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39.戦国メガフロート構想
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年が明けた。
意外にも静かな年明けだったよ。
織田信長が静かだったからなんだろうけど。
信長は今岐阜城にいるみたいなので、殿も明日新年の挨拶に向かうようだ。
木っ端武士の番はいつになったら廻ってくるのかわからないし、直接挨拶できるかどうかも分からないけれど行かないわけにもいかないよね。
そういうところは日本って戦国時代から変わってないね。
めんどくさい文化だ。
まあ俺も殿のところに新年の挨拶には行くけど。
めんどくさいけど、そういう小さなことが人間関係を円滑にしてくれるからね。
逆に小さなことが人間関係にヒビを入れることもあるし、怠ると後々更に面倒なことになったりもする。
あと勘左衛門さんの奥さんの清さんが怖い。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「おう善次郎。お前も来て飲め」
案の定というか、山内家はゆるい。
ばっちり袴で決めてきたのに、みんな着流しで飲んでる。
雪さんが新年の挨拶くらいちゃんとした格好をしたほうがいいって言ってたからこの日のために仕立てたのに、全然みんないつも通りじゃないか。
「某、裸踊りを披露いたしまする!!」
「「「ぎゃはははっ」」」
なんかアホらしくなってきた。
ご飯だけ食べて帰ろう。
太平洋に島を建設していることは、殿にも内緒だ。
知っているのは雪さんだけ。
でも男だらけだから雪さんは連れてこない。
それにしても、ここは温かくていいな。
岐阜は朝晩氷が張るくらい寒いけれど、ここは快適な気温だ。
元野伏せりの彼らも、身体中から汗を滴らせながら働いている。
すでに沖ノ鳥島はかなり広がっていた。
岩礁地帯一面に岩を設置しておいたから、彼らはその隙間を埋めるように土を運んで踏み固める作業をしている。
収納の指輪の積載量には未だ限界が見えない。
ダンプカーの比ではない量の岩や土を簡単に本土から運んでこられてしまうから、島の工事がどんどん進む。
だが島にはまだ問題も多い。
一番の問題は水だろう。
人工島は掘っても井戸なんて出ない。
雨水を溜めてろ過して使うくらいしか今のところは思いつかない。
原始的なろ過装置くらいだったら、テレビでアイドルグループが作っているのを見たことがあるからスマホで検索すればちゃんとしたものが作れるとは思う。
だけど水が雨次第っていうのは怖いよね。
雨がなかなか降らないときのために、海水を蒸留して水を作れるような施設も必要かもしれない。
塩も作れるし、一石二鳥なんじゃないだろうか。
「旦那、見てください。1軒目の家が完成しましたよ」
そう言って野伏せりのまとめ役だった男が自慢げに指し示すのは、お世辞にも立派とはいえないような掘っ立て小屋だった。
まだまだ海水蒸留施設は早そうだ。
水はしばらく俺が本土から水瓶に入れて持ってこよう。
「島が良い感じに出来上がってきたしさ、みんな名前を考えない?今までの名前だと信長のことを引きずっちゃうでしょ」
「旦那、その前にこの島の名前をつけませんか」
「ああ、この島はもう名前があるんだよ。沖ノ鳥島っていうんだ」
面倒なので未来の名前をそのまま使う。
名前の由来なんて知らないけど。
「沖の鳥ですか。いい名前ですね。不思議としっくりくる。そんじゃあワシらは沖島とでも名乗ります。ワシが沖島平蔵」
「そんじゃワシは沖島辰五郎」
「ワシは沖島喜三郎で」
そんなこんなでみんな沖島姓を名乗ることにしたらしい。
島に愛着を持ってくれたようで嬉しいかぎりだ。
「それで旦那、これからこの島をどうするんです?いささか狭い島っすよね」
「そうだね。どうしようか……」
あまり何にも考えてなかったんだよね。
沖ノ鳥島は米粒のような形の岩礁地帯だ。
岩礁地帯いっぱいくらいまでは俺たちの力でも島を拡張することが可能だろう。
だけど問題はそこからだ。
俺はこの島を海の中から見てみたんだ。
幸いにも武芸十八般の中には水泳術という泳ぎの技もあった。
ベテランの海女さんのように海に潜った俺は、あちこちから島を見てどんな形をしているのか確かめてみたんだ。
そしたらこの島は海底から生えた山のような形をしていた。
山のてっぺんに台地があり、そこが岩礁地帯だ。
これでは、山のてっぺんの台地を広げるのにどれだけの岩が必要になるのかわかったものじゃない。
岩礁地帯だけだと島の広さは大体東京ドーム100個にも満たないくらいだ。
目算だけど、半分の50個くらいかもしれない。
東京ドーム換算ってよくわからないよね。
なんにせよ、10人程度の男が生活していくには広いけどもっと大勢の人をここに生活させようとなると少し狭い。
ここで食料の生産なんかも行わなければならないとなると、1000人以上生活するのはきつい面積だろう。
もう少し島を広くしたいところだ。
どうしたものかな。
なりふり構わず世界中から石材を集めまくれば、海の底まで瓦礫で埋め尽くして島を広げることは可能だろう。
だけど、そこまですると崩れないか心配になってくる。
やっぱり素人の人工島建設は平らな岩礁地帯までが限界だな。
そうなると、島の拡張はそこまでということになる。
島を広げる手段として他に頭に浮かぶのは、メガフロートとかだろうか。
それこそ素人が手を出せるようなものじゃないよね。
もはや現代を通り越して近未来の代物だからね。
海外ではちょいちょいあるみたいだけど、少なくとも日本ではメガフロートの建造は聞いたことがない。
「とりあえず保留。外周いっぱいまで島を広げたら海風を防ぐための防風林を作って、その後畑だ」
「わかりやした」
元気よく返事をする平蔵さん。
だが、俺の頭からはまだメガフロートの展望が離れなかった。
いやいや戦国時代にメガフロートは絶対無理だから。
そう自分に言い聞かせた。
意外にも静かな年明けだったよ。
織田信長が静かだったからなんだろうけど。
信長は今岐阜城にいるみたいなので、殿も明日新年の挨拶に向かうようだ。
木っ端武士の番はいつになったら廻ってくるのかわからないし、直接挨拶できるかどうかも分からないけれど行かないわけにもいかないよね。
そういうところは日本って戦国時代から変わってないね。
めんどくさい文化だ。
まあ俺も殿のところに新年の挨拶には行くけど。
めんどくさいけど、そういう小さなことが人間関係を円滑にしてくれるからね。
逆に小さなことが人間関係にヒビを入れることもあるし、怠ると後々更に面倒なことになったりもする。
あと勘左衛門さんの奥さんの清さんが怖い。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「おう善次郎。お前も来て飲め」
案の定というか、山内家はゆるい。
ばっちり袴で決めてきたのに、みんな着流しで飲んでる。
雪さんが新年の挨拶くらいちゃんとした格好をしたほうがいいって言ってたからこの日のために仕立てたのに、全然みんないつも通りじゃないか。
「某、裸踊りを披露いたしまする!!」
「「「ぎゃはははっ」」」
なんかアホらしくなってきた。
ご飯だけ食べて帰ろう。
太平洋に島を建設していることは、殿にも内緒だ。
知っているのは雪さんだけ。
でも男だらけだから雪さんは連れてこない。
それにしても、ここは温かくていいな。
岐阜は朝晩氷が張るくらい寒いけれど、ここは快適な気温だ。
元野伏せりの彼らも、身体中から汗を滴らせながら働いている。
すでに沖ノ鳥島はかなり広がっていた。
岩礁地帯一面に岩を設置しておいたから、彼らはその隙間を埋めるように土を運んで踏み固める作業をしている。
収納の指輪の積載量には未だ限界が見えない。
ダンプカーの比ではない量の岩や土を簡単に本土から運んでこられてしまうから、島の工事がどんどん進む。
だが島にはまだ問題も多い。
一番の問題は水だろう。
人工島は掘っても井戸なんて出ない。
雨水を溜めてろ過して使うくらいしか今のところは思いつかない。
原始的なろ過装置くらいだったら、テレビでアイドルグループが作っているのを見たことがあるからスマホで検索すればちゃんとしたものが作れるとは思う。
だけど水が雨次第っていうのは怖いよね。
雨がなかなか降らないときのために、海水を蒸留して水を作れるような施設も必要かもしれない。
塩も作れるし、一石二鳥なんじゃないだろうか。
「旦那、見てください。1軒目の家が完成しましたよ」
そう言って野伏せりのまとめ役だった男が自慢げに指し示すのは、お世辞にも立派とはいえないような掘っ立て小屋だった。
まだまだ海水蒸留施設は早そうだ。
水はしばらく俺が本土から水瓶に入れて持ってこよう。
「島が良い感じに出来上がってきたしさ、みんな名前を考えない?今までの名前だと信長のことを引きずっちゃうでしょ」
「旦那、その前にこの島の名前をつけませんか」
「ああ、この島はもう名前があるんだよ。沖ノ鳥島っていうんだ」
面倒なので未来の名前をそのまま使う。
名前の由来なんて知らないけど。
「沖の鳥ですか。いい名前ですね。不思議としっくりくる。そんじゃあワシらは沖島とでも名乗ります。ワシが沖島平蔵」
「そんじゃワシは沖島辰五郎」
「ワシは沖島喜三郎で」
そんなこんなでみんな沖島姓を名乗ることにしたらしい。
島に愛着を持ってくれたようで嬉しいかぎりだ。
「それで旦那、これからこの島をどうするんです?いささか狭い島っすよね」
「そうだね。どうしようか……」
あまり何にも考えてなかったんだよね。
沖ノ鳥島は米粒のような形の岩礁地帯だ。
岩礁地帯いっぱいくらいまでは俺たちの力でも島を拡張することが可能だろう。
だけど問題はそこからだ。
俺はこの島を海の中から見てみたんだ。
幸いにも武芸十八般の中には水泳術という泳ぎの技もあった。
ベテランの海女さんのように海に潜った俺は、あちこちから島を見てどんな形をしているのか確かめてみたんだ。
そしたらこの島は海底から生えた山のような形をしていた。
山のてっぺんに台地があり、そこが岩礁地帯だ。
これでは、山のてっぺんの台地を広げるのにどれだけの岩が必要になるのかわかったものじゃない。
岩礁地帯だけだと島の広さは大体東京ドーム100個にも満たないくらいだ。
目算だけど、半分の50個くらいかもしれない。
東京ドーム換算ってよくわからないよね。
なんにせよ、10人程度の男が生活していくには広いけどもっと大勢の人をここに生活させようとなると少し狭い。
ここで食料の生産なんかも行わなければならないとなると、1000人以上生活するのはきつい面積だろう。
もう少し島を広くしたいところだ。
どうしたものかな。
なりふり構わず世界中から石材を集めまくれば、海の底まで瓦礫で埋め尽くして島を広げることは可能だろう。
だけど、そこまですると崩れないか心配になってくる。
やっぱり素人の人工島建設は平らな岩礁地帯までが限界だな。
そうなると、島の拡張はそこまでということになる。
島を広げる手段として他に頭に浮かぶのは、メガフロートとかだろうか。
それこそ素人が手を出せるようなものじゃないよね。
もはや現代を通り越して近未来の代物だからね。
海外ではちょいちょいあるみたいだけど、少なくとも日本ではメガフロートの建造は聞いたことがない。
「とりあえず保留。外周いっぱいまで島を広げたら海風を防ぐための防風林を作って、その後畑だ」
「わかりやした」
元気よく返事をする平蔵さん。
だが、俺の頭からはまだメガフロートの展望が離れなかった。
いやいや戦国時代にメガフロートは絶対無理だから。
そう自分に言い聞かせた。
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