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 生まれてからずっと、ソフィアの周囲にいた者たちは優秀な魔術師ばかりだった。
 誰にも負けたくなくて、何事にもがむしゃらに取り組んできた。イーサンのような情けない者を相手にするのは初めてだ。

――昔から根を詰めすぎると言われていたのよね。だからこそ、私の結婚相手にはこれくらいの人でちょうど良かったのではないかと思えてしまうことが悔しいわ。

 この思いはイーサンにはまだ伝えない。彼がもう少し信頼に足る人物になった時は伝えてもいいかなと思う。
 姉の代わりに結婚しろと言われたときには困惑した。心構えもろくにできないまま、あっという間に時間が過ぎてしまった。
 問題は山積みだが、ようやくなんとかやっていけるかもしれないと思えるようになってきた。



 ソフィアがイーサンに続いて廊下に出ると、そこには数人の領民の姿があった。無料診療にやってきたらしい彼らは、ソフィアに気がつくとこちらへ駆け寄ってくる。
 ソフィアは彼らと話をするために、一歩前へ出ようとした。すると、イーサンがソフィアと領民らの間に立ち塞がる。
 ソフィアが驚いてイーサンを見上げると、彼はらしくもなく笑顔で領民に応対を始めた。ぎこちない対応だが、彼なりにソフィアが頑張りすぎないようにしているつもりらしい。

 これから先のことはまだわからないが、もう少しこの人と二人でやっていこうと思えるには十分だった。

「………………まあ、及第点にはまだまだ足りませんけどね」

 ソフィアはそう呟いて、イーサンの隣に並んだ。


 








―――――――――――――――――――――
これで終了でございます。
ここまでお付き合いありがとうございます。
2022/3/27

―――――――――――――――――――――
追記
自己都合で打ち切りにしてしまったのですが、
回収できていない設定がありすぎるので週末に番外編をアップしようかと思います。もしかしたら少し遅れるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
2022/3/28
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