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ケリタケは、蹴る物
しおりを挟む差し出されたカゴにキセルタケとジャリソウを盛って行く。
「全部ギルドに出せば良いじゃない」
「さっきも言ったけど、まだギルドに入ってないんだ。で、ギルドで売り過ぎると目ぇ付けられて、ボコボコにされて金奪われるって聞いてさ」
「怖い世界ね」
「だからあまりお金持ちたくないんだよね」
「ふうん…。なら物々交換にしない?」
「良いけど、カバンある?」「無いわよ!」
「じゃあ鎧」
「ここは魔道具店。ポーションと装身具のお店なの。分かる?」
「ポーション使う程戦う気はまだ無いかな」
「持っておきなさいよ。冒険者になるってんなら外で…、コレ外に生えてたの!?」
「そりゃあ町中には生えてないよ。植えたら生えるかもだけど」
「薬効が落ちるからダメよ。…ねえあンた。お金を持ちたくないのよね?」
「まあ、生活費と予備くらいにしときたいね」
「ならウチで買い取るわ。で、お金の代わりにあンたの欲しい物を私が買ってあげるの」
「僕はともかく、君は面倒じゃないか?」
「足代を足で払えるなら安い物よ」
そう言う事ならお願いしよう。僕からは肩掛けカバンを2つと小型ナイフ。店主からはジャリソウ、キセルタケ、ツルショウガ、クモノスワタの他に、この辺りでは生えてない薬草がピックアップされた。
「クモノスワタはまだ見てないけど多分生えてると思う。イカノアシは湿地に生えるからこの辺りには無いかな。後、ケリタケは森の中だから僕はまだ入れないや」
「見た事はあるのね?」
「オック村から持って来てるヤツでしょそれ。ケリタケはよく蹴ってたよ」
「なんて勿体無い事を…まあ良いわ。採れる物だけで良いから」
欲しい物リストをもらい、カバンにしまう。
「私、セーナ。あンたは?」
「僕東のユカタ」
「ヒガシノユカタ?」
「あ、同じ名前の子が居たからついクセで。ユカタだよ」
「西のユカタも居るのね」
話をしながらジャリソウを量り、1.8kgが18銅貨に、キセルタケが15本、52gで52銀貨となった。
「買い叩かないの?」
「ん?これでも半額よ?」
「ギルドだとそれの半額なんだけど」
「そう言うのを買い叩くって言うのよ」
「ギルドに売るのが嫌になるね」
「その分ギルドカードが便利なのでしょ?」
「手数料に相互付与かぁ」
「ギルドだってお給料払うのだから、仕方ないわよね」
「ボコボコにされるよりはマシか。所でだけど、52銀貨なんて大金持って買い物行ける?」
「なかなか行けないわね。けど私はコレがあるから」
ギルドカード?冒険者だったのか?
「コレは商業ギルドの会員証よ。年会費が掛かるし査定が厳しいけど買い叩かれる事は無いわね」
「売り買いが多いから、なのかな?」
その通りだそうだ。僕もそっちが欲しいけど、店舗持ちじゃないとダメなのだと。店舗の無い露店が気になってどうなのかと聞くと、銀座と言う預かり所があって、ほとんどの住民はそこにお金を預けてるんだって。銀座カードではお買い物出来ないそうだ。
「ユカタ、あンたカードを入れる財布も無さそうね」
「身分証はカバンにしまってるけど、あった方が良い?」
「身分証って紙なんだからクチャクチャになるわよ?」
「もうなってる」
「買いなさい。つか今から買いに行くわよ」
買う事に決まった。そして今から買いに行くと言う。
「店は良いの?」
「何時までもあンたのお金を持ってたくないの。銀座カードも作るわよ?」
「親切な人に会えて僕は幸せ者だよ」
「お節介焼きって、よく言われてたわ」
店を追い出され、しばらく待っていると裏口からセーナが出て来た。ツバの広いエナンを被り、杖を持って魔法使いみたいな格好だ。
「魔法使いみたいだ」
「魔法使いなのよ?」
「生まれて2回目だよ」
「あら、1回目は誰よ」
「村に来た薬師で、ホリーって言うおばあちゃん」
「それ私のおばあちゃん」
「奇遇だね」
近隣の村を回ってたんだって。
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