離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

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行方不明

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 どうしてここで同じことが起きたのか、ライラにはさっぱり訳がわからない。
 しかし、アヤを巻き込んでしまったのならば、きちんと説明する義務がライラにはある。

「死んだわ」

 ライラの返答を聞いて、トゥールが激高した。

「――っお前、アヤが死ぬって言うのか⁉」

「そうは言っていないわ。そんなことにはならないようにするから!」

 トゥールはライラの肩を掴んで激しく揺さぶってくる。
 そのまま暴れ出しそうだったので、エリクがトゥールをライラから引き離した。

「落ち着いて下さい。あなたのお気持ちはライラ殿が一番理解しておられます!」

 エリクがそう言った途端、トゥールの動きが止まる。エリクはその隙にカウンターの上に置かれたハンカチを手に取ってトゥールに見せつけた。

「……この刺繍」

 トゥールは目を見開いた。ハンカチの刺繍が子供服に施す魔除けの模様だと気が付いたらしい。
 この国では子供が健康に育つようにと、母親が自分の子供の服に刺繍を施す文化がある。

「……まさか、死んだっていうのはお前の子、なのか?」

「…………うん。アヤちゃんを巻き込んで本当にごめんなさい」

 ライラはトゥールに頭を下げた。
 店内が静まりかえる。

「……私と関わらなければ……。ちゃんと見つけるから」

 ライラが頭を下げたままそう言うと、ルーディがいきなり手を叩いた。
 静まりかえった店内に響く乾いた音に、皆の視線がルーディに集まる。すると、彼女は腰に手を当てて胸を張りながら口を開いた。

「――悪いのはアヤをさらったやつ。アンタは何も悪くない!」

 ルーディはそう力強く言うと、がばりと両手を広げてライラに飛びついてきた。

「アンタに子供がいることは、普段の言動でなんとなくわかってはいたよ。……まさか死んでいるとは思わなかったけど……」

 ルーディはライラの身体をきつく抱きしめてくる。息ができないくらいに苦しいが、ぽんぽんとライラの背中を叩く手は優しかった。

「だからさ、そこらへんの事情は話したくなった時に聞かせてくれたらいいから。今はさっさとアヤを探しに行って!」

 ルーディはそう言ってライラから離れると、笑顔を向けてくれた。
 そんなルーディの後ろで、ジークも優しく微笑みながら力強く頷いている。

「……ありがとうルーディ。こんな時に言うことじゃないかもしれないけれど、すごく心が温かくなったわ」

 ライラはルーディに微笑み返した。それからトゥールの目を見つめて表情を引き締めると、はっきりと宣言をする。

「――アヤちゃんは私が絶対に見つける。必ず連れ帰るわ!」
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