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番外編・6

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「おかえりなさいませ。今日は少し遅かったですわね」

 自宅に帰ってきたイーサンを、ソフィアが満面の笑みで迎えてくれた。

「……あ、ああ。出先で思いの外に時間を取られてな」

「まあ、今日はお仕事でどちらかにお出かけだったのですか?」

 ソフィアが目を輝かせて尋ねてくる。今日はイーサンの身にどんな出来事があったのかと、話を聞きたくてうずうずしているといった様子だ。
 こういうところが可愛らしい女性だと思う。初めて出会った日からそう感じている。
 ソフィアは姉のような美貌は持たないが、にじみ出る知性や教養が彼女を魅力的な女性にしている。
 それでも、最初は魔術師に対する恐怖心が勝っていた。今ではソフィアに対する恐れはすっかりなくなっている。

「……あ、いや。うん、仕事だ」

 エイナルの元に行っていたことは、ソフィアには秘密にしておきたい。内緒で贈り物を用意しようとしているのに、ばれてしまっては意味がないからだ。

「…………………へえ、どなたのところにお遊びに行かれていたのでしょうか?」

 心なしかソフィアの笑顔が冷たくなった。
 途端に彼女の背後に控えている侍女が、イーサンをきつく睨みつけてくる。
 ソフィアが実家から連れてきた彼女は、ぱっと見ただけでは身の回りの世話をしているただの侍女のようだ。しかし、時折見せる身のこなしはどう考えても護衛としか思えない。
 ソフィアは彼女のことをそのように紹介はしなかったが、魔術師の一族の家から連れられてきたのだから、魔術師なのだろうとイーサンは思っている。
 そのため、彼女に睨まれるとつい尻込みをしてしまうのだ。魔術師が怖いと思う気持ちは、そう簡単にはなくならない。

「――っあ、遊びに行っていたわけじゃない。ちゃんと用事があって出かけていたのだ!」

「…………ふうん。ではどちらまで行かれたのです?」

「……そ、それは……」

「なるほど、すぐには言えないのですね。まあ、よろしいのではないですか?」

 ソフィアは満面の笑みでそう言ってから、さっさと自室に下がってしまった。
 顔は笑っているが、絶対に彼女の機嫌を損ねさせてしまったとわかる。
 追いかけた方がよいのだろうかと迷っていると、エラに声をかけられた。

「……それで、本当はどちらにお出かけだったのですか?」

「教会に行っていた。エイナル殿と話がしたくてな」

「でしたら奥さまにそう言えばよろしいでしょうに……。何もおっしゃらないから女遊びだと疑われるのですよ?」

 呆れ顔のエラに、イーサンは教会へ行った目的を話して聞かせた。
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