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プロポーズの夜に~交際ゼロ日婚~(2)
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ところで、これからどうしよう。わたしは裸なのに、彼の動きは止まったままで、再開する様子はない。
仕方なく、腕を伸ばして手さぐりでベッドの下をあさる。
「なにやってんだよ?」
「とりあえず、服を着ようかと……」
そのとき、ちょうどショーツが指にひっかかった。
あったと、その満足げな顔がまずかったのかもしれない。
「なにがおかしいんだよ?」
わたしはそういうつもりじゃなかったのに……。
そういう意味じゃなくて、ただ単にさがしあてられたという達成感からくるものだったのだけれど。
「そんなに帰りたいか? なら帰れよ」
わたしがショーツを手にしていることに気がつき、救いようのないことを言う。
「ちょっと、なにもそこまで言うことないじゃない」
彼はわたしの上から退いて、隣にゴロンと寝転んだ。
完全にふて寝だ。
「ほんとに帰っちゃうよ?」
薄手のブランケットを身体にかけながら半分意地悪のつもりで言って、とりあえずショーツを手のなかにしっかりとおさめる。すると、「そうはいくかよ」と起き上がった彼がわたしの手のなかにあるショーツを遠くに放り投げた。
うわっ、サイテーだ、この男。
「なんだよ、その目は」
「……いや、なんかもういいや」
怒る気にもならない。くしゃっと情けなく転がる自分のショーツを見て、すっかり気が抜けてしまった。
「それよりお腹減らない? なにか食べようよ」
ムードなんてこれっぽっちも残っていない。今さらなのでそう提案する。
すると彼は少し考える素振りを見せて、こう言った。
「男は空腹のほうが、性欲が増して強くなるんだよ」
「だからこのまま続けるっていうこと?」
「ああ、悪いかよ」
なんだかなあ。そんなふうに威張られても。それこそこっちは性欲なんてすっかり失せてしまったんだけれど。
まるで男としての本能なんだぞと動物的に抱かれるみたいで抵抗がある。
それに彼とこういう言い合いも初めてで、この先の未来をともにすると決めたのに、最初からこんな感じで大丈夫なのかと急に不安が襲った。
「ねえ? わたしのこと、ほんとに好き?」
よほど不安そうに見えたのだろうか。彼は一瞬ハッとした表情を見せる。
「どうでもいい女にプロポーズするわけないだろう。だいたい、好きとか、そんな軽い言葉では言い表せないよ。九年前に初めて出会って、会わない間も再会してからも、おまえのこと忘れられなかったよ」
「え……」
深い愛情のこもったセリフに身体の芯から熱くなる。
彼が生きてきた二十六年間のうち、九年という歳月にわたしがいられたのだと考えたら、胸がいっぱいになって言葉にならない。
仕方なく、腕を伸ばして手さぐりでベッドの下をあさる。
「なにやってんだよ?」
「とりあえず、服を着ようかと……」
そのとき、ちょうどショーツが指にひっかかった。
あったと、その満足げな顔がまずかったのかもしれない。
「なにがおかしいんだよ?」
わたしはそういうつもりじゃなかったのに……。
そういう意味じゃなくて、ただ単にさがしあてられたという達成感からくるものだったのだけれど。
「そんなに帰りたいか? なら帰れよ」
わたしがショーツを手にしていることに気がつき、救いようのないことを言う。
「ちょっと、なにもそこまで言うことないじゃない」
彼はわたしの上から退いて、隣にゴロンと寝転んだ。
完全にふて寝だ。
「ほんとに帰っちゃうよ?」
薄手のブランケットを身体にかけながら半分意地悪のつもりで言って、とりあえずショーツを手のなかにしっかりとおさめる。すると、「そうはいくかよ」と起き上がった彼がわたしの手のなかにあるショーツを遠くに放り投げた。
うわっ、サイテーだ、この男。
「なんだよ、その目は」
「……いや、なんかもういいや」
怒る気にもならない。くしゃっと情けなく転がる自分のショーツを見て、すっかり気が抜けてしまった。
「それよりお腹減らない? なにか食べようよ」
ムードなんてこれっぽっちも残っていない。今さらなのでそう提案する。
すると彼は少し考える素振りを見せて、こう言った。
「男は空腹のほうが、性欲が増して強くなるんだよ」
「だからこのまま続けるっていうこと?」
「ああ、悪いかよ」
なんだかなあ。そんなふうに威張られても。それこそこっちは性欲なんてすっかり失せてしまったんだけれど。
まるで男としての本能なんだぞと動物的に抱かれるみたいで抵抗がある。
それに彼とこういう言い合いも初めてで、この先の未来をともにすると決めたのに、最初からこんな感じで大丈夫なのかと急に不安が襲った。
「ねえ? わたしのこと、ほんとに好き?」
よほど不安そうに見えたのだろうか。彼は一瞬ハッとした表情を見せる。
「どうでもいい女にプロポーズするわけないだろう。だいたい、好きとか、そんな軽い言葉では言い表せないよ。九年前に初めて出会って、会わない間も再会してからも、おまえのこと忘れられなかったよ」
「え……」
深い愛情のこもったセリフに身体の芯から熱くなる。
彼が生きてきた二十六年間のうち、九年という歳月にわたしがいられたのだと考えたら、胸がいっぱいになって言葉にならない。
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