上 下
15 / 56
Chapter 2 ある転生者の場合

2.5 Transformation

しおりを挟む
 気がつくと、もともと調査していたダンジョンに戻ってきていた。

 みんなの状態を確認するためにギルドカードでクエスト状況をみると、パーティメンバーが僕ひとりとなっている。

 召喚したレオ君は別として、お嬢様達が検出されていないということは、僕と似たような超階にいる可能性が高い。

 そのうち戻ってくると思うので、僕は準結晶Quasicrystalの採掘をしていようと思う。

Caution注意Mind Inserting精神介入
Blocked防御

 そんな折、視界の端にアラートが出た。

 これは術理院会員が良く使う緊急回避システムで、何らかの魔力的な介入を受けた際に表示されるようにしているものだ。

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

【Caution: Mind Inserting】
【Blocked】

「うわ、何だなんだ」

 相当な回数の介入があるらしく、視界に高速でメッセージが流れていく。
 僕はバッグから魔力板を取り出して操作し、警告の詳細を画面に出力した。

「この魔力応答は、会話魔法かな」

 検出した魔力を変換した信号からそう解釈した。

 会話魔法は例えば、精神に直接語りかけるコミュニケーションが該当がいとうする。

 この手の魔法の代表的な作用機構は、送りたいメッセージを、自分の頭の中から相手の頭の中に移す変換Transformationだ。
 
自分の頭の中
 ⇅
相手の頭の中

 こういった精神に直接介入する魔法は、洗脳に発展する恐れがあるので、僕は基本的に受け付けないようにしている。

 恐らく土精霊ノームが話しかけようとしているだけだと思うけれど、もしも僕が何らかの影響を受けて召喚魔法を無制限に使い始めたりすれば、取り返しがつかない。

 とりあえず同じ警告は視界に表示しないように設定し、無視して採掘に回ることにした。

 鉱石を回収していると、戻ってきたお嬢様とメイドさんの声が聞こえてきた。

「一度も迷わず攻略とはさすが、さすがですお嬢様ですぅ!」

「はいはいありがと。それより、向こうから何か聞こえるのは…」

 道具をまとめてから出迎えに行く。

「大丈夫でしたか?」

「!?」

「ヤバですぅ! 逃げましょお嬢様」

 僕を見るなり後ずさるお嬢様。メイドさんは糸目を一瞬見開いてからお嬢様を背後に隠した。

 まるで街中でモンスターに出会ったような反応だ。

「どうかしましたか?」

「いやいやいや、え? 埋まってるの?」

「? ええ、埋まっている鉱物を採掘していたんですよ」

「埋まってるのは店主でしたとさ。泣いてる精霊の山の中」

「あー、それでか」

 魔力介入はやはり土精霊ノームからだったらしい。
 術理院会員の僕に伝えたいことでもあったのだろうか。

「僕は精霊を知覚できないんです。土精霊ノーム達は僕に引っ付いて何て言っているんですか?」

「何でか土精霊ノームだけじゃないし…。色んな属性の精霊が、お願い、逃げて、お願い、危ない、逃げてって、泣きながら」

「やっぱヤバですよぉ!」

 通常のフロアにそこまでの脅威が出現するのは考えにくい。けれども、ここは通常のダンジョンとは少し異なる準ダンジョン。
 領主様のご息女に何かあった場合、僕には責任が取れない。

 撤退てったいするべきだ。

「では、街に帰りましょうか。レオ君は後で僕が迎えておきます」










 帰路を進む僕達のパーティには緊張感がただよっていた。

「変だわ、絶対に変…!」

「壁の配置が行きと違いますね。生物の気配もない」

「薄暗い迷路ですな。にしても、精霊達の慌てん坊っぷりが実に激しきで心配ですー…」

「わわ、歩くから引っ張らないで、ね?」

 様相を変えたダンジョンを進んでいく。
 僕には知覚できない精霊が極めてあせっているらしく、先導するお嬢様をさらに手を引いて急かしているようだ。

「急がないと来るって、何が来るの? え、ダンジョンに、異変?」

⌈ ⌋ ⌈ ⌋ ⌈ ⌋

⌈ ⌋ ⌈ ⌋ ⌈ ⌋ ⌈ ⌋

⌈ ⌋

⌈ ⌋ ⌈ ⌋ ⌈ ⌋ 

⌈ ⌋ ⌈ ⌋

「お、落ち着いて。ひとりずつね」

⌈ ⌋

⌈ ⌋

「お嬢様、あ、あ、あれ、あれ、あ」

 青ざめたメイドさんが十字路で後ろを指差す。
 僕は暗がりに目をらした。








ErrorエラーUnknown特定不能



























【Erŗor: Unќnow̵n】






























【Ĕrͬr̴or: U̶ѝ̸knͦø̶ѡn】































【ľ̸̸̶̳͡͝⁅ŗ̤̼́͢͜ō̸̫̉Ŧ̸̸̀̓ͦ̆̉͆͂͌͡͠ Ư̶̈̌ࣟ̅͜n𐨎𐨍𐨁】




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

処理中です...