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115.お嬢様からの依頼
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僕はいつものごとく、シロの住処である高層ビルの屋上に降り立った。
ここのところ何をやっても楽しくない。
やっぱりみんなと一緒だったときを思い出して寂しくなってしまうんだ。
リリー姉さんは貴族の押しかけ妻として毎日猛攻をかけているようだし、会長も酒造りを本格的に始めた。
ミゲル君は意外にも酒場で料理人の修行を始めたようだ。
みんな別々の人生を歩み始めたんだ。
僕だけ足踏みしているわけにはいかない。
でも少しだけこちらの世界で息抜きをしないとやっていられない。
こちらの世界には拓君もいるし、拓君の彼女の花音ちゃんとも知らない仲じゃない。
あまり2人の仲を邪魔したくはないけれど、僕も今はそこまで心に余裕がないからね。
ふたりの間にわざと座ったりしちゃうよ。
僕はゴブ次郎に夢幻魔法で姿を見えないようにしてもらい、ビルを飛び降りた。
タクシーを拾い、拓君の家に向かう。
拓君の家はあのとき不動産屋さんに案内してもらう予定だったあのマンションだ。
高層マンションにあの家賃で住めるなんておかしいと思っていたのだが、あの部屋は案の定事故物件だった。
以前人が自殺した部屋のようだ。
夜な夜な変な音が聞こえて、前の住人は気持ち悪くて引っ越した。
だが僕が猫や鳩やゴブ次郎を使って調査した結果、その噂の原因は隣の住人だった。
隣に住んでいる高橋さん夫婦はちょっとアブノーマルな性癖の人たちだ。
いわゆるSM好き。
サディスティックな奥さんとマゾヒスティックな旦那さんが出会って結婚した高橋さん夫婦は、毎夜毎夜かなりの激しいプレイを行っているようだ。
旦那さんは見るからにエリートだし、奥さんも楚々としていて清楚な大和なでしこに見えるんだけど人は見た目によらないものだな。
まあそんなわけで拓君の家に幽霊は出ない。
2年は家賃も今のままにしてもらえるように契約したし、お得な物件だったと思う。
投稿動画のほうは、企画演出編集すべて拓君に任せるようになってからは再生回数もうなぎのぼりだ。
僕のセンスが悪かったということなのだろうか。
おかげで僕の仕事は英語字幕をつけるだけとなった。
ちゃんねるを乗っ取られてしまった気分だ。
「ただいまぁ~」
拓君の家ではあるけれど、僕の家でもあると思って帰ってきたときはいつもただいまと言っている。
拓君からの返事は無い。
どこかに出かけているのだろうか。
代わりにゴブリンたちからグギャグギャと返答がある。
僕は扉を開けてリビングに入った。
リビングのローテーブルの上には拓君の書置きが。
『アニキへ。花音ちゃんとデートに行ってきます。あと、なんかおっぱいの大きい女の人が訪ねてきて連絡先を置いていったので連絡してみてください。なにかアニキに頼みたいことがあるって言ってました。けっこう急いでるっぽかったので早目に連絡してあげてください』
くそぅ、拓君め。
花音ちゃんと2人だけでデートに行くとは。
寂しいじゃないか。
拓君にはいざというときのためにゴブリン召喚と使役魔法を身に付けさせてあるし、ゴブ次郎みたいな忍ビルドのスキルを身に付けさせた隠密ゴブリンを待機させてある。
だから2人だけでデートに行くことは問題は無い。
僕の心情的な問題を抜きにすればね。
まあいいや、年頃の男女をつかまえてデートするなとは言えない。
しかしおっぱいの大きい女の人って誰のことだろう。
以前お母さんの病気を治療してあげたおっぱいお嬢様かな。
あの人以外は花音ちゃんくらいしか、おっぱいの大きい知り合いなんていないからね。
僕はバッテリーが切れてしまっているスマホに充電ケーブルを繋ぎ、書かれていた連絡先に電話してみる。
『はい、真田でございます』
おお、お嬢様の声だ。
真田っていうのがお嬢様の名前なのかな。
前回は名前を聞くのを忘れていたからね。
志乃さんっていう下の名前は覚えているのだけれど、苗字は知らなかったんだ。
真田志乃さんか、いい名前だ。
「あの、拓君に言われて電話したんですけど。前回お母さんの病気を治した者です」
『その度は本当にお世話になりました。一度直接会ってお話がしたいのですが、直近でご都合のつく日にちなどありますでしょうか』
僕は今日会ってもいいことを伝えると、迎えをよこすと言われた。
別に場所を言ってくれれば僕のほうから出向いたのだけどな。
「母を治療していただき、ありがとうございました。あのときは動転していてちゃんとお礼もできなかったので、改めてお礼申し上げます。本当に、感謝してもしきれません」
「い、いえ。それで、なにか頼みたいことがあるとか拓君に聞いたんですけど……」
「はい。厚かましいお願いなのですが、護衛を頼めないかなと思っておりまして」
護衛か。
また物騒な話なのかな。
日本で一般の警備保障サービス以上の護衛が必要になるようなことは少ない。
この前のようなことが起こっているということだろうか。
「今回は国内ではないんです。実は……」
お嬢様の話によれば、お嬢様の家が経営している会社の社員が海外で紛争に巻き込まれてしまっているらしい。
お嬢様の家の会社は国内でも有数の総合商社だ。
海外のインフラ事業にも力を入れている。
この度アフリカで通信事業の支援をしていた社員数十人が、パイプラインの奪い合いで起きた紛争に巻き込まれ助けを求めているのだという。
自衛隊にも出動要請を出したらしいのだが、場所が3つの国を挟む国境線に近いために対応が遅れている。
このままでは巻き込まれて死者が出る可能性も高いので、なんとか様々なツテを使って救出に行きたいらしい。
それで僕に話を持ってきたのか。
僕は身元があやふやな分、自由だからね。
ま、おっぱいが大きい人の頼みは断れないよね。
ここのところ何をやっても楽しくない。
やっぱりみんなと一緒だったときを思い出して寂しくなってしまうんだ。
リリー姉さんは貴族の押しかけ妻として毎日猛攻をかけているようだし、会長も酒造りを本格的に始めた。
ミゲル君は意外にも酒場で料理人の修行を始めたようだ。
みんな別々の人生を歩み始めたんだ。
僕だけ足踏みしているわけにはいかない。
でも少しだけこちらの世界で息抜きをしないとやっていられない。
こちらの世界には拓君もいるし、拓君の彼女の花音ちゃんとも知らない仲じゃない。
あまり2人の仲を邪魔したくはないけれど、僕も今はそこまで心に余裕がないからね。
ふたりの間にわざと座ったりしちゃうよ。
僕はゴブ次郎に夢幻魔法で姿を見えないようにしてもらい、ビルを飛び降りた。
タクシーを拾い、拓君の家に向かう。
拓君の家はあのとき不動産屋さんに案内してもらう予定だったあのマンションだ。
高層マンションにあの家賃で住めるなんておかしいと思っていたのだが、あの部屋は案の定事故物件だった。
以前人が自殺した部屋のようだ。
夜な夜な変な音が聞こえて、前の住人は気持ち悪くて引っ越した。
だが僕が猫や鳩やゴブ次郎を使って調査した結果、その噂の原因は隣の住人だった。
隣に住んでいる高橋さん夫婦はちょっとアブノーマルな性癖の人たちだ。
いわゆるSM好き。
サディスティックな奥さんとマゾヒスティックな旦那さんが出会って結婚した高橋さん夫婦は、毎夜毎夜かなりの激しいプレイを行っているようだ。
旦那さんは見るからにエリートだし、奥さんも楚々としていて清楚な大和なでしこに見えるんだけど人は見た目によらないものだな。
まあそんなわけで拓君の家に幽霊は出ない。
2年は家賃も今のままにしてもらえるように契約したし、お得な物件だったと思う。
投稿動画のほうは、企画演出編集すべて拓君に任せるようになってからは再生回数もうなぎのぼりだ。
僕のセンスが悪かったということなのだろうか。
おかげで僕の仕事は英語字幕をつけるだけとなった。
ちゃんねるを乗っ取られてしまった気分だ。
「ただいまぁ~」
拓君の家ではあるけれど、僕の家でもあると思って帰ってきたときはいつもただいまと言っている。
拓君からの返事は無い。
どこかに出かけているのだろうか。
代わりにゴブリンたちからグギャグギャと返答がある。
僕は扉を開けてリビングに入った。
リビングのローテーブルの上には拓君の書置きが。
『アニキへ。花音ちゃんとデートに行ってきます。あと、なんかおっぱいの大きい女の人が訪ねてきて連絡先を置いていったので連絡してみてください。なにかアニキに頼みたいことがあるって言ってました。けっこう急いでるっぽかったので早目に連絡してあげてください』
くそぅ、拓君め。
花音ちゃんと2人だけでデートに行くとは。
寂しいじゃないか。
拓君にはいざというときのためにゴブリン召喚と使役魔法を身に付けさせてあるし、ゴブ次郎みたいな忍ビルドのスキルを身に付けさせた隠密ゴブリンを待機させてある。
だから2人だけでデートに行くことは問題は無い。
僕の心情的な問題を抜きにすればね。
まあいいや、年頃の男女をつかまえてデートするなとは言えない。
しかしおっぱいの大きい女の人って誰のことだろう。
以前お母さんの病気を治療してあげたおっぱいお嬢様かな。
あの人以外は花音ちゃんくらいしか、おっぱいの大きい知り合いなんていないからね。
僕はバッテリーが切れてしまっているスマホに充電ケーブルを繋ぎ、書かれていた連絡先に電話してみる。
『はい、真田でございます』
おお、お嬢様の声だ。
真田っていうのがお嬢様の名前なのかな。
前回は名前を聞くのを忘れていたからね。
志乃さんっていう下の名前は覚えているのだけれど、苗字は知らなかったんだ。
真田志乃さんか、いい名前だ。
「あの、拓君に言われて電話したんですけど。前回お母さんの病気を治した者です」
『その度は本当にお世話になりました。一度直接会ってお話がしたいのですが、直近でご都合のつく日にちなどありますでしょうか』
僕は今日会ってもいいことを伝えると、迎えをよこすと言われた。
別に場所を言ってくれれば僕のほうから出向いたのだけどな。
「母を治療していただき、ありがとうございました。あのときは動転していてちゃんとお礼もできなかったので、改めてお礼申し上げます。本当に、感謝してもしきれません」
「い、いえ。それで、なにか頼みたいことがあるとか拓君に聞いたんですけど……」
「はい。厚かましいお願いなのですが、護衛を頼めないかなと思っておりまして」
護衛か。
また物騒な話なのかな。
日本で一般の警備保障サービス以上の護衛が必要になるようなことは少ない。
この前のようなことが起こっているということだろうか。
「今回は国内ではないんです。実は……」
お嬢様の話によれば、お嬢様の家が経営している会社の社員が海外で紛争に巻き込まれてしまっているらしい。
お嬢様の家の会社は国内でも有数の総合商社だ。
海外のインフラ事業にも力を入れている。
この度アフリカで通信事業の支援をしていた社員数十人が、パイプラインの奪い合いで起きた紛争に巻き込まれ助けを求めているのだという。
自衛隊にも出動要請を出したらしいのだが、場所が3つの国を挟む国境線に近いために対応が遅れている。
このままでは巻き込まれて死者が出る可能性も高いので、なんとか様々なツテを使って救出に行きたいらしい。
それで僕に話を持ってきたのか。
僕は身元があやふやな分、自由だからね。
ま、おっぱいが大きい人の頼みは断れないよね。
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