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大好きな蒼葉あおばへ。

今日はとっても体調がいいの。
なんでか知ってる?

今年も無事に、あなたと初詣はつもうでに行けたからよ。
とっても楽しかったし、一時退院なのにあなたがとっても喜んでくれたから、
私、とっても嬉しくて、あれからなんだか調子が良いの。

毎年恒例にしていたおみくじは引けなかったけど、
あなたが、車椅子くるまいすごと私をかつごうとしてくれたり、
私の分も取りに行くんだ!って言って走り出したと思ったら、
「やっぱりこんな寒いところに君1人置いて行けない」って涙目になりながら、
息を切らせて戻って来てくれて、私、もうそれだけで幸せになっちゃって。
おみくじはもう要らないって思ったの。

それに、私が歩けないせいであなたが困ったり、悲しい思いをさせたくなかった。
何より、おみくじなんて無くたって、私絶対大吉だなって思っちゃった。

こんなに一生懸命想ってくれる人が傍に居て、
こんなに一生懸命守ってくれる人が居るのに、
これ以上何かを望むなんて、ばちが当たっちゃう。

あなたは未だに「あの時僕が」って言うけど、私にはこれで充分なの。
あなたの愛が嬉しくて、実はこそっと泣いちゃったけど、
嬉しくて泣いたなんてことがバレたら、またあなたにからかわれちゃう。
だからこれは、私が居なくなるまでは秘密にするの。

あの日から、あなたは一生懸命「次の初詣こそ」って約束してくれるけど、
私はそれも嬉しい。

未来の約束が、こんなに嬉しくて、こんなに愛しくて、こんなに大切なものなんだって
あなたが私に教えてくれた。
だからあなたにも、その気持ちを知ってもらいたい。

あなたがくれたあなたからの約束は「来年の初詣はおみくじを引く」
私があなたにあげる約束は「私に縛られずに幸せになること」

意味は、解るでしょう?
これだけあなたの幸せを願っているのに、私のせいであなたが不幸になったら、
まるで私が地縛霊じばくれいみたいになっちゃうじゃない。

そんなの嫌よ。
絶対、嫌。

私は……そうねぇ……
あなたを守る守護霊とか天使とか妖精が良いわ。
私の笑顔は可愛いでしょう?
なんてね。

あなたの笑顔も、あなたの幸せも、全部全部守りたいの。
邪魔する人が居たら、それこそ私が幽霊にでもなって、
その人たちを脅しに行くわ。

私にできることなんてとってもわずかで、願う事くらいしか出来ない。
だから、それくらいは任せてちょうだい。
これは、私にしか出来ない、私だけに許された特権なんだから。
私は本気だからね。

蒼葉。愛してるわ。
これからも輝いてね。

それから、いつも笑っていて。
あなたの笑顔は、どんなものよりときめくんだから。
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