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パンと、肉
しおりを挟む「まだ明るいが停泊地に着いたぞー」
本日の停泊地となる休憩地は山の頂上に広がる台地。見晴らしが良くて風があり、丈のある草が靡いてる。街道が太いので馬車は街道に停め、僕達は外で体を伸ばした。
「時間はあるけど有限よ?どうする?」
「まずは寝床から作ろうか」
「草を編むのね」
街道から10m程入ったら、寝床と料理が出来るだけのスペースの草を抜く。キレイな円形に抜けたら、抜いたのと生えてるのを交差させて編み、壁にする。もちろん足りないので他所から草を抜いて来て壁の足しにする。
「楽しそうな事してるわね」「見てても良いかしら」
女性2人が見物に来たけどコッチは作業中だからおもてなしなんて出来ないよ?
「どうして草を編むのかしら」
「さあ?私は見様見真似で動いてるだけだから。ユカタ、教えてちょうだい」
「風が抜けなくなるんだよ。敵が入りにくくなるしね」
レイさんの問いに答えると、2人の観客は感心したようで声を漏らす。もう1人の女性は護衛の人達と設営してる。この2人、遊んでる訳では無いのだろうがウロウロされると草が踏まれる。邪魔なので円の中に入ってもらった。剥き出しの地面なら好きなだけ踏んでくれて構わないからね。
草壁の8割程度が出来上がると、セーナは食事の支度に取り掛かる。料理が終わるまでに壁と寝床を作らねば。寝床は2つ用意する。壁を利用し、外に膨らむ形で寝るスペースを編む。天井を塞ぐ様に編んだら草や土を掛けて壁を厚くし、敵に見つかりにくくする。最後に寝床に草を敷いて完成だ。レイさんは経験が浅く、草を編むのは上手くない。その代わり率先して草を抜いて来てくれるので地味に助かる。
「これ、使うわよね?どれくらい摘めば良いかしら」
「する回数によるね。トイレは街道の向こうに作る予定だけど、距離的にどうかな?」
「1人で行くのは怖いわね。風向きが変わったのが悔やまれるわ」
寝床を作り始めて風向きが反転したのは誤算だった。作る予定だった場所が風向かいになり、左右は護衛と3人のテントと馭者の居る馬車。そのため風の行く街道の向こうに作らざるを得なくなったのだ。
「セーナが起きてる時に行けると良いね」
「ユカタは付いて来てはくれないの?」
「守れる程強くないからね」
トイレ用の葉っぱを2人で摘んで、トイレを作って戻ると料理が出来ていた。ありがたいが、夜が怖いな。あっち、お肉焼いてるみたいだし。荷物が重くなるし敵が来るので僕達はやらないが、壺に塩と香辛料をした肉を詰めて蓋をし練った麦粉で密閉すると、1日2日程度なら持ち歩く事が出来るのだ。僕達は干し肉をスープにしたり、そのまま齧る。
「パンは明日の夜まで余裕があるけど、いつか焼かなきゃ行けないわね」
「棒に巻いて焼くのが早そうだね」
「今はあンたの槍しか棒らしき物は無いけれど。どこかで枝でも見繕いたいわね」
夕食は干し肉と干し野菜のスープにパンと干し果物。パン買って良かった。スープだけでは腹持ちが悪いのだ。鍋は1つしか無いのでパンを焼くとスープが作れず、逆もまた然り。手垢塗れの槍を使うのは、僕はともかく2人が良い顔しないだろう。明日の休憩で何本か折って来なければ、僕の槍が良い匂いになってしまう。
食べて出し、レイさんとセーナには日が落ちたと同時に寝てもらう。護衛の2人はテントがあるのに2人共外にいるみたい。完全に荷物用なのだろうな。焚き火で乾かした草を丸めて燃料を作り、時間を潰す。移動中の休憩で拾って来た枯れ枝は大事に使わないとだからね。
グルグルと唸り声を上げて敵が来る。やはり街道の向こうから来た。息を潜めて様子を窺うと、数は6、小さな群れを成したウォリスだった。4匹は馬に、2匹は5人のテントに向かってる。護衛の2人は気付いて臨戦態勢だし、こちらも動くか。
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