心の傷は残り続ける

濃霧

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4地雷と盗聴器

発見

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 飯村と一緒に教室に戻ると、教室にはさっきトイレにいった柿本さんと湖さんがいた。柿本さんは湖さんと教室の後ろの方で仲良く喋っていた。それを見て、自分は一安心した。ただ柿本さんに視線を向ける勇気はなく、なんとなく彼女が湖さんと仲良く喋っていそうという想像と聴覚をもとにした情報である。
 視線を後ろの方に向けられないため、自然と視線は教室の前の方に向く。教卓の前に立っていた外山が飯村の方に近づいてくるのが見えた。
 「おい、飯村行くぞ」
 外山が飯村の左腕を掴んだ。飯村は急に左腕を掴まれて不意を突かれたようだ。
 「行くってどこ?」
「何をとぼけてるんだ。校門見に行くんだよ。だから、玉井。教室をよろしくな」
 自分が「ああ」と答えるが恐らく外山の耳にはその声は届いていないだろう。外山は飯村の左腕を引っ張って半ば強引に飯村を連れ去った。そういえば、何十分かの間隔で飯村と外山が校門を見に行くとか外山が言っていた。校門を見に行ったとしても何も変わらないとは思っているが、別に自分が口をはさむ必要はないと思い、外山の行動を黙認している。
 飯村と外山を見送った後、自分は何をすればいいんだろうと少し悩んだ。教室にいるのは女子しかいないし、なにか暇をつぶせそうな本とかも持っていない。何かないかなと考えつつ教室をブラブラと歩いていると、教室にある変なものが目についた。目につかなければ、おそらく一生気付かなかったであろう。ゆえに、これは奇跡の発見ともいえる。
 教室にあるコンセント。そのコンセントに差さっているプラグ。通常ならば、特に何ら違和感のない光景なのだが、そのプラグが先端部分しかなくコードで繋がれていない。つまり、そのプラグの存在意義がないのだ。古い学校ならば、存在価値が皆無のプラグがあってもおかしくないだろうが、そこまで古い学校でもないし、何よりそのようなプラグがあれば絶対誰かが今までの学校生活内において気付いているはずだ。
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