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21.ドヤ顔ワンマンアーミー
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「動いたら本当に殺すからな」
「いえ、死ぬのはあなたですよ」
俺の頭に銃口を突きつけるテロリストの頭に、いつの間にか現れたメイドがアサルトライフルの銃口を突きつけていた。
メイドが持っているアサルトライフルは先日誘拐犯共のアジトで押収したものだ。
エルザはこれがやりたかったのか。
「ふふ、怯えていますね。申し訳ありません先ほどの言葉は冗談ですよ。殺してしまえば坊ちゃんが怯えて私のことを怖がってしまうかもしれません。それは私の本意ではありませんからね。半殺しで許して差し上げますよ」
そう言ってエルザはアサルトライフルのごつい銃床で男の顔面をぶん殴った。
やけにパソコンで動画サイトを見ていると思っていたら、小銃を使った戦闘術を研究していたのか。
エルザは顔面を押さえて蹲る男の頭にサッカーボールキックを叩きこんでトドメを刺すと、次の獲物を探す。
おい、こいつ死んでないのか。
『大丈夫ですよ坊ちゃま。ちゃんと半死半生です。意識が戻るかはわかりませんがね』
それは生きているとはいえないだろう。
だがまあ、銃を持って押し入ってきた男たちを殺すなとは言わないさ。
綺麗事だけじゃあ世の中は回らない。
自由だ平等だ民主主義だのと上辺を取り繕ったところでこの世が弱肉強食だということに変わりはないんだ。
相場と同じで、この世はすべてゼロサムゲームだってことだな。
そんな小難しいことを考えて俺が得意げになっている間にもエルザは金髪ポニーテールをまるで閃光のように翻して教室内を制圧していった。
テロリスト共の顔面に銃床を叩き込み、手足に銃弾を撃ち込む。
銃声がするたびに男の野太い悲鳴が上がった。
「クリア」
静まり返った教室に、エルザの鈴の音のように可憐な声が響き渡る。
ちょっとドヤ顔だ。
テロリスト共を制圧してクリアと言うのをよほどやってみたかったらしい。
クリアって誰に言ってるんだよ。
お前ワンマンアーミーだろうが。
「エルザ、状況を教えてくれ。みんなも不安だろう。中村、頼む」
「わかった。みんな聞いてくれ!このメイドさんは四宮の家のメイドさんで、高度な戦闘訓練を受けた精鋭だ。この教室の安全は確保されたと思ってくれて構わない!」
「「「おおぉぉぉっ」」」
高度な戦闘訓練とはよく言ったものだ
確かに戦闘訓練っぽいのはしてたな。
風呂上りに動画サイトを見ながら。
あれが高度な戦闘訓練なのだったらミリタリーマニアはみんな精鋭だ。
だがまあ、エルザのことを元エリート軍人だとでも思いこんでくれれば色々と誤魔化しもきくか。
「ではエルザさんから状況の説明を」
「かしこまりました。現在学園内には126人のテロリストが入り込んでおります。そのうちの6人はこの教室の人員ですので残りはちょうど120人ということになりますね」
120人とか数を考えろよ。
そんな人数のテロリストに入り込まれるとか日本大丈夫なのかよ。
相手は国が後ろ盾になっている組織だろうし、現職の国会議員までも協力者だったわけだからある程度は仕方がないのだろうが限度というものがある。
海に囲まれているせいで国境警備がガバガバなのだろうか。
先日も大手自動車メーカー関係の巨額事件の容疑者が仮釈放中に国外に逃亡する事件があったばかりじゃないか。
逃亡犯はともかく、大量の火器を持ったテロリストはさすがに国内に入る前になんとかしてくれなければ。
防弾チョッキと伸縮式警棒くらいの装備しか与えられていない学園の警備員にテロリストの相手は荷が重すぎる。
鮮やかにテロリストたちを無力化したエルザによって少し希望が湧いてきていたクラスのみんなは、エルザの口から出た120人というテロリストの人数に再び絶望の淵に落とされた。
皆視線を落として項垂れる。
騒ぎ出さないのは目の前に明確な脅威が存在していないからだろう。
今は大丈夫だが、いつかは再びその銃口が突きつけられる。
そんな遅効性の毒のような恐怖が、じわりじわりとクラスメイトたちの心を蝕んでいく。
120人なんてたぶんエルザには無力化するのに1分もかからないだろうが、さすがにそんな数を相手にできるというのは人間を超越しすぎている。
元エリート軍人で誤魔化しきれるレベルではないだろう。
ここは外からの救出を待つのがベストな選択か。
俺はスマホを取り出し、実家に電話を入れる。
しかし無常にも、スマホはコールを開始することはなかった。
「圏外、か」
おそらく携帯電話の電波を阻害するような妨害電波がどこかから発せられているのだろう。
通信を断ち、助けを呼ばせないつもりか。
だがこの学園レベルの大きな施設に全く通信が通じなくなるのは逆に不自然だ。
おそらく数時間もすればこの学園でトラブルが起きていることは外へと伝わるだろう。
その前にテロリスト共が犯行声明を出すかもしれんがな。
俺は専門家じゃないからこの先どうしたらいいのかわからんな。
「とりあえず守りを固めるか。それにはこの教室は少し不利だな」
「守りに易く、攻めに難く、ですね。学園内で最適な場所を探します」
現代の戦争でそんな格言がどれほど役にたつかはわからんがな。
ミサイル撃ち込まれたり空爆受けたら全部吹き飛ぶ。
さて、やつらがどれだけの兵器を持ち込んでいるのか。
「いえ、死ぬのはあなたですよ」
俺の頭に銃口を突きつけるテロリストの頭に、いつの間にか現れたメイドがアサルトライフルの銃口を突きつけていた。
メイドが持っているアサルトライフルは先日誘拐犯共のアジトで押収したものだ。
エルザはこれがやりたかったのか。
「ふふ、怯えていますね。申し訳ありません先ほどの言葉は冗談ですよ。殺してしまえば坊ちゃんが怯えて私のことを怖がってしまうかもしれません。それは私の本意ではありませんからね。半殺しで許して差し上げますよ」
そう言ってエルザはアサルトライフルのごつい銃床で男の顔面をぶん殴った。
やけにパソコンで動画サイトを見ていると思っていたら、小銃を使った戦闘術を研究していたのか。
エルザは顔面を押さえて蹲る男の頭にサッカーボールキックを叩きこんでトドメを刺すと、次の獲物を探す。
おい、こいつ死んでないのか。
『大丈夫ですよ坊ちゃま。ちゃんと半死半生です。意識が戻るかはわかりませんがね』
それは生きているとはいえないだろう。
だがまあ、銃を持って押し入ってきた男たちを殺すなとは言わないさ。
綺麗事だけじゃあ世の中は回らない。
自由だ平等だ民主主義だのと上辺を取り繕ったところでこの世が弱肉強食だということに変わりはないんだ。
相場と同じで、この世はすべてゼロサムゲームだってことだな。
そんな小難しいことを考えて俺が得意げになっている間にもエルザは金髪ポニーテールをまるで閃光のように翻して教室内を制圧していった。
テロリスト共の顔面に銃床を叩き込み、手足に銃弾を撃ち込む。
銃声がするたびに男の野太い悲鳴が上がった。
「クリア」
静まり返った教室に、エルザの鈴の音のように可憐な声が響き渡る。
ちょっとドヤ顔だ。
テロリスト共を制圧してクリアと言うのをよほどやってみたかったらしい。
クリアって誰に言ってるんだよ。
お前ワンマンアーミーだろうが。
「エルザ、状況を教えてくれ。みんなも不安だろう。中村、頼む」
「わかった。みんな聞いてくれ!このメイドさんは四宮の家のメイドさんで、高度な戦闘訓練を受けた精鋭だ。この教室の安全は確保されたと思ってくれて構わない!」
「「「おおぉぉぉっ」」」
高度な戦闘訓練とはよく言ったものだ
確かに戦闘訓練っぽいのはしてたな。
風呂上りに動画サイトを見ながら。
あれが高度な戦闘訓練なのだったらミリタリーマニアはみんな精鋭だ。
だがまあ、エルザのことを元エリート軍人だとでも思いこんでくれれば色々と誤魔化しもきくか。
「ではエルザさんから状況の説明を」
「かしこまりました。現在学園内には126人のテロリストが入り込んでおります。そのうちの6人はこの教室の人員ですので残りはちょうど120人ということになりますね」
120人とか数を考えろよ。
そんな人数のテロリストに入り込まれるとか日本大丈夫なのかよ。
相手は国が後ろ盾になっている組織だろうし、現職の国会議員までも協力者だったわけだからある程度は仕方がないのだろうが限度というものがある。
海に囲まれているせいで国境警備がガバガバなのだろうか。
先日も大手自動車メーカー関係の巨額事件の容疑者が仮釈放中に国外に逃亡する事件があったばかりじゃないか。
逃亡犯はともかく、大量の火器を持ったテロリストはさすがに国内に入る前になんとかしてくれなければ。
防弾チョッキと伸縮式警棒くらいの装備しか与えられていない学園の警備員にテロリストの相手は荷が重すぎる。
鮮やかにテロリストたちを無力化したエルザによって少し希望が湧いてきていたクラスのみんなは、エルザの口から出た120人というテロリストの人数に再び絶望の淵に落とされた。
皆視線を落として項垂れる。
騒ぎ出さないのは目の前に明確な脅威が存在していないからだろう。
今は大丈夫だが、いつかは再びその銃口が突きつけられる。
そんな遅効性の毒のような恐怖が、じわりじわりとクラスメイトたちの心を蝕んでいく。
120人なんてたぶんエルザには無力化するのに1分もかからないだろうが、さすがにそんな数を相手にできるというのは人間を超越しすぎている。
元エリート軍人で誤魔化しきれるレベルではないだろう。
ここは外からの救出を待つのがベストな選択か。
俺はスマホを取り出し、実家に電話を入れる。
しかし無常にも、スマホはコールを開始することはなかった。
「圏外、か」
おそらく携帯電話の電波を阻害するような妨害電波がどこかから発せられているのだろう。
通信を断ち、助けを呼ばせないつもりか。
だがこの学園レベルの大きな施設に全く通信が通じなくなるのは逆に不自然だ。
おそらく数時間もすればこの学園でトラブルが起きていることは外へと伝わるだろう。
その前にテロリスト共が犯行声明を出すかもしれんがな。
俺は専門家じゃないからこの先どうしたらいいのかわからんな。
「とりあえず守りを固めるか。それにはこの教室は少し不利だな」
「守りに易く、攻めに難く、ですね。学園内で最適な場所を探します」
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