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七の段 死闘 ふたり(三)
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目が合って、しばらくして、ふっと笑いあう。
「……あやめ、なんでこんなことになってしまった?」
「十四郎さまも、……お悪いのです。さが悪(意地悪)をいわれた。むごい、むごい、いわれよう。」
「うむ、おれは、むごかった。だが、訊かずにはおられなかった。」
「はい。当然に存じまする。……でも、答えられませぬ。……申し訳ございませぬ。わたくしにも、よくわからないのでございます。」
「ああ、左様だろう。」
十四郎はひどくあっさりと頷いた。いうまい、と抑えつけていたのを激するままに口に出してしまい、それで心のうちが少し晴れたのであろうか、と自分で考える。
(たしかに、わかるまい。)
(ひとの気持ちは不思議。宿縁は不可知。それでよいではないか?)
(一番つらいのは、たれだ? おれか? 違う、あやめだ。)
(あやめは、ずっとひとりで悩んで、苦しんできたはずだ。)
(あやめを喪いたくない。追い詰めて、何になる?)
あやめも、緊張を包み隠せるほどにはなっている。いま、十四郎がふと牙をみせたとき、衝撃を覚えたのは、十四郎は許してくれなかった、これで十四郎との仲が終わってしまうのではないかということだけだった。
そうであれば、たとえ新三郎が健在だったとしても、あやめは生きていけないと気づいた。自害などせずとも、別れを告げられた瞬間に、心臓が止まるだろうと思った。
「十四郎さまのこれほどのさが悪は、はじめて。……いえ、大きなさが悪は、もう何度も。堺に来られるというご約定を破り、死なぬというご約定も口ばかりで危ない戦をされ、すぐにお会いできるはずのご約定も破って山丹でございましょう?……そのたびに、わたくしはお許ししてきましたのに、」あやめは無理に笑ってみせた。「あなた様はわたくしの過ちをお許しでない。むごい。憎い真似をされる。」
「それを持ち出されるのか。」
「ずっと持ち出します。ことあるごとに、申しあげます。そう、前から決めておりました。」
いいながらあやめは、ひそかに固唾をのむ思いだ。
(わたくしは、あなたが好きなのじゃ。あなたと一緒にいたい。お許しにならなくても、あなたからもう離れたくない。)
「……それは困った。ずっと、いい続けられるのか。ことあるごとに? どんな些細なことでも、おれの大罪を持ち出されるのは、つらいの。」
(ずっと、といわれた? 困った、と?)
「大罪などとは。……でも、そうでございますね。いっそ、……」あやめは肩で息をついだ。「いっそ、ふたり、それぞれの大罪を抱えて、共に参りましょうか?」
「……」
(お願い……十四郎さま!)
十四郎の沈黙は、長く感じられた。
(お迷いなのか?)
(ぬけぬけと厚かましい女じゃ、と思われたか?)
(……違いない。こうなっては、十四郎さまにとって、わたくしという女はご不快なだけじゃろう?)
(捨ててしまえばよい女。納屋の船も倉も鉄砲も、いまや惜しくもない。)
(ああ、お別れだ。今度こそ、心まで、別れ……)
あやめは絶望に躰が冷えた。
だが、勘違いをしている。十四郎は、感動に言葉を喪っていたのだ。
「ふたり、……といってくれたな?」
「……?」
「……そうしたい。あやめが、それでいいというのなら……。」
「あ……。」
(いま、よいといってくださった?)
十四郎は、あやめに触れたくて仕方がない。肩を抱き寄せたい。
(ふたり、ふたりだ……。おれは、この女とどこまでも一緒にいたい。それ以外に何を望む?)
「納屋今井の、御寮人、あやめ殿。」
「はい。」
「二度目のお願いになる。先の約定は、たしかに拙者が破った。すまなかった。何度詫びても足りぬ。」
「……もう、それはよいのです。二度目? 二度目とおっしゃいました?」
「ああ。今から、改めて、お願いする。蠣崎十四郎の室に入ってくださらぬか。いまはまだ、明日のこともわからぬ。だが、今度こそ、そなたと共にありつづけたい。」
十四郎は、あやめに近づいて、片手を差し伸べた。抱き締めたかったが、そうなれば互いの家来の注視する前で、またどこまで自分が進んでしまうかわからないから、抑えた。
(よろしいのですか? こんなわたくしでも?)
あやめの目が訊ねた。
十四郎は無言で頷く。
「この手を受けてくれ、あやめ殿。そうしてくれれば、おれは、もう、なにも悲しくない。」
「う……」
声にならない呻きを発し、何かいおうとするあやめを、十四郎は制した。
「だから、そなたに苦しんでほしくない。……頼む。」
あやめは震えながら、その手を受ける。両手で握りしめた。
「……はい。うれしうございます。このときを、夢にみておりました。」
「いろいろなことは、ふたりで暮らしながら、考えてよいのではないか。」
「……」
頷いたあやめの目から、大きな涙がこぼれた。
「いや、もうおれは、余計なさが悪口は二度と叩かぬから。そのことではなく、……」
あやめは泣きながら笑った。十四郎がへどもどする様が、懐かしい。
「勇猛なる蝦夷ご宰領さまといっても、昔と変わらぬ十四郎さまでございました。うれしうて、有り難うて、涙がとまりませぬ。」
「あやめ殿。よろしいのか。」
「申しました。ありがとうございます。このような無作法者の商人女ではございますが、きっと修練いたしまして、蠣崎十四郎さまとお家の役に立つ妻になりまする。」
「あやめ。礼をいう。うれしい。……あ、服喪の宵だというのに、おれは、また、喜んでしもうて……」
「わたくしも、これほどうれしくていいのか、申し訳ない気持ちでございます。ただ、あとあと、冥府に参ったときにお叱りを受けるかもしれませぬが、お方さまが導いてくださったようにも思えてなりませぬ。」
「ともに、叱られよう。しかしあやめ、それはあとあとも、あと、ずっと先のことだぞ。おわかりか?」
「はい。もう、すぐに罪を償おうとは考えませぬ。」
「死んで償えるものではない、とおれは思う。おれ自身のこと。」
「はい。」
「ただ、武蔵丸まで連れて行かせてしまったのも、痛恨であった。あの子は、昔のおれによく似ていた。顔はともかく、病気がちのところが……」
「それで、わたくしは仲良くしていただけたのでしょうね。」
あやめの頬に、新しい涙が落ちる。哀悼の念とともに罪の意識がまた立ち上るが、これは十四郎さまと一生涯共にするのだ、と思って、痛みをねじ伏せた。
「そうか。ならば、おれたちの子に、きっと生まれ変わって」
そのとき、十四郎に声がかかった。小姓が数人、走り寄ってくる。十四郎とあやめは、先ほどの続きか、とやや赤面した。さすがにひとの目の前であれば、手を放す。
「大過ない、というたぞ。」
「いえ、軍使の到着にございまする!」
「あやめ!」
十四郎は立ち上がり、書院へ行こう、とうながした。あやめはすでに予感に震え、膝から下が無くなってしまったような気分だ。
(ご決断があった! きっと、よい知らせだ!)
(お方さまのお導き? 武蔵丸さまのおかげ?)
「……あやめ、なんでこんなことになってしまった?」
「十四郎さまも、……お悪いのです。さが悪(意地悪)をいわれた。むごい、むごい、いわれよう。」
「うむ、おれは、むごかった。だが、訊かずにはおられなかった。」
「はい。当然に存じまする。……でも、答えられませぬ。……申し訳ございませぬ。わたくしにも、よくわからないのでございます。」
「ああ、左様だろう。」
十四郎はひどくあっさりと頷いた。いうまい、と抑えつけていたのを激するままに口に出してしまい、それで心のうちが少し晴れたのであろうか、と自分で考える。
(たしかに、わかるまい。)
(ひとの気持ちは不思議。宿縁は不可知。それでよいではないか?)
(一番つらいのは、たれだ? おれか? 違う、あやめだ。)
(あやめは、ずっとひとりで悩んで、苦しんできたはずだ。)
(あやめを喪いたくない。追い詰めて、何になる?)
あやめも、緊張を包み隠せるほどにはなっている。いま、十四郎がふと牙をみせたとき、衝撃を覚えたのは、十四郎は許してくれなかった、これで十四郎との仲が終わってしまうのではないかということだけだった。
そうであれば、たとえ新三郎が健在だったとしても、あやめは生きていけないと気づいた。自害などせずとも、別れを告げられた瞬間に、心臓が止まるだろうと思った。
「十四郎さまのこれほどのさが悪は、はじめて。……いえ、大きなさが悪は、もう何度も。堺に来られるというご約定を破り、死なぬというご約定も口ばかりで危ない戦をされ、すぐにお会いできるはずのご約定も破って山丹でございましょう?……そのたびに、わたくしはお許ししてきましたのに、」あやめは無理に笑ってみせた。「あなた様はわたくしの過ちをお許しでない。むごい。憎い真似をされる。」
「それを持ち出されるのか。」
「ずっと持ち出します。ことあるごとに、申しあげます。そう、前から決めておりました。」
いいながらあやめは、ひそかに固唾をのむ思いだ。
(わたくしは、あなたが好きなのじゃ。あなたと一緒にいたい。お許しにならなくても、あなたからもう離れたくない。)
「……それは困った。ずっと、いい続けられるのか。ことあるごとに? どんな些細なことでも、おれの大罪を持ち出されるのは、つらいの。」
(ずっと、といわれた? 困った、と?)
「大罪などとは。……でも、そうでございますね。いっそ、……」あやめは肩で息をついだ。「いっそ、ふたり、それぞれの大罪を抱えて、共に参りましょうか?」
「……」
(お願い……十四郎さま!)
十四郎の沈黙は、長く感じられた。
(お迷いなのか?)
(ぬけぬけと厚かましい女じゃ、と思われたか?)
(……違いない。こうなっては、十四郎さまにとって、わたくしという女はご不快なだけじゃろう?)
(捨ててしまえばよい女。納屋の船も倉も鉄砲も、いまや惜しくもない。)
(ああ、お別れだ。今度こそ、心まで、別れ……)
あやめは絶望に躰が冷えた。
だが、勘違いをしている。十四郎は、感動に言葉を喪っていたのだ。
「ふたり、……といってくれたな?」
「……?」
「……そうしたい。あやめが、それでいいというのなら……。」
「あ……。」
(いま、よいといってくださった?)
十四郎は、あやめに触れたくて仕方がない。肩を抱き寄せたい。
(ふたり、ふたりだ……。おれは、この女とどこまでも一緒にいたい。それ以外に何を望む?)
「納屋今井の、御寮人、あやめ殿。」
「はい。」
「二度目のお願いになる。先の約定は、たしかに拙者が破った。すまなかった。何度詫びても足りぬ。」
「……もう、それはよいのです。二度目? 二度目とおっしゃいました?」
「ああ。今から、改めて、お願いする。蠣崎十四郎の室に入ってくださらぬか。いまはまだ、明日のこともわからぬ。だが、今度こそ、そなたと共にありつづけたい。」
十四郎は、あやめに近づいて、片手を差し伸べた。抱き締めたかったが、そうなれば互いの家来の注視する前で、またどこまで自分が進んでしまうかわからないから、抑えた。
(よろしいのですか? こんなわたくしでも?)
あやめの目が訊ねた。
十四郎は無言で頷く。
「この手を受けてくれ、あやめ殿。そうしてくれれば、おれは、もう、なにも悲しくない。」
「う……」
声にならない呻きを発し、何かいおうとするあやめを、十四郎は制した。
「だから、そなたに苦しんでほしくない。……頼む。」
あやめは震えながら、その手を受ける。両手で握りしめた。
「……はい。うれしうございます。このときを、夢にみておりました。」
「いろいろなことは、ふたりで暮らしながら、考えてよいのではないか。」
「……」
頷いたあやめの目から、大きな涙がこぼれた。
「いや、もうおれは、余計なさが悪口は二度と叩かぬから。そのことではなく、……」
あやめは泣きながら笑った。十四郎がへどもどする様が、懐かしい。
「勇猛なる蝦夷ご宰領さまといっても、昔と変わらぬ十四郎さまでございました。うれしうて、有り難うて、涙がとまりませぬ。」
「あやめ殿。よろしいのか。」
「申しました。ありがとうございます。このような無作法者の商人女ではございますが、きっと修練いたしまして、蠣崎十四郎さまとお家の役に立つ妻になりまする。」
「あやめ。礼をいう。うれしい。……あ、服喪の宵だというのに、おれは、また、喜んでしもうて……」
「わたくしも、これほどうれしくていいのか、申し訳ない気持ちでございます。ただ、あとあと、冥府に参ったときにお叱りを受けるかもしれませぬが、お方さまが導いてくださったようにも思えてなりませぬ。」
「ともに、叱られよう。しかしあやめ、それはあとあとも、あと、ずっと先のことだぞ。おわかりか?」
「はい。もう、すぐに罪を償おうとは考えませぬ。」
「死んで償えるものではない、とおれは思う。おれ自身のこと。」
「はい。」
「ただ、武蔵丸まで連れて行かせてしまったのも、痛恨であった。あの子は、昔のおれによく似ていた。顔はともかく、病気がちのところが……」
「それで、わたくしは仲良くしていただけたのでしょうね。」
あやめの頬に、新しい涙が落ちる。哀悼の念とともに罪の意識がまた立ち上るが、これは十四郎さまと一生涯共にするのだ、と思って、痛みをねじ伏せた。
「そうか。ならば、おれたちの子に、きっと生まれ変わって」
そのとき、十四郎に声がかかった。小姓が数人、走り寄ってくる。十四郎とあやめは、先ほどの続きか、とやや赤面した。さすがにひとの目の前であれば、手を放す。
「大過ない、というたぞ。」
「いえ、軍使の到着にございまする!」
「あやめ!」
十四郎は立ち上がり、書院へ行こう、とうながした。あやめはすでに予感に震え、膝から下が無くなってしまったような気分だ。
(ご決断があった! きっと、よい知らせだ!)
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