上 下
11 / 194

いつまでも、元気で

しおりを挟む


 いつもの草藪に入り込み、昼食を挟んで日が陰る直前まで働いた。ギルドに行くのは後にして、先にセーナの店へと向かった。

「いらっしゃい。少し待っててね」

 店に入ると客が居て、薬草を調合してもらっていた。ハンドルの付いた機械に取り分けた薬草を入れてゴリゴリと回してる。アレで粉にしてるのか。ソレを天秤で量りながら1回分の小分けにして紙に包む。

「10包で5日分、飲み方は分かるわね?」

「ええ。ありがとうね薬師様」

 お金を払って出て行く客がドアを閉める。

「やっぱり薬師だったのか」

「ポーションと装飾品の店よ。さ、どんだけ採って来たの?あ、その前に鍵掛けて」

 そろそろ店仕舞いか。いや、僕の成果を見せないためだな。閂を掛けてカウンターに向かうと浅カゴが並べられていた。

キセルタケ 304本915g相当 9,15,00,00
計 9,15,00,00U

「1回で8年通える額になったわ…」

「早く稼ごうと思って、調子に乗った…かな」

「まあ、学費以外にも使うでしょうし、無いよりは良いわね。けど出発はもう少し待ってね。まだおばあちゃんの行先が決まってないのよ」

「ホリーさんは、良いの?」

「末永く…って言われたわ。流石に訂正したけど、構わないわよね?」

「冒険者になる前に所帯持ちになったら外に行けないよ。それに僕まだ未成年だよ」

「残念よ。あンたが冒険に疲れた冒険者なら丸め込んで店主にしてやったのに」

「いつまでも元気でいるよ」「そうなさい」

 今日からお世話になるって事で、カウンターの奥のドアから中に入る。

「おばあちゃん、ユカタが来たわ」

「はいはい、いらっしゃい。自分の家だと思って、よろしくしてちょうだいね」

 挨拶を交し、部屋に案内される。3階の作業部屋が僕の寝室だそうな。

「私が仮眠用に使ってるマットがコレ。おねしょしちゃイヤよ?」

「困ったらそこの瓶に「やめなさいっ!」」

 ギルドに持ってく商材を、着替えと一緒にカバンに詰め直して外に出る。銀座にも行くからとセーナも付いて来た。

「あら君…セーナ様っ。君、先に此方の査定をさせてもらって良いかしら」

「私はユカタの付き添いよ。さっさと済ませてくれない?」

「は、はい、ただいまっ」

 セーナ様、何者?僕なんて名前呼ばれた事無いのに。カバンの中身を浅カゴに入れて、査定を待つ。

ジャリソウ 1.25kg 30,00
ツルショウガ 20本2束 5,00
キズグスリ 10枚1束 2,00
計 37,00U

「今回は品質が優れていましたので多少色を付けて頂きました。此方でよろしいでしょうか?」

「ご飯3回食べられるよ、やったね」

「良かったわね。さ、行きましょ」

 カバンにお金を入れて着替えで挟み、ギルドを出た。夕方で人の多いギルドの中で、パンパンの財布なんて出す訳にはいかない。

 それでも目を付けられてしまったのは、人の多い時間に来てしまったからだろう。酒を飲んだ男達に絡まれた。

「なぁ坊主ぅ~、俺達と飲みに行こうぜ~」

「僕まだ飲めないからヤダよ」

「お前ぇが飲まなくてもコッチは飲むんだよっ!ギルドで銭稼いで来たんだろ!?」

「パーッと使おうや?なあ?」

「お、コイツ女だぜ!一緒に朝まで楽しませてやんよ。ヒヒッ」

「ウザ。あンた、死ぬ覚悟はある?」

「はぁ!?お前ぇ女だからって「お前じゃない。ユカタ」」

「え、僕?死にたくは無いけどボコボコにされてお金取られるのも嫌だよ」

「そ、なら這いつくばってなさい。風よ、土よ、切り裂き踊れ、テュエッラ・アネモイオ!」

「ゲヒッ!」「こんな町に複ごウギャアアッ!」「痛でえっ!痛でえよおおおっ!」「ゴブッ、ゴポッ…」

 セーナを中心に、酔っ払い達が転がった。腹這いになっていた僕の傍に血を流す男のハラワタが噴き出し、僕は必死に目を瞑り、吐き気を堪える。

「立ちなさい。冒険者になると、こう言う事もあるモノよ」

「うぷ」

 視線を下げず、何とか立ち上がった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!

蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。 家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。 何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。 やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。 そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。 やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる! 俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...