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いつまでも、元気で
しおりを挟むいつもの草藪に入り込み、昼食を挟んで日が陰る直前まで働いた。ギルドに行くのは後にして、先にセーナの店へと向かった。
「いらっしゃい。少し待っててね」
店に入ると客が居て、薬草を調合してもらっていた。ハンドルの付いた機械に取り分けた薬草を入れてゴリゴリと回してる。アレで粉にしてるのか。ソレを天秤で量りながら1回分の小分けにして紙に包む。
「10包で5日分、飲み方は分かるわね?」
「ええ。ありがとうね薬師様」
お金を払って出て行く客がドアを閉める。
「やっぱり薬師だったのか」
「ポーションと装飾品の店よ。さ、どんだけ採って来たの?あ、その前に鍵掛けて」
そろそろ店仕舞いか。いや、僕の成果を見せないためだな。閂を掛けてカウンターに向かうと浅カゴが並べられていた。
キセルタケ 304本915g相当 9,15,00,00
計 9,15,00,00U
「1回で8年通える額になったわ…」
「早く稼ごうと思って、調子に乗った…かな」
「まあ、学費以外にも使うでしょうし、無いよりは良いわね。けど出発はもう少し待ってね。まだおばあちゃんの行先が決まってないのよ」
「ホリーさんは、良いの?」
「末永く…って言われたわ。流石に訂正したけど、構わないわよね?」
「冒険者になる前に所帯持ちになったら外に行けないよ。それに僕まだ未成年だよ」
「残念よ。あンたが冒険に疲れた冒険者なら丸め込んで店主にしてやったのに」
「いつまでも元気でいるよ」「そうなさい」
今日からお世話になるって事で、カウンターの奥のドアから中に入る。
「おばあちゃん、ユカタが来たわ」
「はいはい、いらっしゃい。自分の家だと思って、よろしくしてちょうだいね」
挨拶を交し、部屋に案内される。3階の作業部屋が僕の寝室だそうな。
「私が仮眠用に使ってるマットがコレ。おねしょしちゃイヤよ?」
「困ったらそこの瓶に「やめなさいっ!」」
ギルドに持ってく商材を、着替えと一緒にカバンに詰め直して外に出る。銀座にも行くからとセーナも付いて来た。
「あら君…セーナ様っ。君、先に此方の査定をさせてもらって良いかしら」
「私はユカタの付き添いよ。さっさと済ませてくれない?」
「は、はい、ただいまっ」
セーナ様、何者?僕なんて名前呼ばれた事無いのに。カバンの中身を浅カゴに入れて、査定を待つ。
ジャリソウ 1.25kg 30,00
ツルショウガ 20本2束 5,00
キズグスリ 10枚1束 2,00
計 37,00U
「今回は品質が優れていましたので多少色を付けて頂きました。此方でよろしいでしょうか?」
「ご飯3回食べられるよ、やったね」
「良かったわね。さ、行きましょ」
カバンにお金を入れて着替えで挟み、ギルドを出た。夕方で人の多いギルドの中で、パンパンの財布なんて出す訳にはいかない。
それでも目を付けられてしまったのは、人の多い時間に来てしまったからだろう。酒を飲んだ男達に絡まれた。
「なぁ坊主ぅ~、俺達と飲みに行こうぜ~」
「僕まだ飲めないからヤダよ」
「お前ぇが飲まなくてもコッチは飲むんだよっ!ギルドで銭稼いで来たんだろ!?」
「パーッと使おうや?なあ?」
「お、コイツ女だぜ!一緒に朝まで楽しませてやんよ。ヒヒッ」
「ウザ。あンた、死ぬ覚悟はある?」
「はぁ!?お前ぇ女だからって「お前じゃない。ユカタ」」
「え、僕?死にたくは無いけどボコボコにされてお金取られるのも嫌だよ」
「そ、なら這いつくばってなさい。風よ、土よ、切り裂き踊れ、テュエッラ・アネモイオ!」
「ゲヒッ!」「こんな町に複ごウギャアアッ!」「痛でえっ!痛でえよおおおっ!」「ゴブッ、ゴポッ…」
セーナを中心に、酔っ払い達が転がった。腹這いになっていた僕の傍に血を流す男のハラワタが噴き出し、僕は必死に目を瞑り、吐き気を堪える。
「立ちなさい。冒険者になると、こう言う事もあるモノよ」
「うぷ」
視線を下げず、何とか立ち上がった。
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