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ブフリムは、殺せる
しおりを挟む「お前誰だ!」「みなれないヤツめっ」「みんなやめなよー」
孤児院が併設された教会の、養老院の玄関前で、3段ある階段を椅子替わりにして佇んでいると悪ガキと太鼓持ちの群れが現れた。村にあるなら町にもあって、当然孤児院にもある。子供独自のコミュニティ。僕も村では所属していて、日々切磋琢磨していたものだ。
「ここは俺達の場所だ!」「かえれかえれーっ」
「用事が済んだら出て行くよ。それまで待ってろ」
ボツりと告げて、再び僕はボーッとする。見た所一番の歳上でも10かそこらだろうし、来年成人を迎えるような男が構ってやっても良い事なんて何も無い。
「けっ。コイツビビってんぜ」「アニキかっけー」「ダーメーだったらーっ」
端っこで必死に止めるちっちゃい子。女の子かな?この子の意見が正しい。この子を抜きにして、群れの数は5。数の上ではこちらが不利だが、相手の実力が分からない以上無闇に突っ掛かって行かないのが正しい判断だ。逆に無能なのは群れのボス。自分では何もせず、取り巻き共に持ち上げられてイキってる。
「何見てんだよ?あ!?」
ブフリムより頭2つ程の背丈の子供が口を開いたと思ったら、自意識過剰な事を言う。イキってた群れのボスだ。僕は逆にじっくりソイツを見る。ヨレた服から覗く肉は村の子供に比べると明らかにヒョロい。食べ物は貰っているのだろうが、運動量が圧倒的に足りてない。
「どうせお前もジジババを捨てに来たんだろ?何とか言えよ三本足」
三本足。ブフリムの別称であり、相手を罵る蔑称だ。要するに、僕の父か母はブフリムと子を成して僕を産んだと言っている訳だ。
「お前、周り見てソレ言えよ」
僕の言葉にボスガキは目を泳がせる。自分の、そして取り巻き達の親はどこだ?つまりはそう言う事だ。
「俺は付き添いで来て、ここで待ってんだ。家族は中で手続きとかしてる最中だ。それにな、俺のお連れさんは家族を捨てに来たんじゃない。遠征に連れて行けないから預かってもらうんだ」
お前等と一緒にするな。と続けようとして飲み込んだ。
「俺だなんて、あンた男らしい事言うようになったじゃないの」
ガチャリとドアが開いてセーナが顔を出す。並んで出て来た職員は困り顔だ。
「人を見て使い分けてるつもりだよ」
「そ。手を出さなかったのは良い事ね。それより…」
セーナが群れの面々を睨み付ける。見るからに魔法使いの出で立ちで、武器まで所持している暴力の権化に、子供達は震えて声も出ない。
「セ、セーナ、さん…」
震える声を絞り出すボスガキは、死を覚悟した表情で右斜め下を見詰めてる。
「彼はうちの従業員なの。あンた達より働いて、あンた達より稼いでる、立派な大人よ?」
「そろそろ行こう。それともまだ用事があるの?」
「……無いわ。行きましょ。それじゃあおばあちゃんの事、よろしくお願いね」
僕の言葉に目を伏せたセーナは、長い息を吐いて僕を押す。僕はセーナに押されるがまま、教会の敷地を後にした。
「手を出さなくて良かったよ。撫でようか?」
「さっさと歩きなさい」
セーナの事だ、流石に子供を切り刻んで内臓をぶち撒く事は無いだろう。だが怒っているのは僕にも分かった。
「そうだね。早く行って、早く戻ろう」
「おばあちゃんを捨てたなんて、言わせないんだから…」
「あの職員も、危機感足りてないよ」
「どう言う事?」
「セーナは怒ってもアイツ等吹き飛ばすくらいでしょ?僕なら殺してたから。よくニヤニヤ出来てたなーって」
僕は鞘に納められたナイフを指で叩く。ベルトに差し込まれ、お尻の上に隠れていたソレは採集用のナイフだが、子供程度なら問題無く命を奪える物だ。
「あンたが怒らなくて良かったわ」
「殺す程の事は言われなかったからね」
「運が良かったのね。神様の御加護があったのかしら」
芽吹いた草が枯れるのも自然の理。人の生き死にも同じ事。きっとターフ様は見てすらないんじゃないかな。
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