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第16話 我輩 VS. 自称最弱のSSS級召喚士
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我城に来訪者が現れた。
白いカッターシャツに黒のスラックスの男。
カッターシャツの胸元を開けているので、粋がった新人営業マンのような印象を受ける。
こいつは召喚士。女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《何でも召喚できる召喚士》になった。
文字通り自由自在に何でも召喚できるから、召喚士のランクとしてはSSS級とされている。
本来、召喚士のランクは最高がS級なのだが、こいつの出現によってS級より上に最高ランクが増設された。
ちなみにSS級はまだ誰もいない。
「子供……? 数々の勇者を亡き者にしてきた極悪人はおまえなのか?」
「そうだけど、おまえは何しにきたの? ここは雑魚が足を踏み入れていい場所じゃないんだけど」
召喚士はムッとした。
「そうか……。僕は雑魚か……」
「いやいやいや! なに不服そうにしてんの? おまえいつも自分のことを最弱だって言ってんじゃん。嘘つきなの? それとも謙虚のフリした厭味なの?」
こいつは普段、自分自身には戦闘能力がないから最弱を自称している。
まったく、白々しい! 召喚込みだと強い自信があるくせに。
「本当に強い人はあまり強い言葉を使わないものだ。おまえの程度が知れる」
「いやいやいや! それはおまえの固定観念だから。強者とて性格は十人十色。さっきは皮肉で質問したけど、我輩は知ってんだぞ。最初に弱いフリをして、召喚したときに実は強者でしたってやることで、周囲の羨望をより高める魂胆。それはただ承認欲求が強いだけだからな。おまえの言う『本当に強い人はあまり強い言葉を使わない』とはぜんぜん違うぞ」
「……非常に不快だ。おまえには早めに退場してもらう。召喚、エリートハウンド!」
返す言葉がなくなった召喚士は、ついに実力行使に出た。
召喚士が最初に召喚したのはエリートハウンド。
灰色の体毛を持つ狼型モンスターであるハウンドの上位種で、通常のハウンドに比べて力も速さも十倍はある。
「じゃあモンスターにはモンスターで対抗するか。モフ、行ってこい」
「ぷぅぷぅ!」
我輩のふかふかペットのモフが、我輩の膝上からピョンと前に飛び出した。
うむ、白くて小さい姿が愛らしくて上品だ。
「ワオォォォオオオンッ!」
エリートハウンドが渾身の咆哮を放った。これは音圧で相手の感覚を麻痺させる技だ。
しかし我輩のモフには通じない。ふさふさの白毛が音圧を減衰させてモフの感覚を守っている。
モフは大口を開くエリートハウンドの口の中へと飛び込んだ。
咆哮が止まると、モフは全身の毛を硬化させ、ウニのように逆立てて伸ばした。
エリートハウンドの頭部は内側から無数の針によって串刺しになり、エリートハウンドは光の粒子となって消滅した。
「あ、我輩やそのモフが殺した召喚モンスターは完全消滅して二度と呼べないから」
「はぁ!? ふざけるな!」
こいつはまだ何度でもエリートハウンドを召喚するつもりだった。自分自身はここで死なないと思っている。
愚かだなぁ。未来を予測することもできない哀れな奴だ。
「とことん付き合ってやるよ。さっさと次を召喚しろ」
「絶対に後悔させてやる! 召喚、暗黒騎士EX!」
暗黒騎士EXのEXはエクストラのことで、暗黒騎士の最上級亜種だ。
この世界特有の赤銅色の超硬金属から成る鎧のモンスター。大きな剣と盾を使いこなす。
EXは物理攻撃力、物理防御力、魔法防御力が非常に高いとされ、補助的に魔法も使うので、モンスターと戦う職種の者たちからは例外なく忌避されている。
「こいつもモフで十分だ」
「ぷぅぷぅ!」
今度はモフが先に相手に飛びかかった。
暗黒騎士EXが高速で振り回す大剣をことごとく潜り抜け、大盾を構えるより先に懐に潜り込み、鎧と兜の小さな隙間に柔軟な体で入り込んだ。
暗黒騎士EXは膝を折り、ガシャンと床に倒れた。
手から離れた大剣と大盾が床を滑った。
「なにぃ!? そんな馬鹿な!」
「モフは内部の核を破壊しただけだ。驚く要素はない」
焦燥感に急かされた召喚士は、もはやそれ以上の無駄口を叩かず次を召喚する。
「召喚、ブレイブゴブリン・ユニーク」
次に召喚されたモンスターは黄金の鎧と剣を持ったゴブリンだった。
これまたゴブリンの最上級種で、その中でも世界に一匹しかいない特殊個体。勇者並みの戦闘力に加え、賢者並みの知能を有する。
「モフ」
「ぷぅ!」
ブレイブゴブリンはモフの強さを見抜き、警戒している。剣を構えたままモフがどう動くか様子をうかがっている。
「ぷぅううっ!」
モフは体毛を部屋中に撒き散らした。その白い毛はブレイブゴブリンへと集まっていく。
全方位から隙間なく迫る無数の毛はかわすことも防ぐこともできない。
ブレイブゴブリンに貼り付いた白い毛が赤熱し、金の鎧ごとゴブリンの体を熱で溶かした。
「はい、次どうぞ」
「召喚、スライムSSULR!」
SSULRはスーパースペシャルウルトラレジェンドレアを指す。
要するに超強力なスライムということだ。
その姿は液体のような流動性を持ったダイヤモンドという感じで、キラキラと光を拡散させる透明な体をしていながらウネウネと自在に形を変形させる。
「モフ、もういいぞ」
ここからはいまのモフでも敵わないので、我輩が直接手を下すことにする。
もちろん、モフをもっと強化することもできるのだが、我輩が飽きてきたのだ。
我輩が人差し指を向けると、スライムSSULRはパンッと弾け飛んで消滅した。
「な!」
「いいから、次! はよ!」
「召喚、アークデーモン・D」
アークデーモン・DのDはdemiseの頭文字で終焉を表す。
黒いシルクハットにタキシード、そしてモノクルを身に着けたキザな青年の姿をしている。
そいつが出てきた瞬間、我輩の指先がそいつを消し飛ばした。悪魔種最強の存在だったが関係ない。
「はい、次。さっさとして」
「くそっ、いまのより強いのといえばドラゴン・エンペラーしかいない。だがここでは大きすぎて召喚できない」
我輩がパチンと指を鳴らす。
「はい、その竜皇さんはいま死んだよ。消滅して二度と召喚できない。ほかには?」
「くそっ! これ以上強い奴なんていないよ。こうなったらヤケクソだ!」
召喚士が最後に召喚したのは転生女神だった。我輩を転生させた女神である。
白い一枚布を体に巻き付けた姿で神聖さを醸し出し、腰まで伸ばしたウェーブの淡いブロンドヘアーで清楚さを漂わせている。
女神は我輩を見て苦笑した。
もちろん、我輩が女神への当てつけで国々を滅ぼしていることを彼女は知っている。
「おまえさぁ、どんなテンションでこんな奴の使いっぱしりになってんの? まあ訊かなくても知ってるけどな。おまえは帰れ。ひたすら我輩が葬るための勇者を転生させ続けてろ」
我輩が指パッチンで女神を元の場所に戻した。
彼女はもう二度と転生者には召喚されない。もちろん、我輩を除いてだが。
「さて、これでおまえの召喚は尽きたな」
「殺せ。僕を殺せ。もう僕には打つ手はない」
ようやく自分の状況を理解できたようだが、残念ながら立場はまだ分かっていない。
我輩はO国の某施設の便所スリッパを召喚して、それで召喚士の頭をパーンと叩いた。
もちろん、我輩が直接触ったわけではなく念動力で操作したのだ。
「うぐっ! は?」
「殺せ、じゃねーよ。殺してくださいお願いします、だろーが」
我輩が念動力で召喚士の全身を雑巾のように絞り上げる。
「あいだだだだだ! お、お願いします、殺してぐだざいッ!」
「はぁ。結局、おまえ自身は向かってこねーの? さんざん他人にはやらせたくせに。ああ、おまえ、最弱だったな。文句言ってごめんなぁ。本当に最弱だったのに、その事実を蔑ろにしてごめんなぁ。死ね!」
召喚士は召喚されたモンスターたちと同じように弾け飛んで消えた。
そして仕上げに、召喚士の出身国であるO国に、国の形をした高さ二十キロメートルの黒い塊たるモノリスを落とした。
白いカッターシャツに黒のスラックスの男。
カッターシャツの胸元を開けているので、粋がった新人営業マンのような印象を受ける。
こいつは召喚士。女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《何でも召喚できる召喚士》になった。
文字通り自由自在に何でも召喚できるから、召喚士のランクとしてはSSS級とされている。
本来、召喚士のランクは最高がS級なのだが、こいつの出現によってS級より上に最高ランクが増設された。
ちなみにSS級はまだ誰もいない。
「子供……? 数々の勇者を亡き者にしてきた極悪人はおまえなのか?」
「そうだけど、おまえは何しにきたの? ここは雑魚が足を踏み入れていい場所じゃないんだけど」
召喚士はムッとした。
「そうか……。僕は雑魚か……」
「いやいやいや! なに不服そうにしてんの? おまえいつも自分のことを最弱だって言ってんじゃん。嘘つきなの? それとも謙虚のフリした厭味なの?」
こいつは普段、自分自身には戦闘能力がないから最弱を自称している。
まったく、白々しい! 召喚込みだと強い自信があるくせに。
「本当に強い人はあまり強い言葉を使わないものだ。おまえの程度が知れる」
「いやいやいや! それはおまえの固定観念だから。強者とて性格は十人十色。さっきは皮肉で質問したけど、我輩は知ってんだぞ。最初に弱いフリをして、召喚したときに実は強者でしたってやることで、周囲の羨望をより高める魂胆。それはただ承認欲求が強いだけだからな。おまえの言う『本当に強い人はあまり強い言葉を使わない』とはぜんぜん違うぞ」
「……非常に不快だ。おまえには早めに退場してもらう。召喚、エリートハウンド!」
返す言葉がなくなった召喚士は、ついに実力行使に出た。
召喚士が最初に召喚したのはエリートハウンド。
灰色の体毛を持つ狼型モンスターであるハウンドの上位種で、通常のハウンドに比べて力も速さも十倍はある。
「じゃあモンスターにはモンスターで対抗するか。モフ、行ってこい」
「ぷぅぷぅ!」
我輩のふかふかペットのモフが、我輩の膝上からピョンと前に飛び出した。
うむ、白くて小さい姿が愛らしくて上品だ。
「ワオォォォオオオンッ!」
エリートハウンドが渾身の咆哮を放った。これは音圧で相手の感覚を麻痺させる技だ。
しかし我輩のモフには通じない。ふさふさの白毛が音圧を減衰させてモフの感覚を守っている。
モフは大口を開くエリートハウンドの口の中へと飛び込んだ。
咆哮が止まると、モフは全身の毛を硬化させ、ウニのように逆立てて伸ばした。
エリートハウンドの頭部は内側から無数の針によって串刺しになり、エリートハウンドは光の粒子となって消滅した。
「あ、我輩やそのモフが殺した召喚モンスターは完全消滅して二度と呼べないから」
「はぁ!? ふざけるな!」
こいつはまだ何度でもエリートハウンドを召喚するつもりだった。自分自身はここで死なないと思っている。
愚かだなぁ。未来を予測することもできない哀れな奴だ。
「とことん付き合ってやるよ。さっさと次を召喚しろ」
「絶対に後悔させてやる! 召喚、暗黒騎士EX!」
暗黒騎士EXのEXはエクストラのことで、暗黒騎士の最上級亜種だ。
この世界特有の赤銅色の超硬金属から成る鎧のモンスター。大きな剣と盾を使いこなす。
EXは物理攻撃力、物理防御力、魔法防御力が非常に高いとされ、補助的に魔法も使うので、モンスターと戦う職種の者たちからは例外なく忌避されている。
「こいつもモフで十分だ」
「ぷぅぷぅ!」
今度はモフが先に相手に飛びかかった。
暗黒騎士EXが高速で振り回す大剣をことごとく潜り抜け、大盾を構えるより先に懐に潜り込み、鎧と兜の小さな隙間に柔軟な体で入り込んだ。
暗黒騎士EXは膝を折り、ガシャンと床に倒れた。
手から離れた大剣と大盾が床を滑った。
「なにぃ!? そんな馬鹿な!」
「モフは内部の核を破壊しただけだ。驚く要素はない」
焦燥感に急かされた召喚士は、もはやそれ以上の無駄口を叩かず次を召喚する。
「召喚、ブレイブゴブリン・ユニーク」
次に召喚されたモンスターは黄金の鎧と剣を持ったゴブリンだった。
これまたゴブリンの最上級種で、その中でも世界に一匹しかいない特殊個体。勇者並みの戦闘力に加え、賢者並みの知能を有する。
「モフ」
「ぷぅ!」
ブレイブゴブリンはモフの強さを見抜き、警戒している。剣を構えたままモフがどう動くか様子をうかがっている。
「ぷぅううっ!」
モフは体毛を部屋中に撒き散らした。その白い毛はブレイブゴブリンへと集まっていく。
全方位から隙間なく迫る無数の毛はかわすことも防ぐこともできない。
ブレイブゴブリンに貼り付いた白い毛が赤熱し、金の鎧ごとゴブリンの体を熱で溶かした。
「はい、次どうぞ」
「召喚、スライムSSULR!」
SSULRはスーパースペシャルウルトラレジェンドレアを指す。
要するに超強力なスライムということだ。
その姿は液体のような流動性を持ったダイヤモンドという感じで、キラキラと光を拡散させる透明な体をしていながらウネウネと自在に形を変形させる。
「モフ、もういいぞ」
ここからはいまのモフでも敵わないので、我輩が直接手を下すことにする。
もちろん、モフをもっと強化することもできるのだが、我輩が飽きてきたのだ。
我輩が人差し指を向けると、スライムSSULRはパンッと弾け飛んで消滅した。
「な!」
「いいから、次! はよ!」
「召喚、アークデーモン・D」
アークデーモン・DのDはdemiseの頭文字で終焉を表す。
黒いシルクハットにタキシード、そしてモノクルを身に着けたキザな青年の姿をしている。
そいつが出てきた瞬間、我輩の指先がそいつを消し飛ばした。悪魔種最強の存在だったが関係ない。
「はい、次。さっさとして」
「くそっ、いまのより強いのといえばドラゴン・エンペラーしかいない。だがここでは大きすぎて召喚できない」
我輩がパチンと指を鳴らす。
「はい、その竜皇さんはいま死んだよ。消滅して二度と召喚できない。ほかには?」
「くそっ! これ以上強い奴なんていないよ。こうなったらヤケクソだ!」
召喚士が最後に召喚したのは転生女神だった。我輩を転生させた女神である。
白い一枚布を体に巻き付けた姿で神聖さを醸し出し、腰まで伸ばしたウェーブの淡いブロンドヘアーで清楚さを漂わせている。
女神は我輩を見て苦笑した。
もちろん、我輩が女神への当てつけで国々を滅ぼしていることを彼女は知っている。
「おまえさぁ、どんなテンションでこんな奴の使いっぱしりになってんの? まあ訊かなくても知ってるけどな。おまえは帰れ。ひたすら我輩が葬るための勇者を転生させ続けてろ」
我輩が指パッチンで女神を元の場所に戻した。
彼女はもう二度と転生者には召喚されない。もちろん、我輩を除いてだが。
「さて、これでおまえの召喚は尽きたな」
「殺せ。僕を殺せ。もう僕には打つ手はない」
ようやく自分の状況を理解できたようだが、残念ながら立場はまだ分かっていない。
我輩はO国の某施設の便所スリッパを召喚して、それで召喚士の頭をパーンと叩いた。
もちろん、我輩が直接触ったわけではなく念動力で操作したのだ。
「うぐっ! は?」
「殺せ、じゃねーよ。殺してくださいお願いします、だろーが」
我輩が念動力で召喚士の全身を雑巾のように絞り上げる。
「あいだだだだだ! お、お願いします、殺してぐだざいッ!」
「はぁ。結局、おまえ自身は向かってこねーの? さんざん他人にはやらせたくせに。ああ、おまえ、最弱だったな。文句言ってごめんなぁ。本当に最弱だったのに、その事実を蔑ろにしてごめんなぁ。死ね!」
召喚士は召喚されたモンスターたちと同じように弾け飛んで消えた。
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