名前を知らないんだ?領地渡りをした事無い僕でも知ってる程の常識だよ?
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