10 / 101
エキゾチックな飲み物
4
しおりを挟む
アランにエスコートされながら客間女中の後をついて行くと、この日はガーデンパーティの様式を模しているようで。
丸テーブルには四脚の椅子。エマは招待客が自分たちしか居ないことを今知った。
(良かった、本当にカジュアルなのね)
真っ白なクロスが風にふんわり揺れ、そこに軽食やちょっとした焼き菓子が並び、甘いデザインのティーセット、小ぶりな薔薇が飾られている。
何となく天真爛漫で可愛らしい方が茶会主なのだろうと見当がつく。
「安心した顔をしているな」
「そういう貴方は楽しそうな顔をしているわね」
「ああ、俺を頼りにするしかない様は悪くなかった」
「アランに意地悪されたとアメリアに泣きつくことにするわ」
ふん、と顔を背けると、急に焦り出して自分の方を向いてくれと、エマの名前を何度も呼んだ。
「エマ、エマ……俺が彼女を苦手なこと知っているだろう?」
「まあ、苦手だなんて。私たち三人は古くからの友人、幼なじみでしょう。そんなことを彼女が聞いたら悲しむわ」
ちなみにアメリアとは、二人の幼なじみだが貴族令嬢ではなく大商人の娘、つまりは資産家令嬢である。
昔からエマにちょっかいを出すアランを見ては、「エマに甘えているだけの卑怯者が偉そうに格好つけないでよね。くだらない見栄はお金にもならないわ! ああ、それが貴族の男というものだったかしら」などとパワフルな武闘派少女。
そんな彼女に散々コテンパンにされてきたため、アランは思い出すだけで背筋が凍ってしまうのだ。
「頼むよ」
「さあ。私の気が変わることを祈ってなさいな」
立場がすぐに逆転したことに気分良くしていると、
「まあっ! 初めまして、お越しいただき感謝申し上げます。私が本日の茶会主を務めるリリィです。どうかお好きにお呼び下さいね」
アランの友人の妹であるリリィが、張り切った笑顔で挨拶をするのでこちらもと挨拶を返すと、
「アラン様のような素敵な方が婚約者だなんて。本当に羨ましいですわ」
どうにもエマは喉に刺さった小骨のように心に引っかかった。
丸テーブルには四脚の椅子。エマは招待客が自分たちしか居ないことを今知った。
(良かった、本当にカジュアルなのね)
真っ白なクロスが風にふんわり揺れ、そこに軽食やちょっとした焼き菓子が並び、甘いデザインのティーセット、小ぶりな薔薇が飾られている。
何となく天真爛漫で可愛らしい方が茶会主なのだろうと見当がつく。
「安心した顔をしているな」
「そういう貴方は楽しそうな顔をしているわね」
「ああ、俺を頼りにするしかない様は悪くなかった」
「アランに意地悪されたとアメリアに泣きつくことにするわ」
ふん、と顔を背けると、急に焦り出して自分の方を向いてくれと、エマの名前を何度も呼んだ。
「エマ、エマ……俺が彼女を苦手なこと知っているだろう?」
「まあ、苦手だなんて。私たち三人は古くからの友人、幼なじみでしょう。そんなことを彼女が聞いたら悲しむわ」
ちなみにアメリアとは、二人の幼なじみだが貴族令嬢ではなく大商人の娘、つまりは資産家令嬢である。
昔からエマにちょっかいを出すアランを見ては、「エマに甘えているだけの卑怯者が偉そうに格好つけないでよね。くだらない見栄はお金にもならないわ! ああ、それが貴族の男というものだったかしら」などとパワフルな武闘派少女。
そんな彼女に散々コテンパンにされてきたため、アランは思い出すだけで背筋が凍ってしまうのだ。
「頼むよ」
「さあ。私の気が変わることを祈ってなさいな」
立場がすぐに逆転したことに気分良くしていると、
「まあっ! 初めまして、お越しいただき感謝申し上げます。私が本日の茶会主を務めるリリィです。どうかお好きにお呼び下さいね」
アランの友人の妹であるリリィが、張り切った笑顔で挨拶をするのでこちらもと挨拶を返すと、
「アラン様のような素敵な方が婚約者だなんて。本当に羨ましいですわ」
どうにもエマは喉に刺さった小骨のように心に引っかかった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる