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第五章 狙われたわた毛たちを守る大作戦!
35話
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「──い、居ないね」
「もう何時間待ってると思ってるのっ、全然カラス来ないじゃん!?」
次の日。
学校が休みなこともあって、私たち三人は昨日わた毛が襲われた場所の近くの公園にやってきていた。
住宅街だけど公園なら空がひらけているから、カラスの集団で飛んでいたら見つけやすいかもという理由だ。
休日でみんな遠出をしているのか、住宅街は人通りも少なくあたりはしーんとしている。
私たち三人はブランコに座っていた。
星守くんは上を向いて、プラプラとブランコをこいでいる。
わた毛たちは隣の滑り台で遊んでいた。
もふもふとした物体が、順番を守って一匹ずつすべっていく光景は中々に可愛い。
お昼すぎごろからこの公園に来て、ただいま待つこと二時間。
もうすぐ時計の針は、午後三時を指そうとしていた。
「あっ……私ね、おやつ持ってきたんだ!」
「結花のお母さん手作り?」
「え? ううん、おせんべいだよ」
「なーんだ。せんべいかぁ、クッキーがよかったなボク」
「結花ちゃん、失礼な星守にはせんべいをあげなくていいからね」
「うん!」
「ちょ、別にいらないとは言ってないでしょ! 二人ともヒドイ!」
焦ってブランコからおりた星守くんに、私と烈央くんはクスクス笑う。
「じゃあ、取ってくるね!」
おやつを入れた手提げ袋は、滑り台の向こう側にあるベンチに置いている。
まだ滑り台で遊んでいるわた毛を横目で見つつ、私は走ってベンチに向かった。
「あ、たしか飴玉も何個か持ってきたはず! 星守くん、甘いものなら喜ぶかな──」
──ガサゴソ。ガサゴソ。
「へ?」
──ぱちり。
私の手提げ袋に頭を突っこんで、今日のおやつであるせんべいの小袋を口にくわえたカラスと目があった。
あの目つきの鋭さは、例のボスカラスだ。
その場でぴょんぴょんと二回とびはねてから、羽を広げて飛んでいく。
「……ぎゃあぁぁぁ!? ドロボーー!!」
近くの家の屋根に着地したカラスは、袋を器用につついて破いてから、中のおせんべいを食べていた。
「ううっ、せっかく楽しみにしてたのに! 私のおせんべい……! おやつドロボーめ!!」
カラスは「まぁまぁの味だな」と言わんばかりに、カァと鳴いて飛びさっていく。
ひどい、ひどい!!
おせんべいが……!!
私の大声を聞いた二人が、走ってくる。
その後ろに、わた毛たちがぴょんぴょん続いていた。
「結花ちゃんっ!」
「なにがあったのっ。ドロボーって聞こえたけど!?」
「──カラスにおせんべい取られちゃった!」
『カラスに?』
二人は息ぴったりに声を揃えて言った。
「しかもね、良いおんべいだからっ三個しか持って来てないの……! 三人いるのにあと二個しかないの……一人食べられなくなっちゃった!」
うわーん、と私は泣く。
わた毛たちが慰めるように、私の体に登って来た。
しばらくそのままでいると、烈央くんと星守くんが手提げ袋から二つのおせんべいを取り出す。
ビリリと袋を破いた。
……ま、まさか二人だけで食べるの?
と思っていたら。
「はい、結花ちゃん」
「ん、結花」
「へ……い、いいの?」
二人はせんべいをパキッと二つに割って、私にくれた。
烈央くんと星守くんは半分のおせんべい。
でも私は二人から半分を二個もらったから、合わせたら一つのおせんべいになる。
「ふふ、半分こだよ」
「だから泣くのをやめなよね。……おやつは楽しく食べた方が美味しいんだから!」
「──ありがとう烈央くん、星守くん。えへへ、美味しい!」
おせんべいを食べていると、わた毛たちがおせんべいをチラチラと見ていた。
ちょうど半分を食べ終えたところだったから、もう半分を細かく割って手のひらにのせて、わた毛たちにあげてみる。
バッとおせんべいに群がったわた毛たち。
すこしすると満足げに滑り台へ帰っていく。
手元を見ると、どうやって食べたのかおせんべいが綺麗さっぱり無くなっていた。
気になる……今度、口元をよく見てみよう。
手についた粉をはらって、立ち上がる。
すると、烈央くんがあごに手を当てて空を見ていた。
「ねぇ結花ちゃん。もしかしたらなんだけど、カラスたちは巣作りの時期かもしれない」
『巣作り?』
私と星守くんの声が重なる。
「あぁ。カラスは三月から巣作りをするんだ。四月から五月にかけて産卵するけど……あのカラスたちは四月だけどまだ巣作りをしている途中なのかも」
「ええっ。なら巣を作るのに使えそうだから、わた毛たちは狙われてたってこと……?」
「そういうことになるね」
「じゃあさ、わた毛たちが狙われない様に、なにか違うものをあげればいいんじゃなーい?」
「たしかに! うーん、なにをかわりにあげればいいんだろう」
しーん、と私たちの間に重たい空気が流れる。
わた毛たちが狙われない様に、カラスたちの巣作りに使えそうなかわりになるもの……。
そう言えばこの間、ボスカラスは小枝をくわえて帰っていったよね。
あれも巣を作るのに使えるからだ。
私はわた毛たちを見つめながら考える。
その時、一匹のわた毛がブルリと身を震わせた。
「──あ、いいこと思いついたかも!」
ツンツン、と一匹のわた毛をつついて笑う。
うふふ、これなら全部うまく行くはず……!
ニヤニヤしている私を二人は不思議にそうに見つめていた。
「もう何時間待ってると思ってるのっ、全然カラス来ないじゃん!?」
次の日。
学校が休みなこともあって、私たち三人は昨日わた毛が襲われた場所の近くの公園にやってきていた。
住宅街だけど公園なら空がひらけているから、カラスの集団で飛んでいたら見つけやすいかもという理由だ。
休日でみんな遠出をしているのか、住宅街は人通りも少なくあたりはしーんとしている。
私たち三人はブランコに座っていた。
星守くんは上を向いて、プラプラとブランコをこいでいる。
わた毛たちは隣の滑り台で遊んでいた。
もふもふとした物体が、順番を守って一匹ずつすべっていく光景は中々に可愛い。
お昼すぎごろからこの公園に来て、ただいま待つこと二時間。
もうすぐ時計の針は、午後三時を指そうとしていた。
「あっ……私ね、おやつ持ってきたんだ!」
「結花のお母さん手作り?」
「え? ううん、おせんべいだよ」
「なーんだ。せんべいかぁ、クッキーがよかったなボク」
「結花ちゃん、失礼な星守にはせんべいをあげなくていいからね」
「うん!」
「ちょ、別にいらないとは言ってないでしょ! 二人ともヒドイ!」
焦ってブランコからおりた星守くんに、私と烈央くんはクスクス笑う。
「じゃあ、取ってくるね!」
おやつを入れた手提げ袋は、滑り台の向こう側にあるベンチに置いている。
まだ滑り台で遊んでいるわた毛を横目で見つつ、私は走ってベンチに向かった。
「あ、たしか飴玉も何個か持ってきたはず! 星守くん、甘いものなら喜ぶかな──」
──ガサゴソ。ガサゴソ。
「へ?」
──ぱちり。
私の手提げ袋に頭を突っこんで、今日のおやつであるせんべいの小袋を口にくわえたカラスと目があった。
あの目つきの鋭さは、例のボスカラスだ。
その場でぴょんぴょんと二回とびはねてから、羽を広げて飛んでいく。
「……ぎゃあぁぁぁ!? ドロボーー!!」
近くの家の屋根に着地したカラスは、袋を器用につついて破いてから、中のおせんべいを食べていた。
「ううっ、せっかく楽しみにしてたのに! 私のおせんべい……! おやつドロボーめ!!」
カラスは「まぁまぁの味だな」と言わんばかりに、カァと鳴いて飛びさっていく。
ひどい、ひどい!!
おせんべいが……!!
私の大声を聞いた二人が、走ってくる。
その後ろに、わた毛たちがぴょんぴょん続いていた。
「結花ちゃんっ!」
「なにがあったのっ。ドロボーって聞こえたけど!?」
「──カラスにおせんべい取られちゃった!」
『カラスに?』
二人は息ぴったりに声を揃えて言った。
「しかもね、良いおんべいだからっ三個しか持って来てないの……! 三人いるのにあと二個しかないの……一人食べられなくなっちゃった!」
うわーん、と私は泣く。
わた毛たちが慰めるように、私の体に登って来た。
しばらくそのままでいると、烈央くんと星守くんが手提げ袋から二つのおせんべいを取り出す。
ビリリと袋を破いた。
……ま、まさか二人だけで食べるの?
と思っていたら。
「はい、結花ちゃん」
「ん、結花」
「へ……い、いいの?」
二人はせんべいをパキッと二つに割って、私にくれた。
烈央くんと星守くんは半分のおせんべい。
でも私は二人から半分を二個もらったから、合わせたら一つのおせんべいになる。
「ふふ、半分こだよ」
「だから泣くのをやめなよね。……おやつは楽しく食べた方が美味しいんだから!」
「──ありがとう烈央くん、星守くん。えへへ、美味しい!」
おせんべいを食べていると、わた毛たちがおせんべいをチラチラと見ていた。
ちょうど半分を食べ終えたところだったから、もう半分を細かく割って手のひらにのせて、わた毛たちにあげてみる。
バッとおせんべいに群がったわた毛たち。
すこしすると満足げに滑り台へ帰っていく。
手元を見ると、どうやって食べたのかおせんべいが綺麗さっぱり無くなっていた。
気になる……今度、口元をよく見てみよう。
手についた粉をはらって、立ち上がる。
すると、烈央くんがあごに手を当てて空を見ていた。
「ねぇ結花ちゃん。もしかしたらなんだけど、カラスたちは巣作りの時期かもしれない」
『巣作り?』
私と星守くんの声が重なる。
「あぁ。カラスは三月から巣作りをするんだ。四月から五月にかけて産卵するけど……あのカラスたちは四月だけどまだ巣作りをしている途中なのかも」
「ええっ。なら巣を作るのに使えそうだから、わた毛たちは狙われてたってこと……?」
「そういうことになるね」
「じゃあさ、わた毛たちが狙われない様に、なにか違うものをあげればいいんじゃなーい?」
「たしかに! うーん、なにをかわりにあげればいいんだろう」
しーん、と私たちの間に重たい空気が流れる。
わた毛たちが狙われない様に、カラスたちの巣作りに使えそうなかわりになるもの……。
そう言えばこの間、ボスカラスは小枝をくわえて帰っていったよね。
あれも巣を作るのに使えるからだ。
私はわた毛たちを見つめながら考える。
その時、一匹のわた毛がブルリと身を震わせた。
「──あ、いいこと思いついたかも!」
ツンツン、と一匹のわた毛をつついて笑う。
うふふ、これなら全部うまく行くはず……!
ニヤニヤしている私を二人は不思議にそうに見つめていた。
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