26 / 297
もの凄い、破壊力
しおりを挟む補佐さんが帰って来て辺りを見回し、ふぅと息を吐く。そりゃあそうだ。これだけ美人な人が出て来たら変な男が集まって来るかも知れないからな…けど誰?纏めて持ち上げられた金髪はふわりとして日を浴びてキラキラとしているし、補佐さんが揃えた服は女性の柔らかいものを持ち上げていて、それを隠すように肩からショールが掛けられている。が、逆に真ん中に目が行ってしまう。コルセットで凹凸を強調してるせいだ。コルセットから伸びる長いスカートも、視線を上げるのに効果があるに違いない。
「へぇ、あンたも男の子なのね」
「うう、女の人って変化する魔物みたいだ」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
セーナの嫌味に顔を背けて答える僕を、レイさんは頭を撫でて許してくれた。美人に撫でられるとにやけてしまう…。
「さ、デレデレしてないで行くわよ」「そうですね」
僕と補佐さんを前に、セーナが後ろでレイさんを守る形で銀座へ向かう。町行く人から凄く注目される。注目されてるのは僕の肩に手を置いてる人に対してだが、注目される事に慣れてない僕はとても恥ずかしい。せめて手を離して欲しい。
大通りの真ん中、大きな木の植わってる広場にある銀座に着くと、やっと視線が散る。木の周りが露店街になっていて、道行く人はそちらに視線が向いてるからだ。
補佐さんが守衛に声を掛け、重そうなドアが開けられると、レイさんが僕の両肩を押して中に入る。守衛に睨まれて動けなかったからだ。
「護衛任務よ。気を付けなさい」
セーナが後ろでそんな事言ってる。
「これはこれは。今日はお連れ様のご要件で御座いますか?」
「ええ、護衛を兼ねておりますので、よしなに」
上唇から左右に伸ばした髭の職員と補佐さんが言葉を交わし、補佐さんとレイさん、そして職員が別室に連れられてった。僕達は暇になったので待合席に座して待つ。
「ねね、別室って何?」
「キレイな格好してると個室で受け付けてくれるのよ。みすぼらしい格好だと部屋が汚れるでしょう?」
「成程ね。金属の甲冑とか着けたら僕も別室に行けるかな?」
「モノによるわね。ピッカピカにして真っ赤なマント着けたら入れるかも知れないわよ?」
真っ赤なマントか。それは良いな…とても良い。身の丈2mを超えた僕が真っ赤なマントを翻して来店するのを想像する。腰の物はどうするか。長剣で背中に盾を背負うのも良いし、左右に鉄棍を提げても良いよね…。うん。そちらの方がよりマントが翻る。
「何よ遠く見ちゃって。レイのおっぱいの事でも妄想してんの?」
「…酷いよセーナ」
凄く心外だ。薄布の柔らかいモノでは無く、銀張りのカッチカチを妄想してたのに。
「銀張りのフルプレートだよ…」
「何それ、鎧?」
「うん」
「それは失礼したわ。お詫びに私の杖持たせてあげる。銀張りよ?」
セーナの杖は金属なのに凄く軽い。中が木製だからだそうだ。
「振ったら折れるから、使うなら突く専門ね」
「へー。棘付けて槍にしたいかな」
「私の趣味じゃ無いけど、そう言うのも見た事あるわ。けど迂闊に投げられないわね」
あくまで近距離防衛用だそうで、バチバチに殺り合うモノでは無いと言う。そして僕達からすると滅茶苦茶高価な銀張りも、本職からすると中価格帯だと聞かされた。魔法職にとっての1番は断然ミスリルで、中空銀のミスリル張りが至高なのだそうな。全部中空ミスリルにすればと返すと、それだと逆に重くなり、値段も馬鹿馬鹿しくなるんだと。
「鎧は詳しく無いけど、硬さを極めた物と軽さを求めた物で二分されると聞いた事があるわ」
「サンナンさんに?」
「ええ。王都からムルザバに帰る時、護衛で雇ったパーティーに居たのよ。普段から魔術師の格好をしてるのも彼等の助言あっての事ね」
平服で外を行くと、商人なんかと勘違いした盗賊に襲われ易くなったりするんだって。男女を分かりにくくさせたりもしてるのだとか。成程ね。
20
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
禁忌地(アビス)に追放された僕はスキル【ビルダー】を使って荒野から建国するまでの物語。
黒猫
ファンタジー
青年マギルは18才になり、国王の前に立っていた。
「成人の儀」が執り行われようとしていた。
この国の王家に属する者は必ずこの儀式を受けないといけない…
そう……特別なスキルを覚醒させるために祭壇に登るマギルは女神と出会う。
そして、スキル【ビルダー】を女神から授かると膨大な情報を取り込んだことで気絶してしまった。
王はマギルのスキルが使えないと判断し、処分を下す。
気を失っている間に僕は地位も名誉もそして…家族も失っていた。
追放先は魔性が満ちた【禁忌地】だった。
マギルは世界を巻き込んだ大改革をやり遂げて最高の国を建国するまでの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる