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平和の、代償

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「ウロの実のせいでポーションみたいな味になったわね」

 セーナは過去の記憶から味の原因を探し出そうとする。アカナス、ウロの実、サンの実と水の混合液なのに、どの味にも遠くなったのだ。

「僕ポーション飲んだ事無いけどコレは美味しいよ」

「甘さが近いのかしら。ポーションは仄かに甘いのに口に残るのよね。コレはその甘さが強く出てる」

「なんにしても、この酸っぱいのを無駄にしなくて良かったわ」

 混合水を飲みながら朝食の続きをし、寄って来るタマゲルにアカナスのヘタなんかを食べさせて過ごした。

「魔物なのに襲って来ないのね」

「顔に付くと溶かされちゃうよ」

「それは嫌ね。海に居るのは触れないのよ?」

「シオミズゲルかな?ミズゲルは水を溶かしてるって、子供の頃誰かに聞いた事があるよ」

「ミズゲル在る海は赤くならない、ね」

「ミズゲルは水底を望む、ではなくて?」

 レイさんの言葉にセーナはそう返すが、多分意味は同じなのだろう。敢えてこの場では言わないが、タマゲルが出した水は飲むな、と言うのが村での格言だ。村には畑の合間合間に発酵液肥を作る瓶とかあるし、何を吸収して出した水か分からないからだ。井戸の中を掃除させるのに使う個体は専用に育てられ、イタズラしようものならボコボコにされる。

 食事と休憩を終えて荷物をまとめたら再び町の中へ。出るのはすんなりだが入るのには列に並ぶ必要があるので早め早めに行動しなければならない。最後尾、商人の荷馬車の後ろに並んで付いて行く。一人一人に検問があるので町に入るのに30分程掛かった。そりゃああんな良い場所に誰も居ない訳だ。

 南北通りから広場に入り、露店を見ながら東西通りを西へ。途中、貴族街の壁で左右何も無くなり、しばらくして再び店舗が並び出すと人の活気も戻り出す。

「こっち側は酒場が多いのかな?」

「宿屋の食堂で飲むのが安上がりよ」

「そもそも僕は飲まないけど、大人になったら飲んでみたいな」

「ふふ、その時は教えて頂戴?私が付き合うわ」

「あら羨ましい。ユカタに味が分かれば良いけど」

「勿論貴女も招待するわ。3人で飲りましょう」

「謹んでお受けいたしますわ。あンたはそれまでお酒は我慢なさい」

 我慢も何も、来年まで飲めないし、もう1年飲まなくても困りはしない。

 西門の近くに行くと、見知った声が聞こえる。馬の嘶きだ。近くに発着場があるのだろう。事務所で乗車時間を聞き、30分待つ事になる。待合室には5人居て、女性3人男が2人全部で8人となった。多分だが、馬車が1台増えると思う。前のと同じ馬車なら定員は10人だろうし、この町から運ぶ荷物を追加するなら1台では足りないからだ。しかし僕の予想は外れた。

「もう2人来るのを待つから待ってもらうよ。遅くても1時間したら出発するから、乗り込んで休んでいてくれても構わないぜ」

 客が多いから荷物を乗せず、追加の客を待つと言う。荷物より人の方が軽いから、1時間待っても早く移動出来ると言うのだ。追加の客が来次第出発なので、どこかに出掛ける事も出来ず、自分達の居場所を確保して休む事を全員が選択した。レイさんは右前の角を確保して、その隣に僕、セーナと陣取った。正面3人は女性3人組で、出入口の左右を男が陣取る。5人の話を聞くに、男2人は護衛らしい。女性3人組も冒険者な姿をしているが、セーナやレイさんと同じ感じなのだろうか。3人とも剣士スタイルなのが引っ掛かる。男の方はどちらも本職、方や剣士で方や斥候。体付きで分かるムキムキ。

「お前、護衛か?」

「僕も護衛対象なんだけど、殺る時は頑張るよ」

 ちょっと見過ぎて言葉が飛んで来る。僕の装備をチラッと見て護衛かどうかを問うて来た。

「手前のあんたは使えるよな?」

「私?索敵でもする?」

「マジかよ…」「助かるが、魔力は温存してもらおう」

「そうね。自分の仕事だけにするわ」

 薬草でも売るのかな?









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