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凍雪国編第5章
第33話 リュウトウ商会の店
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ダイザとテムは、ヴァールハイトの建物から程近いところにある宿屋『木枯らし亭』に入り、そこで無事に二部屋を取ることに成功する。
最初、ダイザとテムは、お互いに相部屋でも良いと思っていた。
だが、建物の構造上、角部屋とその隣の部屋を取って置けば、夜間に出入りをしても、他の宿泊客に迷惑をかけないという利点に気がついた。
その事を考慮したダイザとテムは、二階の奥まったところにある二部屋を取ったのである。
二人は、宿屋の部屋に荷物を置かず、部屋を少し見渡しただけで、すぐに宿屋を出て、パロおばさんがいる家を目指して、まずは中央通りへ行く。
「おぉ……。ここは、賑わっているな」
テムが思わず声を上げるほど、中央通りは人で混雑していた。
ダイザとテムがいるのは、中央通りの南端で、東西に延びる南大通りと交わるT字路付近である。
そこには、市場や工房を行き来する人たちが多く、また軒を連ねた商店で買い物をする住民も数多くいる。
また、通りのあちこちには、国都兵が警備に当たっており、都外から来た者たちを見つけては、監視している。
「あれは、レティたちを探しているんだろうな……」
「そのようですね」
「はははっ。あいつらも、お尋ね者になったわけだ」
テムは、すでに国都の外に出て、安全な場所に身を隠したレティたちを思い、可笑しそうに声を出さずに笑う。
ダイザも、微笑みを持って国都兵を眺めるが、あまり注視しすぎても怪しまれるので、人混みを見やるついでに国都兵をちら見するだけである。
「それで、パロおばさんの家は、どこにあるんだ?」
「あの居城の近くですよ」
ダイザは、中央通りの北を振り向き、通りの先に見える一際大きな建物を指差す。
国主が住む居城は、国都のほぼ中心にあり、その周囲に役所の建物が配置されている。
以前、ダイザが教練師として勤めていた建物は、居城の南西にあり、広大な訓練所のほかに、厩舎や武器庫、兵舎などが併設されている。
今は、皇衛兵のルキタスやアムリが、教練師として、そこで仕事をしているはずである。
「裏の情報屋としては、大胆なところに住んでいるな」
「パロおばさんは、見た目は普通の人ですよ。私たちと同じ長命族ですから、前に会ったときと、それほど変わってはいないはずです」
ダイザがパロおばさんに最後に会ったのは、教練師を辞めて、ミショウ村に帰郷した35年ほど前のことである。
その当時のパロおばさんは、日々精力的に動き回り、情報屋のほかに、冒険者としても活躍していた。
「ふ~ん……。そういうもんなんだな」
テムは、裏の情報屋をしているという者に、これまで会ったことがない。
ダイザから、パロおばさんの人となりを聞いても、いまいち想像ができないでいる。
「会えば、分かりますよ」
ダイザは、そう言って、人混みの中を器用にすり抜けて歩き、テムを先導していく。
テムは、ダイザのすぐ後ろを歩いていくが、時折、商店に並べられた品物をそれとなく見ていく。
中央通り沿いにある商店は、そのほとんどが比較的高価な品物を扱っており、なかには、宝石や魔石など、庶民では手が出ないものを専門的に扱う店もある。
「ん?」
商店をちらちらと見ていたテムは、思い当たる名前の看板を見て、思わず足を止める。
そして、見間違いでないことを確認してから、先をいくダイザへ追いつき、その肩を叩いてダイザを引き止める。
「リュウトウの店があった。あそこの看板にリュウトウ商会と書いてある」
テムが指差した先には、立ち並ぶ商店では比較的小さめの建物があり、2階の出窓の下には、『リュウトウ商会』と大きく書かれた看板が掲げられている。
「リュウトウの店だよな?」
テムの問いかけに、店をしげしげと眺めていたダイザは、大きく頷く。
「そのようです。おそらく、あそこで接客をしているのが、妻のイノーラなのでしょう」
ダイザの視線の先には、店先で恰幅の良い紳士と話をしている50歳ほどの女性がいる。
その女性は、品のある衣服を着ており、ただの店番をしている人には見えない。
「寄っていくか?」
「いえ、今は止めておきましょう。チヌルへ行くのは、まだ先のことですし、パロおばさんの方が気になります」
「ん? なんでだ?」
「パロおばさんは、忙しい方ですので、家を留守にしていることも多いんです。ですから、そちらを先に訪問します」
ダイザは、リュウトウ商会の店をもう一度見て、その位置を確認した後、テムを振り返ってから先を急ぐ。
テムも、イノーラの顔をよく見て、その顔を覚えてから、ダイザの後を追いかけ、人にぶつからぬように歩いていく。
最初、ダイザとテムは、お互いに相部屋でも良いと思っていた。
だが、建物の構造上、角部屋とその隣の部屋を取って置けば、夜間に出入りをしても、他の宿泊客に迷惑をかけないという利点に気がついた。
その事を考慮したダイザとテムは、二階の奥まったところにある二部屋を取ったのである。
二人は、宿屋の部屋に荷物を置かず、部屋を少し見渡しただけで、すぐに宿屋を出て、パロおばさんがいる家を目指して、まずは中央通りへ行く。
「おぉ……。ここは、賑わっているな」
テムが思わず声を上げるほど、中央通りは人で混雑していた。
ダイザとテムがいるのは、中央通りの南端で、東西に延びる南大通りと交わるT字路付近である。
そこには、市場や工房を行き来する人たちが多く、また軒を連ねた商店で買い物をする住民も数多くいる。
また、通りのあちこちには、国都兵が警備に当たっており、都外から来た者たちを見つけては、監視している。
「あれは、レティたちを探しているんだろうな……」
「そのようですね」
「はははっ。あいつらも、お尋ね者になったわけだ」
テムは、すでに国都の外に出て、安全な場所に身を隠したレティたちを思い、可笑しそうに声を出さずに笑う。
ダイザも、微笑みを持って国都兵を眺めるが、あまり注視しすぎても怪しまれるので、人混みを見やるついでに国都兵をちら見するだけである。
「それで、パロおばさんの家は、どこにあるんだ?」
「あの居城の近くですよ」
ダイザは、中央通りの北を振り向き、通りの先に見える一際大きな建物を指差す。
国主が住む居城は、国都のほぼ中心にあり、その周囲に役所の建物が配置されている。
以前、ダイザが教練師として勤めていた建物は、居城の南西にあり、広大な訓練所のほかに、厩舎や武器庫、兵舎などが併設されている。
今は、皇衛兵のルキタスやアムリが、教練師として、そこで仕事をしているはずである。
「裏の情報屋としては、大胆なところに住んでいるな」
「パロおばさんは、見た目は普通の人ですよ。私たちと同じ長命族ですから、前に会ったときと、それほど変わってはいないはずです」
ダイザがパロおばさんに最後に会ったのは、教練師を辞めて、ミショウ村に帰郷した35年ほど前のことである。
その当時のパロおばさんは、日々精力的に動き回り、情報屋のほかに、冒険者としても活躍していた。
「ふ~ん……。そういうもんなんだな」
テムは、裏の情報屋をしているという者に、これまで会ったことがない。
ダイザから、パロおばさんの人となりを聞いても、いまいち想像ができないでいる。
「会えば、分かりますよ」
ダイザは、そう言って、人混みの中を器用にすり抜けて歩き、テムを先導していく。
テムは、ダイザのすぐ後ろを歩いていくが、時折、商店に並べられた品物をそれとなく見ていく。
中央通り沿いにある商店は、そのほとんどが比較的高価な品物を扱っており、なかには、宝石や魔石など、庶民では手が出ないものを専門的に扱う店もある。
「ん?」
商店をちらちらと見ていたテムは、思い当たる名前の看板を見て、思わず足を止める。
そして、見間違いでないことを確認してから、先をいくダイザへ追いつき、その肩を叩いてダイザを引き止める。
「リュウトウの店があった。あそこの看板にリュウトウ商会と書いてある」
テムが指差した先には、立ち並ぶ商店では比較的小さめの建物があり、2階の出窓の下には、『リュウトウ商会』と大きく書かれた看板が掲げられている。
「リュウトウの店だよな?」
テムの問いかけに、店をしげしげと眺めていたダイザは、大きく頷く。
「そのようです。おそらく、あそこで接客をしているのが、妻のイノーラなのでしょう」
ダイザの視線の先には、店先で恰幅の良い紳士と話をしている50歳ほどの女性がいる。
その女性は、品のある衣服を着ており、ただの店番をしている人には見えない。
「寄っていくか?」
「いえ、今は止めておきましょう。チヌルへ行くのは、まだ先のことですし、パロおばさんの方が気になります」
「ん? なんでだ?」
「パロおばさんは、忙しい方ですので、家を留守にしていることも多いんです。ですから、そちらを先に訪問します」
ダイザは、リュウトウ商会の店をもう一度見て、その位置を確認した後、テムを振り返ってから先を急ぐ。
テムも、イノーラの顔をよく見て、その顔を覚えてから、ダイザの後を追いかけ、人にぶつからぬように歩いていく。
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