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その場で、うんこを

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「暖かい食事が摂れて良かったよ」

「味は?」

「硬いのは時間的な物だからね。味は勿論美味しかったよ」

「ふふん、当然ね」

「所で…」

 声を潜めて口元に手を添える。セーナの耳が近付いて、辺りに気配が無いのを確認して話を進めた。

「真面目な話。寝る振りしてそこの壁から外に出て、進んだ先にある穴でトイレして来て。出来るだけ静かに」

「…あンた、真面目に馬鹿な話してる?」

「大真面目だよ。離れてしないとブフリムが寄って来るから。出来れば横に盛ってある土を少し掛けといて」

「ソレが、あンたの野外での知恵なのね?」

「セーナに会う前の日、僕はソレでブフリム3匹くらいから生き延びた。盛土の傍に葉っぱも刺してあるから」

「…至れり尽くせりじゃないの」

「全部使わないでよね?」

「善処するわ」

 茹で汁を飲み干し、軽く焼いて鍋を乾かしたらセーナを寝かせる。敢えて声は出さない。動きでバレてるから。小山になった草を退け、セーナを寝かせると上から草を掛ける。セーナが壁から抜け出して、草藪の中を這って行くまで掛け続ける。不寝番が座る所にも草を盛る。荷物の三角のすぐ横に積んだ。

「ふぅ。ただいま」

「山が崩れますだ」

「寝返りくらい打たせなさい」

 ガサガサと草を退けて盛り直す。

「もう良いわ。2時間くらいしたら起こして」

「へい」

 不寝番が始まった。セーナを起こすまでの2時間の間、僕は草等を燃やしながら過ごす。生なので煙が目に染みるが、煙を避けながら過ごすおかげで眠気は掻き消える。風はほぼ無風。人の匂いが風に乗らないのは良い事だ。木の枝と草でちっちゃい壁を作って草を乾かしながら束にして、セーナが投げ込む用の燃料を作る。

 時折空を見る。星を見て時を確認するためだ。北の標星かしるべほし ら親指1本離れた所に同じくらいの明るさの星がある。時星ときぼしと呼ばれる星だ。この星は標星の周りを回っていて、最初見た位置の反対側に来た時大体6時間経つと言われている。最初の位置を覚えておいて手を広げ、どこかの指で直角を作ってやれば大体の経過時間が分かると言う訳だ。外だと時を知る術があるから暇潰しにもなるが、ダンジョンで寝泊まりする時は時間が測れなくて大変だろうな。やっぱり腹時計なんだろうか?

 燃料を作り、時を見て、飽きて縄を編んでみたり、燃料を人型にしてみたりで2時間。セーナの小山を崩す。

「う…、意外と大きく聞こえるのね…」

「よく寝られたみたいだね」

「後5分…」

「良いけど僕、ここでうんこするから見ないでくれる?」

「…起きるわ」

 良かったよ。ガサゴソと起き出して来る音に紛れて壁を抜け、草藪の中に紛れて行った。今の所、僕達は運が良い。敵も来ないし雨も無い。しかし夜はまだまだ続くので気は抜けない。

「な、何これ」

 用を足して小山に潜り込むとセーナが人型の燃料を掴み、腕を摘んで構っていた。

「燃料だよ」

「呪物かと思ったわよ。さ、しっかり休みなさい」

 目を瞑り、神経を研ぎ澄ます。パチパチと焼けて爆ぜ、壁の外で揺れる草の音を聞く。モシャモシャしてるのはセーナが草を弄ってる音だろうか…。それ以外の音は危険と判断し、息を潜めた。

ガサガサ、ガサガサ。

「敵かな?」

「お姉さんの夜這いかも知れないわよ?」

「トイレ行く?」

「お腹が空いたわ」

 どうやら交代の時間のようだ。草の中から這い出すと、カバンから干し果物を取り出して2人で少し食べる。セーナに言われて仕方無く買った乾物だけど、買って正解。ちゃんと仕事してるじゃないか。干し肉も少しだけ切って食べた。

 セーナと場所を交代し、焚き火に燃料を足しながら干し草を作っていると、少ししてお客が現れた。サワサワと這いずるような動きで壁の周りを回ろうとしている。このままだとセーナの寝てる壁の穴から侵入してしまうので、先回りして壁に穴を開けた。




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