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橘さん~クールな彼~
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しおりを挟む「たちばな、さん?」
私の頬には橘さんの着ていたシャツの感触があり、一枚の布越しに彼の体温を感じる。彼に抱きしめられていた。
「すいません。先ほどは偉そうな口ぶりをしてしまって……。もし部屋に入ってきたのが俺じゃなく違う男だったらと考えてしまって。前のこともありますし」
前っていうのは変な人に絡まれていたときのことだろうか。たしかに、あれから一週間も経っていない。少し危険意識というか……危機感みたいなのが足りなかったかもしれない。
「こちらこそ、すいません。もう少し、気を付けます……」
橘さんは私の両肩を優しく掴み、体を少し離して私の顔を見る。
「ありがとうございます」
私の頬にかかっていた一束の髪を横に外して、やわらかくなる彼の目のカーブ。
橘さんが私の背中に回していた腕を解き、少し離れる。温もりが離れていくことに寂しさを感じて少し手を伸ばしてしまう。
「飲み物、何にしますか?」
彼は先ほどの話の続きを聞いてくる。ソファの前のローテーブルを見るとみずみずしいレタスに挟まれた卵やハムのサンドイッチが色とりどりに並んでいる。
「牛乳って、ありますかね」
「牛乳ですか、ルームサービスに聞いてみますね。」
「はい、お願いします。」
橘さんが部屋の隅にある大きなデスクの上に設置されている電話を取る。デスクに軽く腰かけて電話をする時でさえ、様になっていた。
私は布団の中から探し出した下着とバスルームに置いてきていた服を着る。着替え終わるのと彼の電話が終わりがほぼ同じになる。
「……はい、そうです。……お願いします。」
彼がルームサービスの依頼を終えて受話器を元の場所に戻す。私は立ったまま、彼の様子を見ていた。
「十分ぐらいで来るそうです」
橘さんは私の座るスペースを開けてソファに座り、目顔で彼の右側に座るように促す。
私は指定された場所にゆっくりと座る。手持ち無沙汰ですることがない……。
私は彼の太ももに頭をおき、膝枕をしてもらうことにした。
「どうしました?」
橘さんは平然としていたが、少し動揺しているようだった。
「……なんとなく。嫌ですか?」
顔を右に向け橘さんの膝の上から彼の顔を見る。
「いえ」
それを聞いて私は顔を正面のローテーブルの方に戻す。
「……橘さんはどうして私の、その、彼候補というか……に、なろうと思ったんでしょうか……」
前から疑問に思っていたことを投げかける。
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