剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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もの凄い、破壊力

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 補佐さんが帰って来て辺りを見回し、ふぅと息を吐く。そりゃあそうだ。これだけ美人な人が出て来たら変な男が集まって来るかも知れないからな…けど誰?纏めて持ち上げられた金髪はふわりとして日を浴びてキラキラとしているし、補佐さんが揃えた服は女性の柔らかいものを持ち上げていて、それを隠すように肩からショールが掛けられている。が、逆に真ん中に目が行ってしまう。コルセットで凹凸を強調してるせいだ。コルセットから伸びる長いスカートも、視線を上げるのに効果があるに違いない。

「へぇ、あンたも男の子なのね」

「うう、女の人って変化へんげする魔物みたいだ」

「褒め言葉として受け取っておくわ」

 セーナの嫌味に顔を背けて答える僕を、レイさんは頭を撫でて許してくれた。美人に撫でられるとにやけてしまう…。

「さ、デレデレしてないで行くわよ」「そうですね」

 僕と補佐さんを前に、セーナが後ろでレイさんを守る形で銀座へ向かう。町行く人から凄く注目される。注目されてるのは僕の肩に手を置いてる人に対してだが、注目される事に慣れてない僕はとても恥ずかしい。せめて手を離して欲しい。

 大通りの真ん中、大きな木の植わってる広場にある銀座に着くと、やっと視線が散る。木の周りが露店街になっていて、道行く人はそちらに視線が向いてるからだ。

 補佐さんが守衛に声を掛け、重そうなドアが開けられると、レイさんが僕の両肩を押して中に入る。守衛に睨まれて動けなかったからだ。

「護衛任務よ。気を付けなさい」

 セーナが後ろでそんな事言ってる。

「これはこれは。今日はお連れ様のご要件で御座いますか?」

「ええ、護衛を兼ねておりますので、よしなに」

 上唇から左右に伸ばした髭の職員と補佐さんが言葉を交わし、補佐さんとレイさん、そして職員が別室に連れられてった。僕達は暇になったので待合席に座して待つ。

「ねね、別室って何?」

「キレイな格好してると個室で受け付けてくれるのよ。みすぼらしい格好だと部屋が汚れるでしょう?」

「成程ね。金属の甲冑とか着けたら僕も別室に行けるかな?」

「モノによるわね。ピッカピカにして真っ赤なマント着けたら入れるかも知れないわよ?」

 真っ赤なマントか。それは良いな…とても良い。身の丈2mを超えた僕が真っ赤なマントを翻して来店するのを想像する。腰の物はどうするか。長剣で背中に盾を背負うのも良いし、左右に鉄棍を提げても良いよね…。うん。そちらの方がよりマントが翻る。

「何よ遠く見ちゃって。レイのおっぱいの事でも妄想してんの?」

「…酷いよセーナ」

 凄く心外だ。薄布の柔らかいモノでは無く、銀張りのカッチカチを妄想してたのに。

「銀張りのフルプレートだよ…」

「何それ、鎧?」

「うん」

「それは失礼したわ。お詫びに私の杖持たせてあげる。銀張りよ?」

 セーナの杖は金属なのに凄く軽い。中が木製だからだそうだ。

「振ったら折れるから、使うなら突く専門ね」

「へー。棘付けて槍にしたいかな」

「私の趣味じゃ無いけど、そう言うのも見た事あるわ。けど迂闊に投げられないわね」

 あくまで近距離防衛用だそうで、バチバチに殺り合うモノでは無いと言う。そして僕達からすると滅茶苦茶高価な銀張りも、本職からすると中価格帯だと聞かされた。魔法職にとっての1番は断然ミスリルで、中空銀のミスリル張りが至高なのだそうな。全部中空ミスリルにすればと返すと、それだと逆に重くなり、値段も馬鹿馬鹿しくなるんだと。

「鎧は詳しく無いけど、硬さを極めた物と軽さを求めた物で二分されると聞いた事があるわ」

「サンナンさんに?」

「ええ。王都からムルザバに帰る時、護衛で雇ったパーティーに居たのよ。普段から魔術師の格好をしてるのも彼等の助言あっての事ね」

 平服で外を行くと、商人なんかと勘違いした盗賊に襲われ易くなったりするんだって。男女を分かりにくくさせたりもしてるのだとか。成程ね。





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