上 下
3 / 4

羞恥の朝ご飯

しおりを挟む
「っと……お嬢様着きましたよ~」


 食堂に着いたらしく一際大きな扉の前に降ろされた。私が必死に歩いても見つけられなかったところをレオさんならすぐ着いてしまうとはなんとも複雑である。


「レオさん、運んでくださりありがとうございました」


 笑顔でお礼を言う………そう、今世の私は礼儀正しい淑女に成り切ろうとしているのだ。
 貴族のご令嬢らしいし、折角ならば淑やかなお嬢様になってお嬢様ライフをエンジョイしたい!!

 そんなことを考えながら中へ入ろうと扉を押す………が開かない。
 力が無いから?いやだとしても扉開けられないレベルの非力はあり得ないでしょ!
 もっと全力でやるが……無理だ。うんともすんとも言わない。いや扉がすんって言ったらそれはそれで怖いな、


「お嬢様、俺が開けますよ。朝ぶっ倒れたんだから無理したらめっです」


 そう言いながらレオさんが扉を押す……も開かない。


「レオさん?」

「嘘だろ?ここの扉こんな硬かったか~?伯爵様がなんかやらかしたんですかね?」


 レオさんが扉に体当たりする。めっちゃ扉バキバキ言ってるけど大丈夫なんですか?これ。扉開く前に壊れそうですけど!


「……レオ?何やってるんです?」


 後ろから声が聞こえ振り向くとリルさんがレオに対して氷点下に達しそうなほど冷たい視線を送っていた。
 なんか若干空気が冷たくなってきた気がするんだけど……


「あー!リル!いや扉開かなくてさ~、伯爵様がなんか弄ったんで「内開きですよ」…え……?」


 リルさんがとてつもなく冷たい声色で続ける。


「そこの扉は内開きです」


 リルさんがカツカツと音を立てて扉の前まで来ると扉の取手を内側に引く………
 すると中には明らかに戦闘態勢に入っている父様と使用人の方達の姿があった。


「「「「「は?」」」」」


 私たちの姿を見た瞬間父様と使用人の方達の木の抜けた声が広い食堂に響いた。





 ◇◆◇





「な~んだ、レオ君が''また''莫迦をやっただけだったのか」

「はい、本当に申し訳御座いません」


 どうやら父様達はさっきのレオによる体当たりを奇襲と勘違いしてしまっていたらしい。
 そしてなんか''また''が強調されていた気がするけどレオさん実は前にも何かやらかしていたのだろうか?
 疑問だけど奇襲がくる家とは一体どういうことですか?!物騒過ぎません?!


「うん、レオ君これで何度目かな?」

「え~と、1、2、3……分かりません!」


 諦めるの早くない?!数え切れないほどやらかしてるのに開き直り過ぎじゃ?!
 あ、リルさんに足蹴りされてる。そして父様めっちゃ笑顔………


「もういいよ、そんな事よりティア、迷子になったって聞いたけど大丈夫だった?」

「はい、レオさんに助けて頂きました!」

「そっか、レオ君、本来なら修繕費を払ってもらうところだけど、仕方ないし今回は許すよ」

「よっしゃ!ありがとうございます!」


 父様もしかして娘にだけ激甘では?あとレオさん、やっぱりさっき扉壊してたんだね。


「あの、父様、このお邸なんでこんなに広くて迷路のようなのでしょうか?」

「ああ、広いのも迷路のようなのも刺客とか奇襲とかの対策だよ。迷っている間に捕まえられるだろう?」


 なるほど納得~だけど住んでいる人も迷うレベルですよ。使用人さんとかとんでもなく大変だろうな、


「因みに貴族邸三大魔邸の一つに選ばれたし、新入りの使用人は必ず迷子になって捜索される」


 そんなとんでもないお邸で生活してるの凄いな。覚えた使用人さん達も……あ、使用人さん達遠い目をしてる。みんな通る道なんだね……


「ほら立ち話もそこそこにして座って。歩き回ったみたいだしお腹空いただろう?」


 父様が隣の椅子をぽんぽんと叩く。大人しく座ると次々と料理が運ばれてくる。


「今日はスクランブルエッグにベーコンと、サラダにカボチャのポタージュ、パンだって。苺のジャムとバターもあるよ」


 どの料理もキラキラと輝いていてとても美味しそうだ。前世の朝ご飯は片手で仕事をしながらのカロリーメイトか10秒チャージだったからなんだか感動してしまう。


「はい、ティア~、あ~ん」

「えっ……!」


『あ~ん』?本当に私甘やかされ過ぎじゃ?そして恥ずかしいからやめて欲しい!!さっきは足の命と引き換えに屈したけど流石に今度は屈しな………


「あっ、ごめんね、いつもの癖で今日は一人で食べれるから大丈夫か」


 父様は寂しげにスプーンを引っ込める。……少し寂しげに言うなんて卑怯ですよね!イケメンの凹み顔に勝てるわけないでしょう!


「と、父様!あーんして欲しいです!」


 やばい周りに使用人さんもいるし凄く恥ずかしい。いやでも見るからに父様の顔が明るくなった!
 でも明るくなり過ぎて眩しいです!イケメンめ!


「本当かい!じゃあほらあーん」

「あーん………」


 うんめちゃくちゃ美味しい。ついでに言えばあーんじゃなければもっと味を満喫できる。
 だけど父様の笑顔の為!頑張れ私!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

処理中です...