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 それから、椎名は店に顔を出さなくなった。当然だと思う。椎名程金も地位もあるプライドの高そうなαなら、俺なんかにあれだけコケにされたらもう怒って店には顔を出さないだろう。きっと今頃、自分に従順で綺麗で可愛いΩを侍らせて、俺のことなんてすっかり忘れてしまっているに違いない。
 身の危機が去ってホッとしたけれど、それと同じくらいこの別れを残念に思う自分もいる。だって、五十嵐以外に今までの人生で、あんなに気の合う相手は初めてだったんだ。話してて楽しいし、趣味も合うし……。
でも、結局は椎名は俺がΩだってことを嗅ぎ付けて、そっちの方に興味を示してしまった。椎名は『オーちゃん』としての俺より『Ω』としての俺を求めたんだ。俺がΩでなかったら、椎名との関係が壊れることもなかったろうに。本当、バース性ってクソだ。
 椎名が来なくなったことについて、ママは何も言わない。常連さん1人駄目にしちゃってごめんなさい、と謝ったけれど『そういうこともあるわよ。いっぱい働いて返してくれたらいいわ』と笑って返された。ママは本当に優しくていい人だ。Ωの俺を働かせてくれている事といい、足を向けて寝られない。
 そうして、椎名が店に来なくなって暫く経った。季節は変わり、冬も終わりがけ。もう直ぐ春だ。俺はその時、五十嵐のことを考えながら家路を急いでいた。五十嵐からの連絡はまだ来ない。最後に声を聞いてから、どれくらい経つだろう。ちゃんと寝られているだろうか? 食事もしっかり摂れてるといいな。初詣、『五十嵐がなるだけ早く無事に帰って来ますように』ってお願いしたけど、あの神社には悪いがあんまり効果がある気がしない。そもそも俺、あんまり神様信じてないしね。あー、心配だ。
 そんなことを考えながら歩いていると、いつかのコンビニ前に差し掛かる。あ、このコンビニ。椎名と初めてで会ったところだ。あの時の俺、鼻血垂らしてマジダサかったよな。あんまりにもときめかない出会いで、今にして思うと笑える。
 椎名も、今何してるんだろう。まあ、椎名の事だ。どうせ毎日面白おかしく楽しく暮らしているんだろう。今の俺には関係ないね。さあ、早く帰って今日はもう寝よう。明日は仕事はないけれど、溜まった家事をやっつけたい。
 そうしてコンビニの前を通り過ぎ、足を早めようとすると、目の前に1つの影が立ち塞がった。何かと思って目線を上げて、そこに立つ人物に俺は驚きで目を見開く。
「よう、久しぶり」
「椎名……」
 いつもは遊びやすそうな少しラフな格好なのに、何故か今日は柄物の黒っぽいスーツに黒くてとんがった革靴。髪もワックスでキメキメ。ホストかよ。相変わらず趣味の悪い格好だ。胸ポケットに真っ赤な薔薇まで差して。本当にファッションセンスないなこいつ。
「織部。あー、その。元気にしてたか?」
「まあ、それなりに。何? なんか用?」
 やべ、ちょっとつっけんどんだったかな? もう少し柔らかい言い方あったのに。いやいや、なに好感度気にしてんのさ自分。別にそんなこと気にすることないだろ。平常心、平常心。椎名の方は俺の態度を気にした素振りもなく、指で少し頬を掻いて言葉を続けた。
「ほら、なんというか、あれだ……。お前が前言ってたこと、実践しに来た」
「俺が前言ってたこと?」
 訳が分からない、とオウム返しに言葉を呟いた俺に、椎名はちょっとムッとした顔でこちらに近寄る。勿論、俺はその分後ずさった。ますます不機嫌顔になる椎名。
「何で離れるんだよ!」
「何でって、身の危険を感じたからですけど。用件言わないならこのままダッシュで来た道戻るよ?」
 言っとくけど、俺は足速いぞ。そこそこの時間遅めのマウンテンバイクと併走できる。まだお店も近いし、いざとなったら椎名にとっ捕まる前にお店に逃げ込めるだろう。
 さらに片足を後ろに下げた態度から、椎名は俺が本気だとわかったらしい。それ以上近寄ろうとすることもなく、足を止めた。
「チッ、まあいい。どうせ直ぐお前の方が俺から離れられなくなる」
「はぁ? 何言って……。っ!?」
 突然、ドクリと全身が脈打つ様な感覚に襲われる。胸を焼くような甘く心地のいい香りが鼻腔を満たした。わけも分からぬまま堪らず胸を押え、その場に踞る。視界がチカチカと明滅して、焦点が定まらない。頭がフワフワする。あっという間に体温が上がり、腰の奥からジワリと熱が這い上がってきて……。
 まさか、俺、発情してる? 前の発情は3か月前。丁度椎名が店に来なくなる直前。世間の一般的なΩなら確かに今時分に発情期が来てもおかしくない。でも、俺は出来損ないのΩだ。いつもなら発情期にもっと間隔が空くし、第一こんな急激に発情する程重くない。
 さっきとてもいい香りがした。いや、今もしている。その香りに誘われるように、体が熱くなった。香りの強くなる方に顔を向ければ、そこにはニヤニヤ笑いの椎名が立っている。こいつ、まさか。
「『俺を口説きたいなら、もっと自分磨いて、自分の力だけで勝負できるくらいになってから出直してきなよ』だったよな? 一言一句違わず覚えてる。織部が俺に言った言葉だ。だから俺、お前に言われた通り俺の力だけでお前の事落としに来たんだ。予想通りお前はΩだった。お前の前の発情期から3か月。タイミングはバッチリ。どうだ、俺のフェロモン。いい香りだろ? 体の相性もきっと抜群だ」
「ちが、そういぅ……いみ、じゃ……」
「はぁ、織部。俺にもお前のフェロモン寄越せ。蕩けたお前の顔みてるだけで、もう堪んねぇよ」
 いつの間にか俺の目の前にしゃがみこんでいた椎名に髪を捕まれ、上を向かせられる。半開きになって荒い息をつく口から溢れ出た唾液を、ネットリと肉厚の舌が掬う。その感触にすら腰が震え体が火照った。
「さ、そこに車待たせてんだ。早く行こうぜ、織部」
 腰を抱かれ、無理やり立ち上がらされる。俺にはもう、抗う術はなかった。



「フフッ、折角お前を迎えに行くんだからってスーツでキメたけど、こんなすぐ脱ぐんだったらあんま意味なかったな」
 ジャケットを脱いで放り投げながら、椎名が笑う。弧を描いた唇を寄せられ、目元に軽いキスを落とされた。今、俺は調度品もライトも全部ピンクのラブホテルの一室で、これまたピンクの趣味の悪いキングサイズのベッドに寝かされている。腰の上には椎名が股がっており、到底動けそうにない。
 いや、どちらにせよフェロモンにあてられて体は言う事聞かないんだけど。先程車内で『用心のために』と椎名の用意した首輪を嵌められる時もされるがままだったし。発情の熱にうかされ、浅く呼吸をしながらクテッと横たわる俺の体を、椎名は上からゆっくりと撫でつけた。
「ん、うぅ……」
「おーおー、こりゃだいぶ出来上がってんな。車内でも俺の特濃フェロモンタップリ嗅がせてやったから、もう大分キツイんじゃねぇの?」
「る、さい。この、バカ」
「強情だねぇ。でも、体は正直だ。もう随分フェロモン漏れてるぜ」
 椎名が覆い被さってきて、首筋に顔を寄せられ、匂いを嗅がれる。体を強ばらせ黙って耐えていると、唐突に耳をねぶられた。
「ひぃっ、ぁっ、ぅあ」
 耳の中に舌をねじ込まれ、グジュグジュと大きく水音が頭に響く。反対の耳を手で塞がれたから尚更だ。耳介を唇で食み、耳朶に歯を当て、椎名は愛撫を続ける。ただ耳を舐められてるだけ。それだけだ。その筈なのに、俺の中心は痛いくらいに兆してしまう。
「やめ、やめ、て……。や、ん……」
 椎名の体に手を回し、シャツを引っ張る。ただ、その手には殆ど力は籠らず、なんの妨げにもならない。爪を立てようともしてみたが、手触りのいいシャツの上を滑るだけだった。
「ん、ふぅ。止めるって、どうして? こんなにも感じてるじゃねぇか」
「っあ!」
 椎名が腰を揺らしたせいで、互いの物がゴリッと擦れ合う。突然の刺激に体が小さく震える。思わず我慢していたフェロモンが漏れ出て、ブワッと辺りに漂ったのが分かった。まずい、これじゃまるで誘ってるみたいだ。そんなつもりないのに。でも、これ気持ちい、止まらない……。
「クッ、織部……。やっとフェロモンくれたな。メッチャいい香りだよ、堪んねぇ」
「やら、そんな、つもりじゃっ」
「よしよし、いい子には俺のフェロモンをやろうな」
 途端に強くなる、椎名の香り。堪らなく心地いいそれ。駄目だ、これ。頭バカんなる。腰が抜けそう。なのに、腰がカクカク揺れる。ああ、何も考えられない。
 そうして椎名の香りにウットリと酔いしれている間に、気付けば俺は服をすっかり取り去られ、生まれたままの姿にされていた。自分もパンイチになって、俺の服を脱がし終わった椎名が、乱れた俺の髪を優しく払って耳にかけてくれる。頬に触れる掌が熱い。見上げた顔も、ほんのり赤らんでいる。椎名も興奮してるんだ。ドキドキと胸が高鳴った。
「ヒンッ」
「アハッ、かわいー声。もっと聞きてぇなぁ」
 突然の性感。椎名の長い指が俺のペニスに絡みつき、抜きあげたのだ。椎名は間近で俺の顔をじっくりと眺めながら、手淫を施す。竿を掌で擽り、カリに指を何度も引っかけ、玉を揉む。その1つ1つの手管に反応して、ビクンッ、ビクンッ、と体が跳ね上がった。ペニスを熱く大きな手に掴まれ、鈴口を指先でクチクチと弄られれば、もう堪らない。自分の意図しない他人の動きで快感を引きずり出されるのが、あまりにも気持ちよくて、腰が浮く。
「ひぃ、ゃ、んぅ、はぁ、イっちゃぅ、イっちゃうよぉ……」
「いいよ、イけよ」
「んん、はあぁっ!」
 言葉と共に亀頭を強く撫でられ、ガクンッと大きく腰がはねた。甘く悩ましい衝撃が、腰から全身へと伝播する。ビクビクと体が痙攣し、熱い飛沫が腹にかかった。ペニスからはトロトロと残滓が垂れている。椎名の手淫で、射精したのだ。自分に起きたことをにわかには理解出来ず、呆然としながら荒い息を吐く。射精したことにより一瞬理性が戻ったが、すぐさま馨しいフェロモンの香りで思考が塗り潰される。
「ふぁっ、うぅ……」
「イったばっかなのにもう硬くなってる。メッチャ興奮してんじゃん。後ろもトロットロ……」
「んぅっ!」
 言葉と共にアナルに椎名の指が差し込まれた。そのままグチグチと掻き回され、中を嬲られる。椎名の言う通り十分に濡れているのか、痛みはない。寧ろ粘膜を椎名指が擦る度、先程とは違う種類の快感が湧き上がり、雌の喜びが体に染み渡る。シーツの上で快感に身を攀じると、椎名の手付きに更に熱が籠った。
「はぁっ、はぁっ、あ、んんっ、くぅっ」
「気持ちよさそうに喘いでんね。ああ、堪んない。もう我慢できねぇ」
「ぁうっ」
 椎名のくれる快感にグズグズに溶かされ耽っていたのに、何故か指が体内から引き抜かれる。なんで。折角気持ちよかったのに。あれ? でも、俺は椎名に抵抗しなきゃいけないんじゃなかったっけ? でも、こんな気持ちのいいこと拒否するなんて、そんなことできない。抵抗なんて、もう知ったことか。そんなこともう考えられない。今はただ、もっともっと、その先が欲しくて堪らないのだ。
「うぅ、なんで、抜くの……」
「愚図んな、愚図んな。一旦指抜かねぇと、指よりもっとイイモン入れてやれねぇだろう?」
 言葉と共に、椎名はパンツをずり下げた。パンツの布地の下から、ビキビキと血管の浮きでた浅黒い立派なペニスが勢いよく現れる。で、デカい。腹に付きそうなくらい沿ってる。それに、太くて長くて……。こんな立派なもの入れられたら、どうなっちゃうんだろう。ゴクリ、と生唾を飲み込むと、それを察した椎名がクスリと笑った。
「フッ、そんな期待した目で見んなよ。これがもうすぐお前のものになるんだぜ?」
 椎名が俺の足元に移動し、股を開かせ、その間にドッカリと腰を下ろす。いつの間にか手にしていたゴムを手早く装着し、そのついでとばかりに俺の内腿を撫で上げる。ビクリ、と俺の体が跳ねたのをみて、また楽しそうに笑った。
「じゃ、そろそろいただきまぁーす」
 俺の両足を抱え、椎名が舌舐めずりをする。ああ、いよいよ椎名のペニスを入れられるのだ。期待に胸が高鳴る。最早躊躇いなど忘却の彼方だ。椎名のペニスの切っ先がアナルに宛てがわれ、恍惚とした思いで体を震わせた、その時。そこで俺は、ようやくあることに思い至った。
「まっ、待って!」
「はぁ? 何、今更怖くなった?」
 いよいよこれから、という時に止められ、椎名は露骨に不満を露わにする。もうあと一押しでその熱くて硬いペニスは俺を貫くだろう。椎名だって俺に入れたくて堪らない筈だ。それなのに言葉一つで止まってくれる椎名に少し優しさを感じた。いや、ここまで強引に進めて、優しいもクソもないんだけどさ。
「じゃ、なくて……」
「だったら何? 俺、早く突っ込んで、アンタのことヒンヒン泣かせて無茶苦茶にしてやりたくて堪んないんだけど」
「あっ、あっ、やめっ、さきっぽ、いれないでぇ……」
 丸い先端を、椎名がほんの少しだけアナルに押し込みカクカクと腰を揺する。先端だけでもアナルの入口をいたぶるには十分だ。ヌチヌチと出入りする切っ先から、腰を揺らめかせて逃れようとするが到底叶うはずもなく。どうしようもなくなって悲鳴じみた声をあげるしかない。
「やめ、て。ヤダ、こわいっ、ゃっ」
「何を今更言ってんだよ。ここまで来て止めろとか無理だって同じ男なら分かんだろうが」
「あっ」
 椎名の腰の揺れが大きくなる。さっきより更に深くペニスが体内へ潜り込んできた。もうカリ首まで飲み込んでしまったようだ。アナルの縁を張り出した硬いもので擦られ、内腿が引き攣る。椎名のこちらを見る目付きは完全に獣のそれだ。確かに我慢の限界だろうし、俺だって同じ状況である。でも、このまま好き勝手貫かれるわけにはいかない。だって、だって俺は。
「だって……。おれ、はじめて、なのに。……そんなおっきいの、はいんなぃ……」
 ピシッ、と空気が固まる音が聞こえたようだった。信じられない、といった様子で椎名が目を見開く。畜生、絶対呆れられた。この歳まで未経験なんて恥ずかしいこと言わねばならないなんて。でも、言わないまま経験豊富な椎名に散々いたぶられるよりかはマシだと思いたい。
 ああ、空気が重い、嫌になる。俺にどうしろってんだよ。俺の中に頭を潜り込ませたままの椎名のペニスが、いやに存在感を主張している。それなのに、椎名は動いてくれない。なんの時間だよ、これ。泣きそうだ。そうしてどれほど固まっていただろう。驚愕の表情を顔に張りつけ、漸く椎名が口を開いた。
「え、あんた処女なの?」
「……うん」
「……」
 ほら、呆れてる。もしかしたら引いてるかも。仕方ないだろ。本質はともかく、今まで人生の大半を表面上はβとして過ごしてきたし、そうでなくても俺みたいな変わり種、抱きたいと思う様な奴、居なかったんだ。そっち方面の経験なんて、あるわけない。
 もし、椎名が未経験者は面倒臭いから抱かない主義だったらどうしよう。この体はもうこんなに火照って椎名を求めているというのに、ここで放り出されたら堪らない。お情けでもいいから、抱いてくれないだろうか?
「しいな、おれ」
「あんた、本当そういうとこ……堪んねぇわ」
「しいな? ……んあああぁぁっ!」
 ユックリと、形が分かりそうな程ユックリと、椎名のペニスが中に入り込んできた。ズグスグと進むペニスは初心な俺に配慮するかのように優しく潜り込んでくるが、決して止まったりはしない。信じられない程深く、深く、体が開かれていく。
「ひっ、うっ、うそ、すご、ぃ。やっ、なんで、そんなとこ、しらないぃぃ」
「大丈夫。大事に大事に抱いてやるから。痛い思いも、怖い思いも、絶対にさせない。気持ちいいだけだ。だから、安心して俺に身を任せてろ」
 蕩けた頭ではその意味までは理解できなかったけれど、椎名が優しく声をかけてくれたことに少し安心する。優しく体を摩る大きな手が心地いい。体に埋め込まれた熱の熱さにウットリとする。初めてのことなのに体は奥へ奥へと椎名のペニスを招き、コツン、と最奥に当たる感覚がしたところで漸く動きを止めた。
 凄い、これ。臍の辺まで来てんじゃなかろうか。始まりから終わりまで隙間なく満たされている。身動きする度くまなく刺激されて気持ちがいい。椎名のペニスが、俺の中に……。ヤバ、感動でちょっと涙出てきた。発情期でホルモンバランス崩れたのか?  情緒不安定すぎるだろ。
 だか、当然これで終わりではない。まだ続きがある。俺がウットリと破瓜の喜びを堪能していると、椎名が少し身動ぎをし、抽送が開始された。
「あんっ、やっ、はっ、あっ、ん、くぅっ」
「織部、アンタ今少し油断してたろ。バカだなぁ。入れるだけ入れてハイ終わり、ってわけないのに。初心者のアンタに合わせてやるけど、手加減するつもりはサラサラないから」
 トン、トン、トン、と優しく奥を小突かれ、抜き差しの合間にゴリゴリとイイトコロを擦られる。そのどれもが性感を齎し、未知のその感覚に俺はヨガり狂った。もはや制御などできるはずもなく、一切の躊躇なくフェロモンを零す。それに応える様に椎名のフェロモンも濃くなり、2人の香りが交わってよりいっそう俺の頭から理性を奪っていく。フェロモンにあてられたのか、椎名の腰の動きもより大きく、力強くなった。
「んぅっ、はぅ、なに、これ、あぁ、きも、ちっ、んぁっ、もっ、と、もっと、ほしっ、い、ああぁっ」
「クッ、ハァ。こんなにフェロモンまで垂れ流して、アンタホント、タチ悪ぃな。ハハッ! 堪んねぇよ、マジ」
「しいな、しいなぁ、おくっ、きて、きてぇ!」
「欲しいだけくれてやるよ、オラァッ!」
「ンンッ──!」
 瞬間、今までよりもより深くペニスが差し込まれる。俺の中はもう椎名でいっぱいだ。椎名が俺の体に覆い被さり、キツく抱き締めてくる。中も外も椎名と触れ合って、嬉しい。俺の上の椎名の体がブルリと振るえ、埋め込まれたペニスが膨張し、腹の奥に熱が叩きつけられた。それと同時に、イイトコロを擦り上げられ最奥を刺激された俺も、絶頂を極める。
 生まれて初めて他人から与えられた性感は、骨盤が粉々に砕けてしまいそうな程の衝撃だ。それは体の隅々まで波及し、脳みそを犯し、骨の髄まで染み込んでいく。その余韻にガクガクと全身が小刻みに震える。体がバラバラに爆散した気分だ。メッチャクラクラする。これが、セックスってやつなのか……。
「ヒッ、ウゥ、ハ、ァ……」
「織部? おーい。あーらら、こりゃトんでんなぁ」
 激しく揺さぶられ、昂らされ、もう限界だった。だんだんと視界が暗くなっていく。椎名の声を遠くに感じながら、俺は意識を手放した。
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