上 下
35 / 244

パンと、肉

しおりを挟む


「まだ明るいが停泊地に着いたぞー」

 本日の停泊地となる休憩地は山の頂上に広がる台地。見晴らしが良くて風があり、丈のある草が靡いてる。街道が太いので馬車は街道に停め、僕達は外で体を伸ばした。

「時間はあるけど有限よ?どうする?」

「まずは寝床から作ろうか」

「草を編むのね」

 街道から10m程入ったら、寝床と料理が出来るだけのスペースの草を抜く。キレイな円形に抜けたら、抜いたのと生えてるのを交差させて編み、壁にする。もちろん足りないので他所から草を抜いて来て壁の足しにする。

「楽しそうな事してるわね」「見てても良いかしら」

 女性2人が見物に来たけどコッチは作業中だからおもてなしなんて出来ないよ?

「どうして草を編むのかしら」

「さあ?私は見様見真似で動いてるだけだから。ユカタ、教えてちょうだい」

「風が抜けなくなるんだよ。敵が入りにくくなるしね」

 レイさんの問いに答えると、2人の観客は感心したようで声を漏らす。もう1人の女性は護衛の人達と設営してる。この2人、遊んでる訳では無いのだろうがウロウロされると草が踏まれる。邪魔なので円の中に入ってもらった。剥き出しの地面なら好きなだけ踏んでくれて構わないからね。

 草壁の8割程度が出来上がると、セーナは食事の支度に取り掛かる。料理が終わるまでに壁と寝床を作らねば。寝床は2つ用意する。壁を利用し、外に膨らむ形で寝るスペースを編む。天井を塞ぐ様に編んだら草や土を掛けて壁を厚くし、敵に見つかりにくくする。最後に寝床に草を敷いて完成だ。レイさんは経験が浅く、草を編むのは上手くない。その代わり率先して草を抜いて来てくれるので地味に助かる。

「これ、使うわよね?どれくらい摘めば良いかしら」

「する回数によるね。トイレは街道の向こうに作る予定だけど、距離的にどうかな?」

「1人で行くのは怖いわね。風向きが変わったのが悔やまれるわ」

 寝床を作り始めて風向きが反転したのは誤算だった。作る予定だった場所が風向かいになり、左右は護衛と3人のテントと馭者の居る馬車。そのため風の行く街道の向こうに作らざるを得なくなったのだ。

「セーナが起きてる時に行けると良いね」

「ユカタは付いて来てはくれないの?」

「守れる程強くないからね」

 トイレ用の葉っぱを2人で摘んで、トイレを作って戻ると料理が出来ていた。ありがたいが、夜が怖いな。あっち、お肉焼いてるみたいだし。荷物が重くなるし敵が来るので僕達はやらないが、壺に塩と香辛料をした肉を詰めて蓋をし練った麦粉で密閉すると、1日2日程度なら持ち歩く事が出来るのだ。僕達は干し肉をスープにしたり、そのまま齧る。

「パンは明日の夜まで余裕があるけど、いつか焼かなきゃ行けないわね」

「棒に巻いて焼くのが早そうだね」

「今はあンたの槍しか棒らしき物は無いけれど。どこかで枝でも見繕いたいわね」

 夕食は干し肉と干し野菜のスープにパンと干し果物。パン買って良かった。スープだけでは腹持ちが悪いのだ。鍋は1つしか無いのでパンを焼くとスープが作れず、逆もまた然り。手垢塗れの槍を使うのは、僕はともかく2人が良い顔しないだろう。明日の休憩で何本か折って来なければ、僕の槍が良い匂いになってしまう。

 食べて出し、レイさんとセーナには日が落ちたと同時に寝てもらう。護衛の2人はテントがあるのに2人共外にいるみたい。完全に荷物用なのだろうな。焚き火で乾かした草を丸めて燃料を作り、時間を潰す。移動中の休憩で拾って来た枯れ枝は大事に使わないとだからね。



 グルグルと唸り声を上げて敵が来る。やはり街道の向こうから来た。息を潜めて様子を窺うと、数は6、小さな群れを成したウォリスだった。4匹は馬に、2匹は5人のテントに向かってる。護衛の2人は気付いて臨戦態勢だし、こちらも動くか。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...