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国立と、私立

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 学園の願書が届くまで、しっかりお金を稼ごうとした僕は出鼻をくじかれる。町の役所に行けば色んな学舎の案内書や願書があると言うのだ。そりゃあその都度遠くから取り寄せてたら時間の無駄だろうしな。

「今受け付けてるのはこれだけね」

「…8、9、10……12もあるよ?」

 セーナに引っ張られて初めての役所。陳列棚に納められた学舎の名前を見て、彼女は僕に向けた物を2冊取り上げた。他もの気になるが、全部読んでたら夜になるな。

 待合椅子に座って案内書を広げる。ペリエ王国国立魔物抗闘専門学校に、学園法人エノン学園、私立スミヨン冒険者学園アッゼニ。長い名前にクラっとする。

「このペリエとかエノンって何?」

「ペリエは国王様のお名前よ。ペリエ王国が作らせた、魔物と戦う術を学ぶ学校ね。エノンはエノン侯爵の事よ。エノン侯爵が自費を叩いて作った、スミヨン市、スミヨン辺境伯の領都にある冒険者を養成する学園のアッゼニ市にある分校って事ね」

「長いっ」

「名前だけで挫けないでよ。国立魔物抗専にスミ学アッゼニ。コレで少しは立ち直れるかしら?」

「お、おう…。で、どっちが良いのかしら?」

「自分で読みなさいっ」

 読んだよ。…まず、国立魔物抗専は名前の通り、魔物との戦闘に特化した教育課程で、魔物の生け捕り、育養、討伐、解体、廃棄を全て生徒の手で行い、調理過程で使う魔物も生徒達が討伐した物を使う、一部寮制の学校…だそうな。

 期間は2年間で、寮生の費用は全部で金貨2枚の一括払い。死んでも返還無し。

「通学の方が安いけど…」

「家賃と食費は親が持ってるからよ」

 成程。…次、スミ学アッゼニは名前の通り、冒険者を養成するための幅広い教育課程で、野外とダンジョンでの活動に重点を置き、戦闘、解錠、罠対策、野営、解体を講師の指導の元行う、全寮制の学園…だそうな。

 期間は1年で、卒業後は上級課程で追加の1年の在籍が認められ、講師の補助をして給与も得られる。費用は初年度金貨2枚の一括払い。死んでも返還無し。上級課程は無料!

「上級課程はタダなんだね」

「1年で辞めるなら国立の4倍以上高いのだけどね」

 2倍じゃないのか?とにかく金貨2枚、2,00万ウーラ。全財産を後3回貯めなきゃ行けない。



「すっかり定宿ね」

 帰りに銀座でお金を振込み、銅貨用の財布を買って宿に戻って来た。干し上がった服を急いで取り込む僕をセーナが弄る。銅貨用の財布は早速役に立ったよ。

「服畳みながらでも聞きなさい。隣に誰が居るか分からないから小声で話すわよ?」

「うん…」

 ベッドに座り話し始めるセーナ。僕は床に座ってベッドで服を畳む。

「入学金を稼ぐとなると、ギルドに目を付けられるわ。主に構成員にね」

「うん」

「だからギルドに卸すのはツルショウガまでにして、キセルタケは全部うちで買い取るわ」

「それは嬉しいけど、そんなにすぐ捌けるの?」

「売る伝手はあるのよ。直接行かなきゃならないけどね」

「それだと、ホリーさんが…」

「そ。それだけがネックなのよ、行き帰りの時間も掛かるしね。だからおばあちゃんは養老院にその間だけ預かってもらうわ。だからあンたはおばあちゃんの養老院代も稼ぎなさい」

「お、お幾ら万ウーラ…」

「20万で良いわ」

「ま、まあ、それなら」

「それと、明日からは住み込みで働いてもらうわ」

「それは、大丈夫なの?僕も男なんだけど…」

「下でおばあちゃんが寝てるのにギシギシアンアン出来る?まあ寝室は別にするけど」

「分かったよ…。曾孫見せろとか言わせないでよ?」

「そんなの月一で言われてるわ。冗談だと思って受け流しなさい」

 ホリーさん、冗談で言ってないでしょソレは。とにかく話は決まってしまった。明日は仕事をして、セーナの店で住み込みする事になった。腹を括るしか無い。

 翌日は朝食を食べて昼食を買い、宿を引き払う。昨日畳んだ服を着て、古着の方は昼食と共にカバンに詰めた。背嚢が欲しいな。






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