上 下
18 / 53
第三章 小さな神様の、探し人

18話

しおりを挟む
「──土地とち神様がみさま?」

 うむ、と女の子……じゃなくて土地神様は大きくうなずく。
 土地神様っていうのは、土地の守り神だそう。
 なんでも土地神様は、すごく昔から封鬼ふうき小学校周辺の土地の守護をしているらしく、それはそれは偉い神様……だと言っている。

 私、神様を初めて見たかも……!
 と一人興奮していると、烈央くんと星守くんはいつもどおり。
 二人は神様を見たことがあるのかな?
 あやかしの二人には、珍しいことじゃないのかも。

 でも私は、初めて見る神様だ。
 興味津々に見ていると私の視線に気づいて、モデルさんのようにポーズを決めはじめた。
 おぉー! と拍手をすると、ちゅっと投げキッスまでしてくれて、ファンサービスまで完璧な神様だ。

「……なるほど。相手が土地神様なら、結花ちゃんの体が勝手にあやつられていたのもわかる。神様だから、それくらいはやろうと思えば出来るからね」
「たしかに神様ならできるだろうけど、こんなにちっこいのがぁ? 手のひらサイズじゃん」
『な、なにを~!? わらわはの、ここら一帯の土地を守っているそれはもう、えら~い神様なんじゃぞ? ほれ、こうべをたれよ』

 ぺこり、と私が頭を下げると満足そうにしている土地神様。

「土地神様。なんで結花ちゃんの体を操ってまで、ここへ導いたんだい?」

 烈央くんが問いかけると、一転して暗い表情になる土地神様。

『それはの……深い、深~いワケがあるのじゃ』

 うつむいてしまい、声まで悲しげだ。
 どんな理由があるのかと、私は固唾をのんで土地神様を見つめた。

『このままじゃ妾──消えてしまうのじゃ! プリティな妾がじゃぞ!? そんなの嫌じゃ、隠世かくりよに連れて行ってくれー!』

 ──れー! れー、れぇ、れ……。

 裏山にこだましていく土地神様の声。
 渾身の叫び声を出した土地神様は、疲れたのかぺたりと座りこむ。

『ふぅ……。昔はたくさんの人間が、妾のところへ手を合わせにきておったわい。じゃが、最近は誰一人来なくなっての……それでこの様じゃ』

 いじけたように、指先で地面をクルクルとなぞりながら『妾は昔、お主たちよりずっと背丈があったんじゃぞ? 本当じゃぞ?』と小さな声をこぼす。

『──信仰されなくなった神はいずれ消える。いまはまだ持ちこたえておるが、妾ももう長くはないじゃろう。……そこで妾は考えた。人間は短命じゃ。でも隠世に行けば何百年、何千年と生きるあやかしばかり! 一人でも手を合わせにくるあやかしを捕まえ──ゴホンッ。ゲットできれば、妾は消えずにすむという算段なのじゃ!」
「……いまこの神様、ゲットって言った? ボクらあやかしのことを長生きするペットくらいに思ってるんだけど?」
「星守、色々と土地神様も大変なんだよ。もう少し話を聞いてあげよう」

 天才じゃろ? と土地神様は、ドヤァァとした顔を向けてくる。

『でものぉ……』
「うわ、まだ喋るよこの神様」
「星守、もう少しの辛抱だよ」
「うへー」

 ──ちょいちょい、土地神様に失礼な二人はおいといて。
 土地神様は急に、両手をきゅっと握り上目使いいに私たちを見てモジモジとしはじめた。

「と、土地神様? おトイレですか?」
『違うわいっ! ……その、えっと、その……のぉ? 言いにくいんじゃが……』
「──なるほど。しかと聞き届けたよ。じゃあさっそく隠世に送ってあげよう、結花ちゃん鍵を」
『待て待て待てーーい!? 話がはやすぎるぞお主! そしてまだ妾は、なにかを言いかけているじゃろうがっ!!』
「うるさいなぁ。隠世に行きたいから、ボクたち送り屋をここへ導いたんでしょ? なら、はやく隠世に行きなよ」
「ちょ、ちょっと二人とも、土地神様にあたりが強くない? 星守くんはともかく……烈央くんまで!」

 二人はぐるんっとふり向いて、私に詰めよる。

「あのね結花ちゃん? 神様は面倒ごとを持ってくるって、うちの朝霧家では相場が決まってるんだ」
「そうそう。神様は、送り屋を出禁にしたいくらいだからねっ!?」
「そ、そこまで言うなんて……。いったい、朝霧家とほかの神様の間でなにがあったの? 怖い……!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。 苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。 ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

高校の守護者~ベテラン忍者(39歳)はどうにか転職したい~

江ノ島 竜海
ファンタジー
職歴ですか?はい、正社員の忍者をずっとやっておりました。 入学から卒業。そしてまた入学。 一連のループを繰り返しながら学校を守ってきた“陰柄真守”は39歳を迎えていた。 人生の岐路に差し掛かった彼はついに転職を決心。 しかし、そんな矢先に唐突なクビを告げられてしまい―― 崖っぷち男の焦燥と希望を描く“取り戻しの物語”が幕を開ける。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~

水鳴諒
児童書・童話
【完結】人形供養をしている深珠神社から、邪悪な魂がこもる人形が逃げ出して、心霊スポットの核になっている。天神様にそれらの人形を回収して欲しいと頼まれた中学一年生のスミレは、天神様の御用人として、神社の息子の龍樹や、血の繋がらない一つ年上の兄の和成と共に、一時間以内に出ないと具合が悪くなる心霊スポット巡りをして人形を回収することになる。※きずな児童書大賞にエントリーしています。応援・ご投票して頂けましたら嬉しいです!

魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。 そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。 そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。 それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。 ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。 散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。 そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き… 【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…? このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど… 魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え… 剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ… 研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て… 元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ… 更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い… 母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。 努力の先に掴んだチート能力… リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ! リュカの活躍を乞うご期待! HOTランキングで1位になりました! 更に【ファンタジー・SF】でも1位です! 皆様の応援のお陰です! 本当にありがとうございます! HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。 しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

処理中です...