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62.前総督の孫
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海岸に作った牢屋エリアへの入り口に、手足を縄で数珠繋ぎにした侵略者たちを運び込んでいくオーガたち。
オーガたちはやはり少しやりすぎてしまい、数人が亡くなってしまった。
死なば皆仏だ、前回の南蛮船を沈めたときに建てた首塚に一緒に供養した。
これから人も増えていくと思うし、そろそろ本格的な墓地が必要だろうか。
島民たちはこの時代らしく仏教や神を熱心に信仰しているから、お坊さんや神官なども呼びたい。
しかし生臭くない宗教家っていうのはなかなか見つからないものだ。
島民の誰かが寿命や事故、病気などで亡くなる前に見つけておかなければならないので頑張ってはみるけどね。
俺は怪我を負っている人の治療を終えると、避難所に向かった。
「大将、終わりやしたか?」
「まあ大体は」
兵力の4分の1程度は捕縛が完了、その他は現在ゴーストたちが食事を兼ねた無力化作業中だ。
すでに島に上陸しようとしていた部隊はすべて無力化し終えたようで、ゴーストたちには敵船に向かってもらっている。
もう二度と俺達には関わろうとは思わないように徹底的に怖がらせなければな。
あまりしつこいようなら一度本国にお邪魔するのも必要かもしれない。
たとえそれでスペインがアジアに来なくなってもどうせどっかの国が来るんだろうけど。
結局、1国1国地道に追い返していくしかないということかな。
たぶん今年領地をもらうであろう殿の領地運営にも現代人らしく少しくらいは口を出したいし、やることはいっぱいだな。
「そういえば俺、伝兵衛さんに用があって来たんだった」
「ワシにか?」
「そう。島に攻めてきた帝国人の中で2番目に偉い人が誰かっていうのと、その人の人となりなどを教えてほしい」
「それなら前の総督の孫だな。昨年死んだ前の総督はワシのような異邦人にも公平に接してくれるお方だった。今の総督とは大違いじゃな」
伝兵衛さんの話によれば、前の総督の孫という人物はお祖父さんに似てそこそこの人格者であるらしい。
人格者といって征服者であることには変わりないのだが、その中でもむちゃくちゃやる奴とそうでない奴がいるのだという。
孫はそこそこ話の分かる人であるらしい。
「なるほど。わかった。ありがとう」
「いやいや、このくらいではまだまだ受けた恩が返しきれん。何かあればなんでも言ってくれ」
「帝国人をたくさん捕虜にしたから、まだまだやってもらわなければならないことはたくさんあるよ。最初の仕事として、これから捕虜のもとへ向かうので通訳お願いしてもいい?」
「わかった」
俺は伝兵衛さんを引き連れて海岸の牢屋エリアに向かった。
「この人が前の総督の孫?」
「そうじゃ」
その人物は俺と同年代くらいの青年だった。
髪は黒いが日本人のような真っ黒というわけではなく、光が当たると茶色く見えるような黒。
顔の彫りは深く、瞳は透き通った青。
パイ〇ーツオブカ〇ビアンに出てきそうなイケメン船乗りだ。
「伝兵衛さん、今から俺の言うことを約して伝えてもらえるかな」
「わかった」
「まず、あなたをこれから解放します。船を1隻返しますからそれに乗ってフィリピンに帰ってください。もちろん一人じゃあ船を動かせないでしょうからあなたの指名する人物も一緒に解放しましょう。あ、総督だけはダメですけど。それで、フィリピンに帰ったら次に赴任してくる総督にこの島のことを包み隠さず報告してください。この島を攻めた結果どうなったのかも含めてね」
伝兵衛さんは流暢なスペイン語で総督の孫だという青年に俺の言葉を伝えていく。
青年はここから解放されると分かると静かに涙を流した。
良心が痛むからやめて欲しいな。
侵略してきたのはそっちなのに、これでは俺が悪者みたいじゃないか。
まあ善良な人はこんなところに閉じ込めていたらそのうち俺の良心を苛んでいただろうからさっさと出て行ってくれていいさ。
俺の良心の毒となる善人を全員引き連れていってくれると嬉しいな。
人間牧場に閉じ込めるのはできるならば傲慢で自己中心的な現総督のような人間ばかりがいい。
「#$%&$%……」
「かたじけないと申しておる。この島のことは必ず帝国本国にもメキシコの副王にも伝えると」
「できればこの島に興味を持たないような伝え方にしてくれるとうれしい、と伝えて」
「了解した」
伝兵衛さんが伝える俺の言葉に千切れんばかりに首を縦に振る青年。
よほどオーガやゴーストが恐ろしかったのだろう。
俺は牢の鍵を開け、青年を出す。
他の人も出ようとしたので青年が指定する人だけ一緒に出し、それ以外は戻ってもらった。
不満そうに鉄格子を掴む人を伝兵衛さんが牢屋の中に蹴り入れる。
よほどこの人たちに酷い目に合わされたのだろう。
理性的に通訳する伝兵衛さんからは信じられないほど声を荒らげてスペイン人たちに蹴りを入れる。
気持ちは分かるけど捕虜を虐待するのは俺の方針とはちょっと違うので、あまり伝兵衛さんを牢屋エリアに近づけないほうがいいかもしれない。
牢は窮屈にならないように数十人ずつの房に分かれているので、何箇所もの牢を回って青年の指名する人物を解放して回っていく。
解放された人たちは青年がきっちり言い含めているようで、逃げようとする素振りは無い。
ゴーストが無力化したスペイン人たちがオーガによってどんどん運ばれてきている状況で、逃げようとするのも無謀かもしれないけどね。
「ところで山田殿」
「なにかな伝兵衛さん」
「あ、あの地獄の鬼のようなものや、悪霊のようなものは、お主が?」
「ちゃんと使役しているから危険は無いよ」
「そ、そうか……」
黒いモヤのような姿のゴーストが纏わりつき、ぐったりとしたスペイン人が牢内で呻き声を上げる。
前方からは気絶したスペイン人を数人束にして担いでくるオーガ。
オーガは俺とすれ違い様にペコリと会釈していった。
相変わらず真面目な奴らだ。
伝兵衛さんはそのペコリという動きにもビクリと反応している。
俺だけは知ってるから、君らが真面目で仕事熱心な良い奴だってこと。
オーガたちはやはり少しやりすぎてしまい、数人が亡くなってしまった。
死なば皆仏だ、前回の南蛮船を沈めたときに建てた首塚に一緒に供養した。
これから人も増えていくと思うし、そろそろ本格的な墓地が必要だろうか。
島民たちはこの時代らしく仏教や神を熱心に信仰しているから、お坊さんや神官なども呼びたい。
しかし生臭くない宗教家っていうのはなかなか見つからないものだ。
島民の誰かが寿命や事故、病気などで亡くなる前に見つけておかなければならないので頑張ってはみるけどね。
俺は怪我を負っている人の治療を終えると、避難所に向かった。
「大将、終わりやしたか?」
「まあ大体は」
兵力の4分の1程度は捕縛が完了、その他は現在ゴーストたちが食事を兼ねた無力化作業中だ。
すでに島に上陸しようとしていた部隊はすべて無力化し終えたようで、ゴーストたちには敵船に向かってもらっている。
もう二度と俺達には関わろうとは思わないように徹底的に怖がらせなければな。
あまりしつこいようなら一度本国にお邪魔するのも必要かもしれない。
たとえそれでスペインがアジアに来なくなってもどうせどっかの国が来るんだろうけど。
結局、1国1国地道に追い返していくしかないということかな。
たぶん今年領地をもらうであろう殿の領地運営にも現代人らしく少しくらいは口を出したいし、やることはいっぱいだな。
「そういえば俺、伝兵衛さんに用があって来たんだった」
「ワシにか?」
「そう。島に攻めてきた帝国人の中で2番目に偉い人が誰かっていうのと、その人の人となりなどを教えてほしい」
「それなら前の総督の孫だな。昨年死んだ前の総督はワシのような異邦人にも公平に接してくれるお方だった。今の総督とは大違いじゃな」
伝兵衛さんの話によれば、前の総督の孫という人物はお祖父さんに似てそこそこの人格者であるらしい。
人格者といって征服者であることには変わりないのだが、その中でもむちゃくちゃやる奴とそうでない奴がいるのだという。
孫はそこそこ話の分かる人であるらしい。
「なるほど。わかった。ありがとう」
「いやいや、このくらいではまだまだ受けた恩が返しきれん。何かあればなんでも言ってくれ」
「帝国人をたくさん捕虜にしたから、まだまだやってもらわなければならないことはたくさんあるよ。最初の仕事として、これから捕虜のもとへ向かうので通訳お願いしてもいい?」
「わかった」
俺は伝兵衛さんを引き連れて海岸の牢屋エリアに向かった。
「この人が前の総督の孫?」
「そうじゃ」
その人物は俺と同年代くらいの青年だった。
髪は黒いが日本人のような真っ黒というわけではなく、光が当たると茶色く見えるような黒。
顔の彫りは深く、瞳は透き通った青。
パイ〇ーツオブカ〇ビアンに出てきそうなイケメン船乗りだ。
「伝兵衛さん、今から俺の言うことを約して伝えてもらえるかな」
「わかった」
「まず、あなたをこれから解放します。船を1隻返しますからそれに乗ってフィリピンに帰ってください。もちろん一人じゃあ船を動かせないでしょうからあなたの指名する人物も一緒に解放しましょう。あ、総督だけはダメですけど。それで、フィリピンに帰ったら次に赴任してくる総督にこの島のことを包み隠さず報告してください。この島を攻めた結果どうなったのかも含めてね」
伝兵衛さんは流暢なスペイン語で総督の孫だという青年に俺の言葉を伝えていく。
青年はここから解放されると分かると静かに涙を流した。
良心が痛むからやめて欲しいな。
侵略してきたのはそっちなのに、これでは俺が悪者みたいじゃないか。
まあ善良な人はこんなところに閉じ込めていたらそのうち俺の良心を苛んでいただろうからさっさと出て行ってくれていいさ。
俺の良心の毒となる善人を全員引き連れていってくれると嬉しいな。
人間牧場に閉じ込めるのはできるならば傲慢で自己中心的な現総督のような人間ばかりがいい。
「#$%&$%……」
「かたじけないと申しておる。この島のことは必ず帝国本国にもメキシコの副王にも伝えると」
「できればこの島に興味を持たないような伝え方にしてくれるとうれしい、と伝えて」
「了解した」
伝兵衛さんが伝える俺の言葉に千切れんばかりに首を縦に振る青年。
よほどオーガやゴーストが恐ろしかったのだろう。
俺は牢の鍵を開け、青年を出す。
他の人も出ようとしたので青年が指定する人だけ一緒に出し、それ以外は戻ってもらった。
不満そうに鉄格子を掴む人を伝兵衛さんが牢屋の中に蹴り入れる。
よほどこの人たちに酷い目に合わされたのだろう。
理性的に通訳する伝兵衛さんからは信じられないほど声を荒らげてスペイン人たちに蹴りを入れる。
気持ちは分かるけど捕虜を虐待するのは俺の方針とはちょっと違うので、あまり伝兵衛さんを牢屋エリアに近づけないほうがいいかもしれない。
牢は窮屈にならないように数十人ずつの房に分かれているので、何箇所もの牢を回って青年の指名する人物を解放して回っていく。
解放された人たちは青年がきっちり言い含めているようで、逃げようとする素振りは無い。
ゴーストが無力化したスペイン人たちがオーガによってどんどん運ばれてきている状況で、逃げようとするのも無謀かもしれないけどね。
「ところで山田殿」
「なにかな伝兵衛さん」
「あ、あの地獄の鬼のようなものや、悪霊のようなものは、お主が?」
「ちゃんと使役しているから危険は無いよ」
「そ、そうか……」
黒いモヤのような姿のゴーストが纏わりつき、ぐったりとしたスペイン人が牢内で呻き声を上げる。
前方からは気絶したスペイン人を数人束にして担いでくるオーガ。
オーガは俺とすれ違い様にペコリと会釈していった。
相変わらず真面目な奴らだ。
伝兵衛さんはそのペコリという動きにもビクリと反応している。
俺だけは知ってるから、君らが真面目で仕事熱心な良い奴だってこと。
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