勇者断罪物語

ちば防蟲

文字の大きさ
上 下
16 / 17

#16 3話 「三人の他人家族」Part1

しおりを挟む
ハギが取り乱したことで、会議はいったん終了ということになり、クラウス博士はモナ・リザの地下から自分の研究室に戻り、ソウは同じ東地区で、組織が借りている賃貸へと帰った。

モナ・リザに残ったサイト、ハギ、サクラは、ハギが落ち着いてから、店を出た。


今の季節は冬。日が落ちてから時間が経っている為、非常に寒い。三人はお揃いで買ったトレンチコートを着込み、街頭に沿って家族の家へと足を進めた。


「さぁ、早く帰って温まろう。なぁ?ハギ」と右横を弱弱しい足取りで歩くハギに右腕を伸ばし、抱き寄せた。よろけた体がサイトに寄りかかってくるが、これを受け止め歩み続ける。こういう時にサクラは「私も~~」と、いつもなら割り込んでいくが、今回は見送ることにした。


雪が降っていてもおかしくない気温の中、人通りが少なくなった夜道を三人が歩む。傍から見たら、黒いトレンチコートの男が美女二人を侍らせている光景と誤解されてもおかしくはない。

しかも、青白髪の美女の肩を、抱き寄せて歩いている姿は、なんと!羨ましいな!とすれ違う男の嫉妬心を刺激するだろう。


だが、この三人の関係性は家族である。いや、家族と生半可に表現していいのか?疑問符が浮かんでしまうほど、複雑で強固な絆が築かれていた。







我が家に着いた。2F建ての鉄と木材の建物の前まで来た三人のうち、サクラが扉横に設置された鉄板に手のひらで触れた。暫くすると、手のひらの下で鉄板が光を発し、扉からガチャっと解錠音が聞こえた。

サクラが扉を開き、三人は家中へと入っていく。三人は我が家に戻ったのだ。


「カイル。風呂を沸かしてくれ」とサイトが靴を脱ぎながら、一言呟いた。誰かに話かけているようだが、この家には三人以外に誰もいないのだから、おかしな行動だ。・・・・と初めて訪れた人からは思われてしまうだろう。この返しがなければ。


「承知しました。主様」と家中のどこからか分からないが、サイトの呼びかけに対して返事が戻ってきた。そして、風呂場の方から魔法の起動音が聞こえ、「残り1時間です」と報告が家中に響いた。


このシステム(システムと口に出すとへそを曲げてしまう)は、一般宅に無いものだ。仕組みは簡単で、この家の管理に精霊を起用しているだけである。精霊といっても様々な種類がいるが、その中でも会話が可能なほどに、自我が発達した守護精霊を雇っている。


雇い主はサイトとなっているが、家族であるハギ、サクラも指示は可能だ。代価は一定の魔力提供であり、基本月末払いと契約とし、守らないと精霊界のブラックリストに載ってしまう為、注意が必要だ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

なろう370000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす

大森天呑
ファンタジー
〜 報酬は未定・リスクは不明? のんきな雇われ勇者は旅の日々を送る 〜 魔獣や魔物を討伐する専門のハンター『破邪』として遍歴修行の旅を続けていた青年、ライノ・クライスは、ある日ふたりの大精霊と出会った。 大精霊は、この世界を支える力の源泉であり、止まること無く世界を巡り続けている『魔力の奔流』が徐々に乱れつつあることを彼に教え、同時に、そのバランスを補正すべく『勇者』の役割を請け負うよう求める。 それも破邪の役目の延長と考え、気軽に『勇者の仕事』を引き受けたライノは、エルフの少女として顕現した大精霊の一人と共に魔力の乱れの原因を辿って旅を続けていくうちに、そこに思いも寄らぬ背景が潜んでいることに気づく・・・ ひょんなことから勇者になった青年の、ちょっと冒険っぽい旅の日々。 < 小説家になろう・カクヨム・エブリスタでも同名義、同タイトルで連載中です >

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...