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4.一騎打ち

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 再びブケファラスに跨り、大きく開いた城壁門をくぐるとそこには王都の守備兵が集結しておった。
 そしてその先陣指揮をとるのはかつての戦友だ。

「ちっ、ワシが到着する前に門が落ちるとはのう。守備兵の訓練をより実戦を想定したものに変更せんといかんな?ロベルトよ」

「先王陛下……」

 60を過ぎてなお衰えぬ屈強な肉体と更に鋭くなった眼光、そして覇気。
 間違いなく隠居した先王であった。

「ロベルト、貴様とてむやみに人命を奪いたいわけではあるまい?欲しいのはワシの馬鹿息子と馬鹿孫、そしてワシの首じゃろう?」

「老いて萎びたかつての盟主の首などいりませんよ」

「酷い言いぐさじゃ。貴様とて老いてシオシオのくせをしおって。ロベルト、一騎打ちじゃ。受けよ」

「望むところです」

 ワシの中のモヤモヤとしてドロッとした暗い気持ちが晴れていくのがわかった。
 やはりこのお方には敵わぬな。
 この熱き胸の高鳴りは報復などというつまらぬ理由から始めた戦では絶対に生まれぬもの。
 ワシの気持ちの昂ぶりを感じ取ったブケファラスの鼻息も荒くなり、ぶるるるっと先王の愛馬フリューゲルを威嚇するようにいななく。
 久しく感じていない肌のひりつくような戦場の空気だ。
 先王とワシは同時に馬の腹を蹴り、加速する。
 矛の動きを確かめるように2、3回振り回し、遠心力の乗ったその矛先を思い切りぶつけ合った。
 重たい金属同士のぶつかり合う音、それだけでは言い表わすことのできない重たい空気の震えが起こり、互いの馬が衝撃でよろめき合う。
 これじゃ、これこそが戦いじゃわい。

「ブケファラス!!」

「フリューゲル!!」

 まるで一緒に生まれた双子であるかのごとく、馬の気持ちが伝わってくる。
 馬もまた主人の気持ちを感じて動く。
 この一体感がたまらぬ。
 時には馬の額がぶつかり合うような距離で競り合い、時には矛の切っ先がギリギリ届かないくらいの距離で互いの思考の先を読み合う。
 戦いに無粋な言葉はいらぬ。
 しかし、体力が尽きてくるとそうもいかぬ。

「はぁはぁ、歳は取りたくないものだな。この程度の打ち合いで、息が上がってしまうとは」

「はぁはぁ、ワシはまだ全然疲れておりませんがね」

「嘘つけ、どう見ても息も絶え絶えじゃろうが」

「そんなことはありませぬ」

「このわからずや!」

「なんじゃとこのハゲ!!」

「き、貴様言ってはならんことを申したな!!」

 こうして汚い第二戦が幕を開けた。


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