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1 突然の涙
会話
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太陽の光がカーテンで遮られている教室の中。カーテンから漏れたわずかな光が自分の机の上を線状に照らしてくれた。僕がその机に座ると、いつものように柿本さんが「おはよう」と挨拶してくれた。朝のやるせない気持ちを晴らしてくれる天使の声である。
自分もごく自然な形で挨拶を交わした後、すぐに柿本さんにたずねた。
「ねえ、柿本さん。どうして今日ここに来たの?」
柿本さんは少し驚いた様子を見せた後、答えた。何か少し言い逃れをしているかのような感じに聞こえた。ただ、言葉がすぐに出てこなかっただけなのかもしれない。
「あ、なんか呼ばれたのよ。先生に。もしかして、玉井君もそう?」
聞き返されることは想定していたため、自分は即座にうなずいた。
「あ、じゃあやっぱそうなんだ」
柿本さんがそう呟いた。ただ、自分からみて柿本さんがなぜ納得しているのか分からなかったため柿本さんに聞き出した。
「やっぱってどういうこと?」
「あ、ここにいるほかの子みんなも先生に呼び出されたとか言っていたからさ、なんか今日先生となんかやるのかな?」
柿本さんがにっこりと笑顔を見せながらこちらをうかがった。こんな休日に学校に登校しても、笑顔を普段と変わらず保てている彼女は凄いなと感じた。ただ、柿本さんはどちらかというと楽観思考だから、何かパーティーでもやるのではないかと思っているのかもしれない。そうであるかどうかはともかく、柿本さんの期待(この場合、あくまで自分から見た彼女の期待を推測したにすぎないが。) が当たっているかは今の自分にはわからないので、特に具体的な返答というのはできなかった。
それにしても、普段の教室とは違ってなんだかソワソワする。普段とは違う違和感のせいなのだろうか。普段は三十人以上いるクラスが数人しかおらずまばらなのもあるだろう。また、普段は八時半登校だが、今日はそれの一時間遅れ、午前の九時半登校というのもあるだろう。ただ、それ以上に何か張り詰めた冷たい空気が教室を漂っている。そんな気がした。
今日学校に来た生徒は自分と外山で最後だった。これ以上の生徒が来ることはなく、柿本さんの期待が完全に外れたことが証明された。
しかし、生徒が来ないのはともかくとして担任が来ないというのはおかしい。呼び出した主が姿を現さないというのは、どこかの推理小説で見たような既視感があるのだが、ただまだそんな感じがするくらいで別に気味悪さは感じなかった。
柿本さんは自分の席を動くことなく、自分と会話をし続けた。別にたわいもない会話であったため、その会話の内容までは覚えていない。
あたりを見回してみると、いるのは外山、柿本さん、能勢さん、飯村、荻原さん、湖さん、小沼さんの七人。自分を含めるとわずか八人しかいない。
湖さんと小沼さんは廊下で話しをしていた。能勢さんは自分の席ではなく、一番後ろの席で読書をしている。荻原さんはなぜかぼーっと窓の外を眺めていた。また、飯村は自分の席でスマホをいじっており、外山はスマホを持ってゲームをしているようにみえた。
真面目な内容で先生から呼び出されたと思い込んでいたため、スマホはさすがに持ってきてはだめだと思い家に置いてきたのだが、まさかほかの男子がみんなスマホを持ってきているとは思わなかった。自分も持って来ればよかったと後悔はしたが、仕方ない。と思うしかなかった。
それにしても、担任が全く来ない。柿本さんとたわいもない話をしている間も、頭の隅っこに「いつになったら先生が来るんだ」という悶々とした思いが残っていた。話のキリが少し見えてきたところで柿本さんに声をかけた。
「担任の姿が見えないから、ちょっと職員室に行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
柿本さんは笑顔を絶やさぬまま、自分が職員室に行くのを見届けた。
自分もごく自然な形で挨拶を交わした後、すぐに柿本さんにたずねた。
「ねえ、柿本さん。どうして今日ここに来たの?」
柿本さんは少し驚いた様子を見せた後、答えた。何か少し言い逃れをしているかのような感じに聞こえた。ただ、言葉がすぐに出てこなかっただけなのかもしれない。
「あ、なんか呼ばれたのよ。先生に。もしかして、玉井君もそう?」
聞き返されることは想定していたため、自分は即座にうなずいた。
「あ、じゃあやっぱそうなんだ」
柿本さんがそう呟いた。ただ、自分からみて柿本さんがなぜ納得しているのか分からなかったため柿本さんに聞き出した。
「やっぱってどういうこと?」
「あ、ここにいるほかの子みんなも先生に呼び出されたとか言っていたからさ、なんか今日先生となんかやるのかな?」
柿本さんがにっこりと笑顔を見せながらこちらをうかがった。こんな休日に学校に登校しても、笑顔を普段と変わらず保てている彼女は凄いなと感じた。ただ、柿本さんはどちらかというと楽観思考だから、何かパーティーでもやるのではないかと思っているのかもしれない。そうであるかどうかはともかく、柿本さんの期待(この場合、あくまで自分から見た彼女の期待を推測したにすぎないが。) が当たっているかは今の自分にはわからないので、特に具体的な返答というのはできなかった。
それにしても、普段の教室とは違ってなんだかソワソワする。普段とは違う違和感のせいなのだろうか。普段は三十人以上いるクラスが数人しかおらずまばらなのもあるだろう。また、普段は八時半登校だが、今日はそれの一時間遅れ、午前の九時半登校というのもあるだろう。ただ、それ以上に何か張り詰めた冷たい空気が教室を漂っている。そんな気がした。
今日学校に来た生徒は自分と外山で最後だった。これ以上の生徒が来ることはなく、柿本さんの期待が完全に外れたことが証明された。
しかし、生徒が来ないのはともかくとして担任が来ないというのはおかしい。呼び出した主が姿を現さないというのは、どこかの推理小説で見たような既視感があるのだが、ただまだそんな感じがするくらいで別に気味悪さは感じなかった。
柿本さんは自分の席を動くことなく、自分と会話をし続けた。別にたわいもない会話であったため、その会話の内容までは覚えていない。
あたりを見回してみると、いるのは外山、柿本さん、能勢さん、飯村、荻原さん、湖さん、小沼さんの七人。自分を含めるとわずか八人しかいない。
湖さんと小沼さんは廊下で話しをしていた。能勢さんは自分の席ではなく、一番後ろの席で読書をしている。荻原さんはなぜかぼーっと窓の外を眺めていた。また、飯村は自分の席でスマホをいじっており、外山はスマホを持ってゲームをしているようにみえた。
真面目な内容で先生から呼び出されたと思い込んでいたため、スマホはさすがに持ってきてはだめだと思い家に置いてきたのだが、まさかほかの男子がみんなスマホを持ってきているとは思わなかった。自分も持って来ればよかったと後悔はしたが、仕方ない。と思うしかなかった。
それにしても、担任が全く来ない。柿本さんとたわいもない話をしている間も、頭の隅っこに「いつになったら先生が来るんだ」という悶々とした思いが残っていた。話のキリが少し見えてきたところで柿本さんに声をかけた。
「担任の姿が見えないから、ちょっと職員室に行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
柿本さんは笑顔を絶やさぬまま、自分が職員室に行くのを見届けた。
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