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見詰め合う、目と目

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 馭者に刺さった矢は二の腕を貫通していたが、痛みで力を込めたのか胴体には至らず、出血も最小限に留めている様子だった。ナイフで鏃をやじり 切り落としてる。慣れたものだな。

「痛え…」

「痛いで済んで良かったね」

「全くだぜ。お前上手いじゃねーか」

「騎士を目指して背中に乗ったりしてたからね」

「ああ、成程な。俺もガキん頃やってたぜ」

 大人に見付かると怒られるんだけど、子供はみんな1度は乗るんだ。

「兵役はしたの?」

「3年な。そこで俺は馬の世話が好きなんだって解っちまった」

 兵士は給料出るけど騎士見習いの衛士には出ない。そして騎士になれるのは貴族か相応の武勲を立てた者だけ、となると馬の世話一本で食って行くのは無理だと判断したそうだ。

 橋を越え、街道の脇に停車するとセーナが飛び降りて来た。

「僕は馬に水やるから、セーナは傷の手当をお願いね?」

「ちゃっちゃとやって、とっとと出ましょ」

 そうちゃっちゃとは行かないが、水を飲ませて水を汲み、警戒しながら馬を休ませる。

「暫くは熱っぽくなるから、落ちないように気を付けなさい」

「助かったよ。あんた薬師の婆さんの娘だろ?」

「孫よ」

 ホリーさんは名が知れてるな。馬を休ませ出発し、昼の休憩地へ着いたのは昼を少し過ぎてからだった。馬を走らせたので休みを多く入れたためだ。その分昼の休憩時間が短くなる。

「パンを焼こうと思ったけど、食事に時間を割けないわね」

「お鍋にびっちり膨らんでるし、夕飯は小さく丸めてスープの具にしよう」

 鍋蓋に張り付いてるのを剥がして丸め直し、干し肉と干し果物で飢えを満たす。夜にパンを焼くのも匂いが立つし、難しい所だ。

「ねえセーナ」

「何か用?」

「トイレ行くけどどうする?」

「何よそれ。1人で行けないの?」

「屈んで目の前にブフリム居たら、殺れる?」

「それは怖いわね…」「怖くなる事言わないでよ!」

 馬車の奥で休んでた女性も怖くなってしまったようで顔を出す。昨日までどうしてたのさ。そんな訳で3人列になって草藪に入って行く。まずは僕がして、少し移動してセーナが、最後に女性がして戻ると計画を立て、ハズレを引いたのは僕だった。

「うっぎっ!」「ギャッ!」

 ブフリムのうんこのおかげで落とし主の存在に気付けなかったのだ。引き抜いた中剣を振り回し、周りの草毎ブフリムの頭を切り付ける。倒れた所に止めの一撃を加え、剣を振って血を払う。水洗いするまで鞘に収めたくない。

「当たりね」

「臭いよぉ…」

「随分余裕よね」

「匂いで居るのは予想してたけど、やっぱ目の前に居るとびっくりするね。みんなも気を付けて」

 …結局ハズレを引いたのは僕だけだった。馬の水を少しもらい、草束で剣を擦り洗いしたよ。



 ブフリムやウォリスに襲われ予定を3日遅らせたが、12日目にして漸く1つ目の町に着いた。ここは迷惑なおじさんが言っていたスコフィールドの町で1日泊まりとなる。おじさんの荷物が降ろされて、街の従業員によってハコー商店へ運ばれるそうだ。

「特に見る物も無いでしょうけど、あンたはどうしたい?」

「見る物は無いけど、買い物はしないとね」

「そうね。宿を取ったら買い出しに出ましょ」

「私も同行させてもらって良いかしら」

 すっかり打ち解け…ては無いのだが、乗客の女性が声を掛けて来た。この人馬車での旅は初めてらしく、装備も碌なの持ってないんだ。ランタンに水筒に寝袋。その他色々野営に必要な物が何も無い。あるのはカバンと干し肉だけ。ある意味男らしい旅とも言える。それでも女性なので最低限揃えたいそうで、僕達に装備の調達を手伝って欲しいと、少し上からな目線でお願いして来た。

「せめて名乗りなさいよ」「僕ユカタ。あなたは?って聞くモノだよ?」

「…セーナよ。貴女の名前を聞かせてくれても良いわよね?」

「……キング」

「王様?クイーンじゃ無いの?」

 苗字だそうだ。




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