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サンナンは、3男

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 公共浴場には補佐のキングスコートさんも付いて来た。主に案内係だ。僕達が体を擦っている間にレイの服を用意して、宿の予約も取ってくれるんだって。宿探しは面倒だと思ってたのでコレは助かるのだが、先に宿を取ってくれたら荷物が置けて更に助かったんだけどな。

「はあ、分かりましたよ。ギルドからのお願いとあったら断れませんからね。けどまあこれっきりでお願いしますよ?」

 番台に座る年寄りの女が嫌味口調で許可を出し、僕とセーナの荷物を番台の奥へ仕舞わせてくれる。金を払って利用すると言うのに、なぜ嫌味を聞かねばならないのか。荒んだ心と疲れた体を湯で流し、擦って全身を清めて上がった。

「早く荷物を持ってってくれないかねえ」

「2人はまだなの?」

「女の支度は長いもんさ。面倒臭いねぇ」

 荷物を返してもらいに番台に向かうと、セーナ達はまだ上がってないと聞かされる。

「面倒でも、あんまりそう言う事言わない方が良いよ?」

「何だい、あンたアタシに説教かい」

「うん。いつ死んでも未練無いだろうけどさ。貴族相手だと家族も殺られちゃうからね。客商売なんだから気を付けなよ」

「知った口叩きやがって…。とっとと出て行きな」

「知ってるからね。家族皆殺しに遭った客商売。1人が幼なじみでさ」

「貴族が平民を殺したとは、聞き捨てならんな」

僕と婆さんの話が耳に入ったのか、1人の冒険者姿が口を挟んで来た。胴鎧は脱いでいたが手脚に金属鎧を着けた前衛タイプの男だ。良いなぁ。

「その者の名は、聞いて無いか?」

「え?うんスミヨン辺境伯の寄子でマンスとか。爵位までは聞いてないよ」

「マンス…。9年前か」

「僕が5歳の頃だから、そうかも」

 マンス家は9年前の戦争で食料調達を指示されて、各村々を回ってありったけの食料をタダ同然で掻き集めて来た功労者だと言う。功労の影で泣く者が居る事を知ったこの男は、一体何者なのだろう。

「おばさん、上がったわ。荷物ありがとうね。あら、ユカタも上がったの?覗きかしら?」

「嫌味言うなって説教してたんだよ」

「止めときなさいって。死体漁りがデッドパーソンになって帰って来るようなモノよ?」

「俺も其方と同じ意見だ。だがそれは、お前の優しさでもあるのだろうな」

「あら、ナンパされたの?」

「ナンパなら男より女にしたいがね、セーナよ」

「ん?あら、3男」

 この2人、知り合いらしい。ちなみに僕も農家の3男だ。

「番台越しに見合いしてんじゃないよ!」

 婆さんが切れた。旧知の2人がペチャクチャやり始めたからだ。そんな訳で?公共浴場の前で話をする。それはそれで迷惑だろうが、補佐さんが戻って来るまで待ってろって話だし、レイさんはまだ脱衣場で待機してる。移動は出来ないのだ。

「俺はサンナン。貴族の3男だから付いたあだ名だ」

「僕ユカタ。サンナンさんはセーナと付き合ったりしないの?」

「「疲れてないから無理」だそうだ。もっと稼いだら靡くかもな」

「この子の方が稼いでるわよ?疲れさせて靡いてやろうかしら」

「そうなのか?俺も頑張らなきゃな」

「いつまでも元気でいるよ」

「元気なのは良い事ですね。お待たせしました。3男様もご一緒でしたか」

 男女3人、風呂屋の前でペチャクチャしていると荷物を抱えた補佐さんが小走りで向かって来た。僕等を見て急いで来たのだろう、顔が少し赤いや。

「補佐殿が付いて居たのか。ユカタの言も間違っては無かったな」

「はて?」

 こちらの話だとお茶を濁し、補佐さんを風呂屋に向かわせる。何か話たげにチラチラしていたが、連絡事項でもあったのだろうか。サンナンさんとは暫く話をしていたが、宿を取りに行くと言って別れた。サンナンさんは今日は泊まって、明日からムルザバへ向かうみたい。この辺りを行来しながら生計を立ててるんだって。

「盗賊も出るし、すぐ疲れちゃうかも知れないね」

「その程度で疲れてたら願い下げよ」

 セーナの理想は高そうだ。






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