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行方不明
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ライラが殴った冒険者は、彼の背後にいたもう一人の男を巻き込んで吹き飛んでいった。残りの三人の冒険者は、エリクが容赦なく斬り捨ててしまう。
五人の冒険者は、あっという間にそろって仲良く地面に倒れ込んでしまった。
「……あら、ずいぶんあっさりとやられてくれるのね。瘴気に操られているといっても、そんなに強くはないのかしら?」
「油断しないでください。こいつらは再生力が半端ないので、ここからが厄介ですよ」
エリクがそう説明してくれている間に、冒険者たちが人間とはかけ離れた動きをしながら立ち上がる。
ライラが吹き飛ばした際に腕や足があり得ない方向に曲がっていたはずだが、そんなことは関係ないらしい。
「死霊魔術のようなものです。再生が追いつかない速さで粉々にするか、術者を動けなくするしかありません」
「ええ、それってすごく面倒なやつじゃない。どうせこいつらを倒したって、他の行方不明者が現れるだけなのでしょう?」
再びこちらに襲い掛かってくる冒険者に向かって、ライラは手を伸ばす。
「こんなやつらを一人ずつ相手にするのは面倒だわ」
ライラは冒険者たちをまとめて凍らせた。全身を覆っている氷ごと砕いてしまえば、バラバラにできると思ったのだ。
「……よし! これならさすがに再生できないでしょ?」
ライラはすっかり凍って動けなくなっている冒険者に近づいて拳を振り上げた。
「――――っ危ない!」
ライラの拳が氷に触れる直前、エリクが叫んだ。
「ええ! ちょっと、何よこれ⁉」
ライラが氷漬けにした冒険者たちが、あっという間に瘴気の黒い霧に覆われてしまった。
すると、瞬時に氷が溶けてなくなってしまったのだ。
ライラは何が起きたのかは理解できなかったが、慌ててその場から退く。しかし、氷を溶かした瘴気が手のように伸びてきて、逃げるライラを追いかけてくる。
「ああ、せっかくバラバラにできると思ったのに!」
氷がなくなったので、冒険者たちが動きだしたのが視界の端に見えた。
ライラが冒険者たちに気を取られていると、瘴気で出来た黒い手が一気にこちらに伸びてくる。
黒い手が身体に絡みつこうとしてきたので、ライラは咄嗟にナイフで切った。しかし、切られたところからすぐに新たな黒い手が生えてきて、足を掴まれてしまう。
ライラが動けなくなった一瞬の隙に、五人の冒険者が襲ってくる。
ライラは一撃食らう覚悟をしたが、そこへエリクが駆け付けてきてくれた。彼は先ほどのように冒険者の身体を斬り捨てるが、すぐに再生して襲いかかってくる。
「……っ本当に面倒くさい連中ね!」
ライラはそう言いながら、足を拘束している黒い腕を切り落とした。
「キリがありません。こいつらの相手は私がするので、ライラ殿は瘴気を操っているあの女をどうにかしてください。でないと私は長くこの場にいられません」
エリクは服の裾で口を塞いでいる。
彼は呼吸を浅くして瘴気を吸い込まないようにしていた。
「ええ、そうするわ。このままじゃアヤちゃんだって危ないもの」
ライラはエセリンドに向かってナイフを構える。一瞬で彼女の目の前に移動してナイフを突き立てた。しかし、手ごたえはまったくなかった。
エセリンドの身体は霧のように消えてしまう。ライラはナイフを構えた姿勢のまま、彼女の姿を探す。
五人の冒険者は、あっという間にそろって仲良く地面に倒れ込んでしまった。
「……あら、ずいぶんあっさりとやられてくれるのね。瘴気に操られているといっても、そんなに強くはないのかしら?」
「油断しないでください。こいつらは再生力が半端ないので、ここからが厄介ですよ」
エリクがそう説明してくれている間に、冒険者たちが人間とはかけ離れた動きをしながら立ち上がる。
ライラが吹き飛ばした際に腕や足があり得ない方向に曲がっていたはずだが、そんなことは関係ないらしい。
「死霊魔術のようなものです。再生が追いつかない速さで粉々にするか、術者を動けなくするしかありません」
「ええ、それってすごく面倒なやつじゃない。どうせこいつらを倒したって、他の行方不明者が現れるだけなのでしょう?」
再びこちらに襲い掛かってくる冒険者に向かって、ライラは手を伸ばす。
「こんなやつらを一人ずつ相手にするのは面倒だわ」
ライラは冒険者たちをまとめて凍らせた。全身を覆っている氷ごと砕いてしまえば、バラバラにできると思ったのだ。
「……よし! これならさすがに再生できないでしょ?」
ライラはすっかり凍って動けなくなっている冒険者に近づいて拳を振り上げた。
「――――っ危ない!」
ライラの拳が氷に触れる直前、エリクが叫んだ。
「ええ! ちょっと、何よこれ⁉」
ライラが氷漬けにした冒険者たちが、あっという間に瘴気の黒い霧に覆われてしまった。
すると、瞬時に氷が溶けてなくなってしまったのだ。
ライラは何が起きたのかは理解できなかったが、慌ててその場から退く。しかし、氷を溶かした瘴気が手のように伸びてきて、逃げるライラを追いかけてくる。
「ああ、せっかくバラバラにできると思ったのに!」
氷がなくなったので、冒険者たちが動きだしたのが視界の端に見えた。
ライラが冒険者たちに気を取られていると、瘴気で出来た黒い手が一気にこちらに伸びてくる。
黒い手が身体に絡みつこうとしてきたので、ライラは咄嗟にナイフで切った。しかし、切られたところからすぐに新たな黒い手が生えてきて、足を掴まれてしまう。
ライラが動けなくなった一瞬の隙に、五人の冒険者が襲ってくる。
ライラは一撃食らう覚悟をしたが、そこへエリクが駆け付けてきてくれた。彼は先ほどのように冒険者の身体を斬り捨てるが、すぐに再生して襲いかかってくる。
「……っ本当に面倒くさい連中ね!」
ライラはそう言いながら、足を拘束している黒い腕を切り落とした。
「キリがありません。こいつらの相手は私がするので、ライラ殿は瘴気を操っているあの女をどうにかしてください。でないと私は長くこの場にいられません」
エリクは服の裾で口を塞いでいる。
彼は呼吸を浅くして瘴気を吸い込まないようにしていた。
「ええ、そうするわ。このままじゃアヤちゃんだって危ないもの」
ライラはエセリンドに向かってナイフを構える。一瞬で彼女の目の前に移動してナイフを突き立てた。しかし、手ごたえはまったくなかった。
エセリンドの身体は霧のように消えてしまう。ライラはナイフを構えた姿勢のまま、彼女の姿を探す。
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