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137.鉄の聖剣
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柔らかな燐光を湛える煌びやかな聖剣。
柄から切っ先まで趣味の悪い金色で、ゴテゴテと宝石が埋め込まれてゴージャスな雰囲気の剣だ。
光を放っていなかったらどこの成金が作らせた悪趣味な剣だと思ってしまっただろう。
その無駄に煌びやかな見た目が持ち手のマル……マールフェイトと絶妙にマッチしている。
「最低でも手足の2本や3本は覚悟しておけよ、平民がぁ!!」
2本ずつしか付いてないけどね。
マールフィイトは剣を構え、僕に向かって走ってくる。
「クロードさん!逃げてください!!」
マヤの悲痛な叫びが取り巻き共のニヤニヤ笑いを加速させる。
それほどに凄い力を秘めているというのだろうか、あの聖剣は。
たしか神様は魔王の強さを氷竜王くらいの強さだと言っていた。
元々はそれを倒すために神様がマヤに与えるはずだったスキルだ。
それは確かに強力なものだろう。
僕の反転魔法でも跳ね返せないかもしれない。
僕は視力強化スキルで強化された動体視力を総動員して攻撃を先読みする。
「ん?」
なるほど、大体分かった。
僕は身体をすっと横に向けて聖剣を余裕で避ける。
僕が避けたために、僕の背中側の壁に聖剣が突き刺さる。
聖剣の持つ光が弾け、轟音が鳴り響く。
壁には深い切り込みが入っていた。
廊下を挟んで向こう側の外壁までもその切れ込みは続いている。
確かにすごい威力だ。
聖剣というのはとんでもなく強い攻撃力を秘めた剣なのだろう。
しかしそれだけだな。
振り回すマールフェイトの剣さばきは素人そのものだ。
何でも斬れる剣を持った素人と、ひのきの棒を持った剣の達人が戦ったとしても素人は剣すら振れずに瞬殺されてしまうだろう。
僕は剣の達人では無いけれど、目の前のド素人よりは修羅場を潜ってきている。
それに視力強化スキルによる動体視力ブーストがあれば、こんな大降りの攻撃当たるわけがない。
「上手く避けたな。だが次でおしまいだ。はぁぁぁぁっ」
マールフェイトはその耳障りな甲高い声をキンキン言わせて突っ込んでくる。
僕はもう一度マールフェイトの攻撃を避ける。
また壁には深い切れ込みが入ってしまった。
きっとマールフェイトが直すだろう。
僕はマールフェイトが手に持った聖剣の柄にそっと触れ、回転スキルを全力行使する。
「あちっ」
いきなり手に持った聖剣が高速回転したマールフェイトは聖剣から手を離す。
摩擦熱で手のひらを火傷しているかもな。
カラーンと地に落ちる聖剣。
僕はそれを拾い上げた。
「へー、聖剣って意外と軽いんだ……」
「ぼ、僕のだぞ!!返せ!返せよぉ!!」
持ち上げた聖剣はまるで重さを感じない。
羽のように軽く、僕のようなもやしでも振ることができそうだ。
しかし30秒ほど持っていたら聖剣は光の粒になって消えてしまった。
バチンッと左の手首にしっぺをされたような痛みと衝撃が走る。
手首を見るとそこには右頬にあるみたいな複雑な模様のタトゥが。
おいおい、どうなっているんだ。
この世界は僕をアウトローな男にしたいのか?
ドレッドにしてニューヨークでDJでもやればいいのかな。
「そ、そうだ。残念だったな、聖剣は僕にしか使えないんだよ!くそっ、もう一度だ。聖剣召喚!!」
しかしマールフェイトの手には一向に聖剣が現われない。
魔力切れとかだろうか。
聖剣召喚って魔力とか消費するのかな。
「そんなはずは……。聖剣召喚!聖剣召喚っ!!出ろ!出ろよぉぉっ!!なんで出ないんだよぉぉっ!!」
マールフェイトは泣きそうな顔で手をかざし続ける。
しかしポーズを変えても掛け声を変えても聖剣は出ない。
僕は左手首のタトゥを見る。
まさかな。
「聖剣召喚……」
周りには聞こえないくらい小さな僕の呟きに反応して、手首のタトゥが熱を持つ。
眩い光が教室内を包み、僕の手にはなんの変哲もない鉄の剣が握られていた。
どこにでもあるような数打ちの鉄剣に見える。
僕はヒュンと一度振ってみた。
ド素人の僕が振ったにも拘わらず、剣は空気を切りいい音を立てる。
相当な切れ味がありそうな剣だけど。
「お、お、おま、おまえ……」
「まさか……」
「あれって……」
「聖剣、なの?」
いやいや、まさかね。
僕は手に持ったその重さを全く感じない鉄の剣が光を纏うような様子をイメージしてみた。
鉄の剣はぼんやりと光を放つ。
いやいや、まだ聖剣だとは分からないからね。
僕は適当な机に向かってその鉄の剣を振るってみる。
ヒュン、そんな音を立てて机はただの板になった。
教室がシーンと静まり返る。
「なあ、やっぱり、あれって……」
「ああ、聖剣だよな」
「聖剣だ」
「聖剣って拾い上げたら所有者が変わるものだったんだ」
「え?じゃあ生まれたときに神から与えられたってマールフェイトさんがいつも言ってたのは……」
「ああ、嘘じゃね?」
教室はあることないこと噂する声で騒然となる。
まあ生まれたときから持ってたのは嘘じゃないと思うけどね。
むしろ拾ったら所有権が移るとかの設定のほうが信じられない。
あの神様この世界の設定かなにかいじったのかな。
余計なことはするなと言われていたけど、これって余計なことになるのかな。
きっとならないよね。
だって僕は落ちていた聖剣を拾っただけだもの。
世界の設定をいじったのは神様だもの。
僕は悪くない。
僕が誰にでもなく言い訳していると、廊下のほうからバタバタと誰かが走ってくる。
「き、君たち!これはいったい何があったのかね!!」
召喚のときにマヤになにか嫌味を言っていたハゲ頭だ。
たしかペカーリ先生という名前だとマヤは言っていたな。
面倒なことにならなければいいけど。
柄から切っ先まで趣味の悪い金色で、ゴテゴテと宝石が埋め込まれてゴージャスな雰囲気の剣だ。
光を放っていなかったらどこの成金が作らせた悪趣味な剣だと思ってしまっただろう。
その無駄に煌びやかな見た目が持ち手のマル……マールフェイトと絶妙にマッチしている。
「最低でも手足の2本や3本は覚悟しておけよ、平民がぁ!!」
2本ずつしか付いてないけどね。
マールフィイトは剣を構え、僕に向かって走ってくる。
「クロードさん!逃げてください!!」
マヤの悲痛な叫びが取り巻き共のニヤニヤ笑いを加速させる。
それほどに凄い力を秘めているというのだろうか、あの聖剣は。
たしか神様は魔王の強さを氷竜王くらいの強さだと言っていた。
元々はそれを倒すために神様がマヤに与えるはずだったスキルだ。
それは確かに強力なものだろう。
僕の反転魔法でも跳ね返せないかもしれない。
僕は視力強化スキルで強化された動体視力を総動員して攻撃を先読みする。
「ん?」
なるほど、大体分かった。
僕は身体をすっと横に向けて聖剣を余裕で避ける。
僕が避けたために、僕の背中側の壁に聖剣が突き刺さる。
聖剣の持つ光が弾け、轟音が鳴り響く。
壁には深い切り込みが入っていた。
廊下を挟んで向こう側の外壁までもその切れ込みは続いている。
確かにすごい威力だ。
聖剣というのはとんでもなく強い攻撃力を秘めた剣なのだろう。
しかしそれだけだな。
振り回すマールフェイトの剣さばきは素人そのものだ。
何でも斬れる剣を持った素人と、ひのきの棒を持った剣の達人が戦ったとしても素人は剣すら振れずに瞬殺されてしまうだろう。
僕は剣の達人では無いけれど、目の前のド素人よりは修羅場を潜ってきている。
それに視力強化スキルによる動体視力ブーストがあれば、こんな大降りの攻撃当たるわけがない。
「上手く避けたな。だが次でおしまいだ。はぁぁぁぁっ」
マールフェイトはその耳障りな甲高い声をキンキン言わせて突っ込んでくる。
僕はもう一度マールフェイトの攻撃を避ける。
また壁には深い切れ込みが入ってしまった。
きっとマールフェイトが直すだろう。
僕はマールフェイトが手に持った聖剣の柄にそっと触れ、回転スキルを全力行使する。
「あちっ」
いきなり手に持った聖剣が高速回転したマールフェイトは聖剣から手を離す。
摩擦熱で手のひらを火傷しているかもな。
カラーンと地に落ちる聖剣。
僕はそれを拾い上げた。
「へー、聖剣って意外と軽いんだ……」
「ぼ、僕のだぞ!!返せ!返せよぉ!!」
持ち上げた聖剣はまるで重さを感じない。
羽のように軽く、僕のようなもやしでも振ることができそうだ。
しかし30秒ほど持っていたら聖剣は光の粒になって消えてしまった。
バチンッと左の手首にしっぺをされたような痛みと衝撃が走る。
手首を見るとそこには右頬にあるみたいな複雑な模様のタトゥが。
おいおい、どうなっているんだ。
この世界は僕をアウトローな男にしたいのか?
ドレッドにしてニューヨークでDJでもやればいいのかな。
「そ、そうだ。残念だったな、聖剣は僕にしか使えないんだよ!くそっ、もう一度だ。聖剣召喚!!」
しかしマールフェイトの手には一向に聖剣が現われない。
魔力切れとかだろうか。
聖剣召喚って魔力とか消費するのかな。
「そんなはずは……。聖剣召喚!聖剣召喚っ!!出ろ!出ろよぉぉっ!!なんで出ないんだよぉぉっ!!」
マールフェイトは泣きそうな顔で手をかざし続ける。
しかしポーズを変えても掛け声を変えても聖剣は出ない。
僕は左手首のタトゥを見る。
まさかな。
「聖剣召喚……」
周りには聞こえないくらい小さな僕の呟きに反応して、手首のタトゥが熱を持つ。
眩い光が教室内を包み、僕の手にはなんの変哲もない鉄の剣が握られていた。
どこにでもあるような数打ちの鉄剣に見える。
僕はヒュンと一度振ってみた。
ド素人の僕が振ったにも拘わらず、剣は空気を切りいい音を立てる。
相当な切れ味がありそうな剣だけど。
「お、お、おま、おまえ……」
「まさか……」
「あれって……」
「聖剣、なの?」
いやいや、まさかね。
僕は手に持ったその重さを全く感じない鉄の剣が光を纏うような様子をイメージしてみた。
鉄の剣はぼんやりと光を放つ。
いやいや、まだ聖剣だとは分からないからね。
僕は適当な机に向かってその鉄の剣を振るってみる。
ヒュン、そんな音を立てて机はただの板になった。
教室がシーンと静まり返る。
「なあ、やっぱり、あれって……」
「ああ、聖剣だよな」
「聖剣だ」
「聖剣って拾い上げたら所有者が変わるものだったんだ」
「え?じゃあ生まれたときに神から与えられたってマールフェイトさんがいつも言ってたのは……」
「ああ、嘘じゃね?」
教室はあることないこと噂する声で騒然となる。
まあ生まれたときから持ってたのは嘘じゃないと思うけどね。
むしろ拾ったら所有権が移るとかの設定のほうが信じられない。
あの神様この世界の設定かなにかいじったのかな。
余計なことはするなと言われていたけど、これって余計なことになるのかな。
きっとならないよね。
だって僕は落ちていた聖剣を拾っただけだもの。
世界の設定をいじったのは神様だもの。
僕は悪くない。
僕が誰にでもなく言い訳していると、廊下のほうからバタバタと誰かが走ってくる。
「き、君たち!これはいったい何があったのかね!!」
召喚のときにマヤになにか嫌味を言っていたハゲ頭だ。
たしかペカーリ先生という名前だとマヤは言っていたな。
面倒なことにならなければいいけど。
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