心の傷は残り続ける

濃霧

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2 閉ざされた私たちと違和感

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 一応、自分が職員室に行ったあのときに担任の荷物は職員室に置いていなかったことを確認したという情報を彼らに伝えたのち、二手に分かれて色々探してみようということになった。その流れを作ったのは明らかに外山であり、完全に外山が学級委員であるかのごとくリーダーとなって動いてくれた。その動き自体は非常にありがたく感じた。自分としてはただ彼に縋っているだけで十分であるし、別に彼は特別頑固というわけではないから、仮に彼の行動がどこか外れていたとしても、自分たちの意見を素直に聞き入れてくれる柔軟性を持っている故、彼に自分たちの行動のすべてを任せても懸念や問題はなかった。
 二手に分かれるということは、四人と四人に分かれるということだが、念のため女子だけのグループにならないように、外山・柿本・能勢・小沼の四人と、自分・飯村・湖・荻原の四人グループにそれぞれ分かれることになった。もちろんのこと、二手に分かれる理由としては効率性と安全性の二兎を求めた故である。ただ、二兎を追う者は一兎をも得ずということわざがあるように、この策というのはあまり有効なものではなかったかのように後々感じざるを得なかった。
 教室を出てすぐの廊下を左に曲がっていったのは外山のグループ。一方、右に曲がっていったのは自分たちのグループだった。
 さて、ここで荻原さんについて軽く紹介しておこう。荻原さんは普段無口で静かな人なのだが、自分の意見をちゃんと持っていて、言うときには言うタイプの人だ。そのせいか周りから毒舌と言われることもあるが、特に彼女は気にしていない様子である。彼女自身、周りの人とおしゃべりするというタイプではないため、自分と会話をしたことなどほぼない。
 そんな荻原さんと一緒の少人数グループになったのは、あの物理の授業のとき以来だったように思える。そう思い出していると、自分はある奇妙な事実を見つけてしまい、少し寒気がした。
 そういえば、ここにいた八人は全員先週の授業で物理選択をしていた人だった。同じクラスでも物理・化学・地学・生物にそれぞれ分かれるのだが、そのときに物理授業を受けたのがこの八人。そこで、授業において荻原真実さんと会話を少しだけ交わした。
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