義妹とその婚約者に家を乗っ取られたので出ていくことにしました

３．乱暴

「ちょ、ちょっと、やめてください！！」

「なんだよ、ちょっとケツ触ったくらいでよ。なあお前、これから俺といいことしねえか？俺と寝れば色々買ってやるぞ？貴族の妾なんて平民の中じゃ最上級の勝ち組だろ？他の使用人たちを見下せるぜ？」

「私はそういうの興味ありませんから！！」

「へぇ、いいなお前。そういう堅い感じの娘を堕とすのが俺は大好きなんだよ」

「放して！誰か助けて！！」

　悲鳴を聞いて駆けつけてみれば、アリアがマークに乱暴されていました。
　手首を掴まれて壁に押し付けられています。
　少女漫画なんかではヒロインがポッとなるようなシチュエーションですが、現実ではただのレ〇プ未遂現場です。

「マーク様、何をしていらっしゃるのですか」

「ちっ。なんだよクレア、やきもちか？」

「その手を離してください」

「わかったわかった。そんな睨むなよ。たかがメイドだろ？」

　無意識に睨みつけていたようです。
　こんなに怒りを感じたのは生まれて初めてかもしれません。
　アリアは私の大切な部下です。
　一緒に過ごした時間は今世の家族なんかとは比べ物になりません。
　むしろ家族よりも大切な存在と言っても過言ではないでしょう。
　そんなアリアをないがしろにされて私が怒らないはずはありません。

「アリアは私が個人的に雇った使用人です。父や母から使用人に関してなんと言われているかは知りませんが、アリアに関して父や母にはなんの権限もありません。当然私はアリアに関してなんの許可も出しません。わかったらその手を離しなさい」

「ちっ、なに怖い顔してんだよ。意味わかんね」

　マークはふてくされたような顔でアリアの手を開放します。
　途端脱兎の勢いでアリアが私の胸に飛び込んできました。
　その肩は酷く震えていました。
　私はアリアの背中に手を回して優しく撫でました。

「アリア、もう大丈夫ですよ。怖い思いをさせてしまってごめんなさい」

　アリアは無言で私のことを強く抱きしめました。
　アリアにこんな思いをさせてしまったのは、私の甘さが原因なのかもしれません。
　私も覚悟を決める必要がありますね。

「おい、このことはノーマン様に言いつけるからな。お前ノーマン様やミシェル様に嫌われてんだろ？他にも色々言いつけないといけないことがあるからな、覚悟しとけよ」

　捨て台詞のようにそう吐いてマークは去っていきました。
　覚悟はもうできていますから心配は無用ですよ。