end of the World

金木犀

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episode1 再開

王太子ラウラード

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思わず悲鳴を上げたせいで騎士と犬は私の方へ振り向いた。

気づかれた!私も、殺られる。

「ᚨ, ᚡᛖᛚᚲᛁᚱᚨ ᚾᛟᛉ.!!!」
「来ないで!」
「ᚨ, ᚡᛖᛚᚲᛁ ᚾᛟᛉ?!」
「嫌!!」

剣を鞘にしまい、私に近づく騎士と、急に大人しくなった犬を押しのけて通路に飛び出した。

「リコ!!!!」

騎士は私を呼んだけれど、私は目も合わせずに通路を駆け抜けた。

そこら中から腐敗臭が漂い、通路一帯に死体が転がっている。

騎士《アイツ》の仕業なの!?

誰か…誰か助けて!!

必死の思いで城外にでる鉄格子の門を開けると、すぐ目の前に女性が立っているのが目に入った。

「良かった!助けてください!」

大声でそう叫んだ。
けれど反応がない。

「助けて!中に人殺しがいるの!ねえ!」

さらに大きな声で助けを求めても、
ゆらゆらと上下に頭を揺らし、ヨタヨタと歩くだけだ。

様子がおかしい。

「あの…大丈夫…?」

近づいて女性の肩を触ろうとすれば、急に機敏に頭を上げ、ものすごい力で私の頭を掴んだ。
その一瞬に見えた女性の顔は、眼球が飛び出し、皮膚が剥がれている!

「きゃあ!!!」

襲われる!そう思って目を閉じると、私を掴んだ死屍女の力が緩み、足下に崩れた。

「リコ!!!」

先程の騎士が、死屍女の頭に剣を突き立てて薙ぎ払ったようだ。

騎士は味方で、私を助けに来た。
ようやくそう理解した私は、震えの止まらない手で彼の腕を掴み、涙をこぼした。

「こ…怖…かった…助けて…くれたの?」

騎士は瞳を潤ませ、私を抱きしめた。

「良かった!リコ!!遅くなってすまなかった!!」


急に彼の言葉が理解できる様になると同時に、頭の中にリコの記憶が傾れ込んできた。

私はリコ=ベルタザール=リネリア。リネリア帝国の皇妃。
そして彼は隣国の王太子ラウラード殿下。私がリネリアの皇妃になる前、結婚の約束をした男だ。

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